人生の虚無と戦う大人たちへ。悲惨すぎて癒されるネオ社畜マンガがすごい!
公開日:2020/2/28
「自分、なんのために生きてるんだっけ?」
人生には、そんなことを思ってしまう夜がときどき訪れる。努力が報われなかったとき、失恋したとき、何もかも楽しめないような気がするとき、この先の未来にいいことなんてないんじゃないか、そう思ってしまう夜が。
そういうときは読む本が難しい。良く生きるための知恵が詰まった本も、あらゆる出来事には価値があると語りかけてくれる本も、好きなマンガの新刊さえ、なんだか読みたくならないから、ぼんやり動画を見たりしてやり過ごす…。しかし本当は、最悪なこの気分を救ってくれる何かを待っているのだ。
『なんだこの人生 日曜しか生きた心地がしない社畜OLの日常』はまさに、そんな夜に読むのにうってつけの本である。ツイッターで話題を集めたマンガということで、“社畜あるある”のようなライトな内容と思ってページを開いて、ぎょっとした。ここに描かれているのは紛れもなく「人生の疲労」である。毎日少しずつ積もりゆき、見て見ぬふりをしているうちに取り返しのつかない積載量になってしまうあの疲労が、おかしく哀しく容赦なく描かれている。
主人公はまだ社会人2年目の24歳女子。しかし仕事を覚えることに必死だった1年目を過ぎ、せわしない会社員生活に慣れはじめた頃、ふと「虚無」に襲われる。満員電車に耐えて出社し、上司に叱られつつ夜遅くまで働き、ぐったりしながら帰宅して、趣味を楽しむ余裕もなく即寝。そしてまた満員電車の朝が来る。これがあと何十年も続く? 「なんだこの人生、生きた心地がしない――」。
冒頭から涙なくして読めない。ここまで絶望しないんしても、近い感情を抱いたことがある人は少なくないのではないだろうか。その後も絶妙に「小さな絶望」が救い上げられる。
しかし本作の主人公もただ疲弊しているだけではない。少しでも生活を華やがせようと、ダウナーながら努力する。
そうトントン拍子にうまくはいかない。ちょっと上昇しては痛い目を見て、そのうち飽きて、違うものに手を伸ばしてみて……。「意識高く」はいられないが、人生を諦めきっているわけでもなく、とこどき足掻くものの、モチベーションが続かない。一見ゆるふわにも思える絵柄ながら、シビアな人間哀歌が高解像度で描かれている。
人生にちょっと疲れたとき、自分イケてると思えないとき、なんだか前向きになれないとき、「そんなの自分だけじゃない」って思いたい。励まされるのもツライけど、ほどよく寄り添ってくれる何かがほしい。そんなわがままな願望にぴったりな作品だ。ぜひ平日帰宅後、孤独を直視してしまいそうな夜に読んでほしい。