『ジュラシック・パーク』の世界は実現可能!? 「絶滅動物」を再生させることはできるのか
公開日:2020/3/1
どうして私たちは、失われた動物たちにこんなにも強く惹きつけられるのだろう。大地を闊歩するマンモス。大空を埋め尽くすリョコウバトの群れ。獲物を探し徘徊する多種多様な恐竜たち…。映画「ジュラシック・パーク」シリーズや「ドラえもん」シリーズをみながら、「いつか私もこんな動物たちに会ってみたい!」と何度想像を膨らませたことだろうか。
映画やアニメの世界のように、すでに絶滅した動物たちを再生することは可能なのだろうか。『絶滅動物は甦らせるべきか?』(ブリット・レイ:著、高取芳彦:訳/双葉社)は、そんな研究の今がわかる科学ルポルタージュ。読めば読むほど、夢ではなくなった「絶滅動物の再生」をめぐる現状にワクワクが止まらない。
『ジュラシック・パーク』のように、化石などからDNAを抽出してクローンを作ることはすでに行われている。ただし、「恐竜を復活させる」というのは、実は映画のようには話が進んでいないようだ。シベリアの永久凍土で凍りついた「ケナガマンモス」のように、数千年前から凍結保存された状態のいい絶滅種の死骸が見つかればよいが、これまで採取できた古代DNAで最も古いのは、70万年前のウマのもの。恐竜の中で最も絶滅が遅かった種が生きていたのは、ざっと6500万年前。だから、現在、恐竜は復活させるための候補種として挙げられていないのだ…。
だが、恐竜以外での研究は着実に進められてきている。たとえば、1990年代終わりごろまでピレネー山脈に生息していたが、狩りによって絶滅させられた野生のイワヤギの一種・ブカルドは、2003年、クローン技術によって再生された。誕生からわずか10分でこの世を去ったが、「絶滅動物の再生」の大きな一歩といえるだろう。
また、アニメ『けものフレンズ』にも登場する、かつては鳥類史上最も多くの数がいたとされる「リョコウバト」は、現在、再生のためのプロジェクトが進められている。リョコウバトに近い現存種であるオビオバトの遺伝子情報を組み換えることで、リョコウバトを生み出そうとしているのだ。ケナガマンモスについても研究が進められている。マンモスに近い現存種であるゾウを「代理母」にマンモスを生み出すことが考えられている。
しかし、「絶滅動物の再生」には課題も多い。たとえば、ゾウから生まれたマンモスはマンモスといえるのか、それとも別の新しい種なのか。マンモスが住める自然環境がなければ蘇ったとはいえないのではないか。自然環境に再導入した時の影響もわからない。
動物たちは時代とともに、進化と絶滅を繰り返してきた。だが、現代では、種が消滅するペースが通常に比べてかなり早い。2014年にサイエンス誌に掲載された記事によれば、いま存在が確認されている生物種では虫や両生類、植物含め控えめな見積もりで500万~900万種だが、そのうち1万~5万種が毎年姿を消している。いまのペースが続いた場合、哺乳類の26%が絶滅するという。このような状況の中で、保護を必要としている多くの動物たちをないがしろにして、すでに絶滅した種の復活に力を注ぐことが適切なのかどうかという批判もある。確かに、オーストラリアの森林火災が拍車をかけたコアラ絶滅の危機を思うと胸が痛い。一体私たちは何から進めるべきなのか。
だが、夢は尽きない。もちろん、いま絶滅の危機に瀕している動物を救うことも大切だが、それでも多くの人は「復活した動物たちに会いたい」とこれからも思い続けては研究に励むのだろう。課題は山積みだが、ひとつひとつ解決した先に、きっと未来がある。映画やアニメで見たような景色が、いつの日か私たちを待ち受けているに違いない。
文=アサトーミナミ