猫あるある満載で、猫好きの大人も必見! ゲスト声優として主役を演じる山下大輝に聞いた、映画『ねこねこ日本史』の魅力とは?

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更新日:2020/3/2

 2月22日、にゃんにゃんにゃんの日に公開する映画『ねこねこ日本史 ~龍馬のはちゃめちゃタイムトラベルぜよ!~』。テレビシリーズにはないオリジナルキャラクターであり、時空を旅する令和の現代っ子、主人公のフクを演じるのは山下大輝さん。『ねこねこ日本史』初参戦の山下さんが、ベテラン勢に囲まれて圧倒させられたこととは?

■本能には抗えない猫あるある満載で、猫好きの大人たちも必見の劇場版

――テレビシリーズとは一味違う歴史ファンタジーでもある映画『ねこねこ日本史』。山下さんが演じるのは、オリジナルキャラクターの小学生ねこ・フクくんです。

山下大輝(以下、山下) どんな歴史上の人物を演じることになるんだろう、と思っていたらまさかの令和という最新の時代を生きる子で(笑)。そうくるか、と思って脚本を読みはじめたら、毎回ひとつの時代に焦点をあてて描いていたテレビシリーズと違って、フクくんがいろんな時代を旅しながらみんな仲良くするのがいちばん、と幸せな結論にたどりつく物語になっていた。もともとテレビシリーズを観たときも、暗く重たくなりがちな歴史をこんなにハッピーにかわいく、しかもわかりやすく描けるのか、というところに惹かれていたので、劇場になってもテレビアニメの延長線上にある作品なんだなと思いました。

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――山下さんから見て、フクくんはどんな子ですか?

山下 そうですねえ。最初は、面倒くさいことに首は突っ込まず、自分のやりたいことだけをやるちょっと冷めた子……まさにイメージされがちな現代っ子。だったんですが、そこから坂本龍馬と出会い、振り回されながらも一緒に旅をして、源義経との切ない友情も乗り越えて、少しずつ誰かと関わる勇気をそなえていくんですよね。背伸びしてクールぶってるけど、未知の時代で遭遇する光景にわくわくして、はじめて見る遊びには本能を刺激されてむずむずして、隠しているけど抑えきれない好奇心をそなえているのも彼の魅力だし、そこがかわいいと思ってもらえるように演じていました。

――猫らしさを表現するために、意識したことはありますか。

山下 眠さには勝てないんだな、というのを自覚するところですかね。しゃべりたいことがあっても、あれこれ考えているうちに「ねむい!」が勝ってしまう。僕も猫を飼ってるんですけど、眠いときは見ていてすぐわかるし、いつも夢中になってるおもちゃを出してもうざがられる(笑)。あとは、蹴鞠シーンがありますけれど、丸いものにはすぐ飛びついちゃうし、仕切られたなかには飛び込んじゃうし、とにかく本能には抗えないんですよね。歴史を描いてはいるけれど、やっぱり猫の物語でもあるから、そこを楽しんでもらいたいなとも思っていました。「うちの猫もこういうことするよなあ」とか「この武将、意外とうちの猫と似てるな」とか、猫好きの人には共感しながら観てもらえると思うし、僕も、うちの猫はどんなこと考えているのかなと想像するだけで癒された。もうね、単純にかわいいので、猫好きは必見の映画です。

■ベテラン勢のぶっ飛んだ演技に囲まれて、新しく生まれたひとつの夢

――演じるのが大変だったシーンなどはありますか。

山下 ラストのほうで「輪にゃー!」ってセリフの言い方がむずかしかったな。「わにゃー!」ってただ悲鳴をあげてるみたいに聞こえたらだめだし「わ、にゃー!」ってあんまり区切るのも変だし、どうしたらちゃんと伝わるんだろうって。最終的には絵で補完してもらえるだろうと思いつつ、意外と苦労したところですね(笑)。あとは基本的にどのシーンも楽しくて! 小林ゆうさんをはじめ、参加されている方々はみなさん『ねこねこ日本史』ベテラン勢だから、アフレコも慣れたもので、いつも全力100%でアドリブをぶっこんでくるんですよ。

――たとえば?

