あなたの家は安全? 自分が住む地域の“地震の歴史”を知って防災意識を高めよう

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公開日:2020/3/11

『地図で見る日本の地震』(山川徹:著、寒川旭:監修/偕成社)

 日本に住む以上、避けては通れない災害がある。地震だ。東日本大震災や阪神淡路大震災をはじめ、その地域に深い傷跡を残した震災はこれまで何度も起きた。

『地図で見る日本の地震』(山川徹:著、寒川旭:監修/偕成社)では、日本で地震の起きなかった地域はないと断言している。さらに同じ地域に、同じ程度の被害を与える地震が、一定の間隔を空けて起きていると指摘する。

 だから本書は、先祖が残した文献や考古学の遺跡発掘調査などから、自分が住む地域の地震の歴史を知り、これからの生活に役立てる重要性を訴える。歴史を知ることで防災意識を高めるのだ。

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 今から約9年前に発生した東日本大震災。残した爪痕は大きく、復興は今も終わっていない。東日本大震災という呼び名は、地震によって起きた津波や原発事故をあわせたもので、地震そのものは「東北地方太平洋沖地震」という。この地震は日本の観測史上最大のマグニチュード9.0を記録し、世界で起きた地震の中でも4番目の大きさだった。

 本書によると、実は1000年以上前にも同じような地震が東北地方を襲ったそうだ。それが869年に発生した貞観地震。推定されるマグニチュードは8.4以上で、それと同じくらい大きな津波が宮城県と福島県(にあたる地域)を襲った。津波による溺死者は1000人。当時の人々にとって、想像を絶する被害だった。だから『日本三代実録』という歴史書に、その被害の模様を書き残した。

 もし現在の東北地方に住む人々が貞観地震の記憶を共有していたら、被害を小さくできただろうか。少なくとも国がその危険性を理解していれば、あんなところに原発を建てなかったはずだ。地震の歴史を知る重要性はここにある。

 恐ろしいことに、日本には「繰り返し起きる地震」の危険が各地にある。宮城県沖を震源とする宮城県沖地震は、1793年から約200年の間に6回起きた。1978年に起きた地震では死者28人、負傷者1325人、仙台市内で石油タンクが壊れて重油が流出したり、ガスタンクが炎上したりする被害に見舞われた。2019年の発表によると、30年以内に90%の確率で宮城県沖地震が再び起きるという。

 南海トラフで発生するマグニチュード8クラスの巨大連動地震にも警戒しなくてはいけない。地震のメカニズムは本書に譲るとして、東海地方で起きる東海地震と、近畿から四国にわたる範囲で起きる南海地震が、連動して発生する。

 南海トラフにおける“最後の地震”は1946年の昭和南海地震。その間隔は90年から200年だといわれているので、2036年以降が本格的に危ない(それまでに巨大地震が起こらないとも限らないので要注意)。

 地震はいつも急に起きるものだ。けれども今後起きる地震をある程度想定できるならば、少しだけ話が変わる。今の住居の耐震性は大丈夫なのか。この地域に住み続けていいのか。食料や避難グッズの備えは万全か。「繰り返し起きる地震」の危険を分かっているからこそ、今からできることが必ずある。

 北海道に住む方々は、十勝地方や根室半島の沖合で定期的に地震が起きていることをご存じだろうか。

 岐阜県に住む方々は、1891年に周囲の活断層が一斉に動いて、「岐阜は消えてしまった」と言われるほどの大地震が起きたことをご存じだろうか。

 長野県に住む方々は、1965年から1970年の間に、体に感じる地震が6万回以上も起きたことをご存じだろうか。

 本稿で取り上げなかっただけで、本書では全国の地域で地震が起きた歴史を解説している。これらは私たちが生きている間に、また起きるかもしれない。自分が住む地域の地震の歴史を知っておくことが、防災のひとつとなる。

 本書は、いつの時代に、どの地域で、どのような地震が起きたのか、地図にまとめて紹介しているのでとても分かりやすい。この本を機会に地震の歴史を知る重要性に気づいてほしい。

文=いのうえゆきひろ