お腹の赤ちゃんのためには“たんぱくリッチ食”! 脂質もOK! 医師がすすめる「妊婦食」とは

出産・子育て

公開日:2020/3/11

『産科医が教える赤ちゃんのための妊婦食』(宗田哲男/アチーブメント出版)

 妊娠したお母さんは、お腹の赤ちゃんへの様々な「影響」が気になるもの。タバコやお酒をやめたり、赤ちゃんにストレスを与えない環境作りを意識したり、音楽を聴かせるなど胎教にトライしてみたり…中でも誰もが気になるのは「食べ物」の影響ではないだろうか。「食べていいもの、NGなもの」を知るのは当然として、その上で少しでも赤ちゃんのために「いいもの」を食べたいと思うことだろう。

 4900人の妊産婦さんを指導したという宗田マタニティクリニック院長・宗田哲男先生は、著書『産科医が教える赤ちゃんのための妊婦食』(アチーブメント出版)の中で、そんな妊婦さんに「糖質を控えて高たんぱく質にする“たんぱくリッチ食”」がおすすめと呼びかける。

 たんぱくリッチ食とは、いわゆる糖質制限ダイエットのような「キツイ食事法」ではなく、糖質はあくまでも控えめに、たんぱく質と脂質を意識して摂る「おいしく栄養たっぷりのものをしっかり食べる食事法」とのことだ。とはいえ、一般にからだを作るといわれる「たんぱく質」が多めというのはなんとなく理解できるが「脂質」とはどういうことなのだろう? 妊婦さんは一般に、お医者さんから「体重が増えすぎないように」と指導されることが多い。その場合、脂質はいわゆる肥満の大敵ではないのだろうか?

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 実は著者らの研究によると、妊娠6週の胎児も20週の胎児も高濃度の「ケトン体」といわれる物質の中にいるという。そのことからわかるのは、胎児はケトン体をエネルギーとして利用しているということだ(ちなみにこの環境下で糖質は極めて少ない)。実はこのケトン体こそ、「脂肪」の代謝産物であり、つまり胎児には「脂肪」が必要ということになる。

 たとえば鶏卵を考えてみよう。卵の成分は水分を除けばたんぱく質と脂質が主だが(そのほかビタミン・ミネラルは豊富だが、炭水化物、糖質はゼロ)、他に栄養が加わらなくてもヒナはかえる。同じことは卵生の哺乳類以外の脊椎動物でもいえるし、人間の卵子や精子もたんぱく質と脂質からできているのだ。

 ちなみに従来は「胎児のエネルギーはブドウ糖」と考えられ、妊婦さんは継続的に炭水化物を摂ることをすすめられてきた(さらに脂肪分や肉などを食べ過ぎない、など)が、そのことで必要な栄養が不足する「新型栄養失調」を招き、様々なトラブルを引き起こしている面もあるらしい。

 本書によれば、9割の日本人女性は、甘いものや炭水化物を摂りすぎて逆にたんぱく質を摂らないために栄養不足に陥っており、そのままでいったら過度なエネルギーを消費する妊娠・出産にはとても耐えられない。たんぱくリッチ食を取り入れることで妊婦さんには無駄に太らない、血糖値が安定、産後うつにならないなどの効果があり、赤ちゃんはグズリ&夜泣きがなくいつもご機嫌、体と知能の発達も良好というから驚きだ。また「妊娠糖尿病」になってしまった人にも効果あり。妊娠中の体重増加にナーバスになっている人には大いに参考になるだろう。

 ちなみに「妊娠しやすい体」を作るのにも効果的とのことだ。いずれにせよ、「食べ物の改善」といった自分で意識すればできることでアドバイスしてもらえるのはありがたい。妊娠中の方だけでなく、妊娠を意識し始めたら注目したい一冊だろう。

文=荒井理恵