山下 そうですねえ。なにかセリフを足すというよりは、演出がおもしろいんですよ。茶々丸(フクのおじいちゃん)のリアクションがいちいち大きかったり、脚本には「お上手~!」って書かれているだけのセリフを、真似したくなるように面白く言ったり。聞いてると言いたくなる音、ってあるじゃないですか。そういうのも子どもたちに人気がある秘訣なんだと思います。小山力也さんは僕と同じくゲスト声優でしたが、いい意味でぶっ飛んだ演技をされていたので、勉強にもなりました。あまりに圧が強くて、ずっとは聞いてはいられないくらいインパクトがすさまじかったけど(笑)。みんなアツいねえ、いいねえ!って僕も興奮したし、こんなにぶっ飛んでてもいいんだ、っていう自由な現場に参加させてもらえたのが嬉しかったです。

――ベテラン勢は、小林ゆうさんの19役をはじめ、兼ね役も多いですしね。

山下 そうなんですよ。龍馬がひたすらしゃべっているのに、その龍馬としゃべってるのも小林さんだから……(笑)。龍馬も消費エネルギーのすさまじいキャラクターだけど、ほかの18役も、ちょこっとしか出ていなかったとしてもクセのある個性を放っているので、全部やりきったのは本当にすごい。今回の映画は“小林ゆうさん劇場”といっても過言ではありませんからね。

――そうしたベテラン勢に囲まれて演じるプレッシャーはありましたか?

山下 むしろ贅沢な時間でしたし、刺激になりました。みなさんが次々とキャラクターを変化させていくのを聴きながら、僕もチャレンジしてみたいと思いましたし。エンドロールで延々とキャラクター名が並ぶ横に「小林ゆう」ってひとりの名前だけが書かれている、なんてすごくカッコいいじゃないですか。あれだけの役をひとりで演じきったんだ、という証でもありますし。昔から、それこそ山寺宏一さんの兼ね役は伝説的に語られていますけど、憧れる気持ちはもちろんあったから、僕もいつかという夢が新たに生まれました。

■切ない別れもあるけれど、観終わったあとはきっとみんなが幸せになれるはず

――その山寺さんが今回は「ヤッちゃん」というカラス型タイムマシンの役のみなんですよね。

山下 そうなんです。それもちょっとおもしろいですよね(笑)。ただ、山寺さんとは別録りだったので完成版ができあがってから演技を聴かせていただいたのですが、台本を読んだときには機械的な存在として想像していたヤッちゃんが、山寺さんの声が吹きこまれたとたん、ものすごく人間味がある……といったらおかしいけれど、感情豊かなキャラクターになっていたので、驚きましたし、やっぱりすごいと思いました。なんていうのかな、メカなのに生きているって感じがするんですよね。ヤッちゃんが機転をきかせてくれたおかげで、フクくんも龍馬も助けられているシーンはたくさんあって、どこか兄貴感も漂わせている。一方で、マイペースな猫たちに振り回されているやれやれ感も味わい深かったりして、龍馬とはまた違う相棒だったんだなあと改めて思いました。

――いちばん掛け合いの多かった龍馬に対する印象はいかがですか。

山下 龍馬って、誰に対しても平等でニュートラルなんですよね。最初は自己中というか、まわりの迷惑も顧みず好き勝手するよなあ、ってフクくんと同じように思っていたんですが、どんなときも「みんなが笑顔でいられるのがいちばんいい」と信じている龍馬のまっすぐな魅力に、フクくんと一緒にだんだんと惹かれていきました。龍馬って意外とすごい奴なのかも、いやいやでも勝手だし、ってフクくんが葛藤している一方で、どんな態度をとられてもいつも変わらない笑顔で接してくれるのもすごいなあ、と。最初から最後までぶれない彼の強さが、僕も好きでしたね。2人が打ち解けていく過程の掛け合いは全部、楽しかったし、最後はもう終わっちゃうのかとさみしくなりました。

――相棒である龍馬とはまた違う形で、フクくんは義経とも友情をはぐくみます。

山下 個人的には大好きなところですね。義経も小林ゆうさんが演じていらっしゃいますが、基本的に彼はしゃべらないんですよ。でも、ほとんど言葉をかわさないながらも、通じ合っているところがあって。義経が頼朝に追われていくあたりは、歴史上でもかなり切ない話だし、映画のなかでも比較的重い場面だとは思うんですが、彼との別れを経験したからこそフクくんは強くなれたのだな、と感じ入るものでもありました。

――あの場面は、その後、義経や弁慶がどうなるか知っていると、より切ないんですよね……。

山下 一方で、わかりやすく、かつ残酷に描かないというのも『ねこねこ日本史』の魅力で。戦うシーンも猫じゃらしを使って、もふもふ・つんつんするだけだったり、猫ならではの気ままさを活かしてマイルドに表現してくれているからこそ、子どもたちも夢中になるんだと思います。歴史を形作ってきた重厚な人間ドラマを、こんな風に自由に楽しく生きられたらなあ、という憧れとともに見られる。僕もいつか子どもができたら一緒に観たいな、と思いますもん。人の生き死ににあまりショックを受けない形で、自然と歴史の流れを学んでいくことができる。しかも猫がとにかくかわいい。そんな稀有な作品だから、『ねこねこ日本史』はこれほど愛されるんだと思います。劇場版も、観終えたらハッピーな気持ちになれること間違いなしなので、ぜひ大人も子どももみなさんで足を運んでいただきたいです。

取材・文=立花もも