避難時こそオーラルケアを。口腔の不衛生が重病につながる/『地震イツモマニュアル』⑨
更新日:2020/8/31
特別なことはしなくていい、「イツモの暮らし」が備えになる。ベストセラー『地震イツモノート』の実践版。
歯みがきなんて後でいい。そんな時こそ、オーラルケアを。
お話をきいた人
サンスター株式会社 研究開発部/広報部
水がない。歯ブラシがない。家もない。それが避難時。そのとき、歯みがきなんて……と思いますよね。「でも、避難時こそオーラルケアを」。阪神・淡路大震災での被災経験から口腔保健の専門家とともに「防災にオーラルケア」の情報発信を行うサンスターは、そう強く呼びかけています。
被災して身体機能が弱ると、口腔の機能も弱る。ストレスは、お口をきれいにする役割のあるだ液も出にくくする。つまり、いつもよりオーラルケアが必須な状況なのです。それを疎かにし続けると、さまざまな問題が忍び寄ります。
もっとも深刻なのは、口腔の不衛生が、重病につながるケースです。
「肺炎です。避難所で多発するのが誤嚥性肺炎といって、食べものなどが、飲み込む時に誤って気管や肺に入り、だ液に含まれるお口の中の細菌が肺炎を引き起こすもの。とくに高齢の方にとても多い。口腔ケアで、この肺炎になるリスクを抑えられます」
避難所で心配な感染症の予防にも、オーラルケアは役立ちます。オーラルケアによって、インフルエンザ発症率が10分の1に減るという研究結果も。
「お口の状態が感染症に関わることは、意外と知られていないかもしれません。自分のお口をケアすることは、身体全体のリスクを抑えることでもあります」
そして、歯周病と虫歯。日本歯周病学会によると、近年、糖尿病、心臓・脳血管疾患、骨粗鬆症・関節リウマチなど歯周病と全身疾患との関係がわかってきています。子どもが避難生活をきっかけに虫歯になってしまうのも心配ですね。
ケアと備えは、「水がなくてもできる」がキーワードです。
「オススメは液体ハミガキです。練りハミガキと違って水でのすすぎが不要。殺菌剤配合のものならお口の殺菌もできる。菌とは別に、プラーク(歯垢)は磨かないと取れないので、これと歯ブラシを備えるのがオススメ。歯ブラシかないときは、布などに液体ハミガキをつけて磨く。また、歯ブラシがあって水がない場合なら、水のかわりに液体ハミガキですすぐ使い方でも」
液体ハミガキは“ぶくぶくペー”ができれば子どもも使えます。使用期限は3~5年。殺菌剤が配合されていないものもあるため「医薬部外品」表示のものを。
「何もないときは、少量の水やお茶ですすぐだけでも、効果があります」
ケアの頻度は「寝起き・毎食後・寝る前」が理想ですが、難しい場合は、寝る前の1回は確実に。後まわしにしがちな気持ちに、どうか先まわりを。