社会的に「孤立」することが、寿命にも影響する――。地域とのつながりを構築するためには
公開日:2020/3/9
あなたには、近所で気軽にあいさつを交わせるようなつながりがあるだろうか。
社会的に孤立することは、なんと、寿命を縮めることがあるそうだ。「どれだけ運動をしているか」「どれだけ酒を飲むか」といったことがらよりも、「人とつながりがあるかどうか」が寿命に大きく影響していることが判明しているのである。孤立は、その他に認知症の増加などにも影響していた。
定年退職後にやることがなくなり孤立してしまう人や、家族がいてもわかり合えず心理的に孤立してしまう人、職場と一人暮らしの自宅との行き来で、コミュニケーションが希薄な人――。孤立は意外と身近なところにあるのではないか。
『社会的処方: 孤立という病を地域のつながりで治す方法』(西智弘:編著/学芸出版社)では、社会的孤立の実態が描き出され、薬を処方するようにして社会とのつながりを構築する考え方や具体例について記されている。
“イギリスでは、釣りや編み物の集まりに参加した高齢者がうつ病から脱したなどの事例もあるそうです。(中略)市民ひとりひとりの活動が誰かの「お薬」になります。社会的処方の「タネ」を探しに、あなたもまちに飛び出してみませんか!”
孤立という病に対する「社会的処方」。その具体的な事例にはどんなものがあるのだろうか。本書で紹介されている一部を見てみよう。
年の差フレンズをつくろう
イギリスの「Age UK」は、希望する高齢者に、ボランティアが定期的に訪問したり電話したりして、会話やお茶を楽しむサービスだ。年の離れた友人がいることは健康にとって重要だという指摘もある。
読書会でつながろう
「こすぎナイトキャンパス」は、本を読んでこなくてもいい読書会を開催している。本を媒介にすることで「コミュニティに入りやすい入り口」となり、地域のつながりが生まれやすくなる。
演劇で高校中退者を減らそう
可児市文化創造センター「ala」では、近隣の高校で演劇表現ワークショップを行なった。かつては「問題校」と呼ばれたが、生徒からはポジティブな感想が得られ、実際に問題行動や中退者が減る結果となった。海外でも演劇を用いた事例がある。
編著者の西智弘さんは、“その人が元々もっている強みや才能に気づき、その才能を最大に表現できる場をつくること”の大切さを強調する。
孤立がもたらすネガティブな影響を防ぐために、近くの人たちを見回すことから始めてみよう。
文=えんどーこーた