カルト宗教をやめた“宗教2世”は、その後しあわせになれたのか? 衝撃作の続編が登場。

マンガ

公開日:2020/3/9

『カルト宗教やめました。~「エホバの証人2世」の私が信仰を捨てた後の物語~』(たもさん/彩図社)

 夢の中で「伝道」をしていた印象的なシーンから、本書は始まる。

「伝道」とは、宗教活動の一環として、地域の住居を訪問するなどして信仰を広める活動のことを指す。主人公のたもさんは、夢から目を醒ます。

“私は少し前までカルト宗教を信じていました”

『カルト宗教やめました。~「エホバの証人2世」の私が信仰を捨てた後の物語~』(たもさん/彩図社)は、宗教をやめたたもさんの「その後」の生活が描かれるマンガだ。

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 本書は、多くの反響を呼んだ『カルト宗教信じてました。「エホバの証人2世」の私が25年間の信仰を捨てた理由』の続編である。たもさんは、親の影響でエホバの証人を信仰していた。そんななか、たもさん自身の幼い子どもが病気にかかり、輸血をしなくては命が助からない状況に陥ってしまう。輸血をしてはいけないとされる教義に疑問を持ち、教義を破って輸血を受けさせ、宗教をやめるに至った。

 無論、信仰は自由である。本書でも、“ただ私には合わなかっただけ”と、信者や個々の宗教を尊重している。たもさんという個人は、宗教を離れる道を選んだ。

 たもさんの「その後」の生活は、意外なところでつまずくこととなる。

 飲食店のパートでは、他人との距離感がわからないことに悩んでしまう。“エホバの証人はみんなが「家族」みたいで、距離感なんかゼロに等しかった”と振り返るたもさんは、同僚と関係を築いていくなかで、飲み会に誘われることに新しさを覚える。読者は、そんなたもさんに新鮮さと親近感を覚えることだろう。

 おしゃれなカフェには、たもさんはあまり入ったことがなかった。飲食店のパートで稼いだお金で「ベンティホワイトモカアドリストナントカイチゴホイップサクラフレーバーエクストラコーヒーマシマシフラペチーノ」をスパッとオーダーして、“楽園は自分で作れる”と感じながらそれを飲むコマは、象徴的だ。

 実は、たもさんは続編を出版することをためらっていたそうだが、元信者の集うコミュニティなどで話を聞いていくなかで、それぞれが「その後」の生活に苦しんでいることを知り、“浦島太郎たちの、玉手箱を開けた後の話を描きたくなりました”と出版を決めた。

 決して美談ではないからこそ、リアリティが迫ってくる。それでいて読みやすい本書を、ぜひ手に取ってみてほしい。ヒットした前作の『カルト宗教信じてました。』も併せて読むのがおすすめだ。

文=えんどーこーた