子どもを持たない生き方にスポットが当たり始めた/『子どものいない女性の生き方』⑥
公開日:2020/3/25
知人の子どもの写真入り年賀状を見て嫌な気持ちになるのは私だけ? 子どもをあきらめた先にはどんな未来があるの? 多様性の理念が浸透しつつある社会で、理想の家族像は旧態依然としている現代。子どものいない女性300人以上に話を聞いた『誰も教えてくれなかった子どものいない女性の生き方』(くどうみやこ/主婦の友社)から、全6回のエピソードをご紹介します。
埋もれていた思いへの反響
「2016年は子なし元年」と独断で制定させてもらったのですが、その頃から少しずつ潮目が変わり、子どもを持たないことを宣言するかたや、子どものいない人生に関する記事が出てくるようになりました。前年の2015年に行われた国勢調査で生涯未婚率が急増して過去最高を更新。みんなが結婚する時代ではなくなったとの認識が社会に広がり、2017年には結婚情報誌のテレビCMで「結婚しなくても幸せになれるこの時代に…」のコピーが共感を得ました。
子どものいない女性に関する活動を始めたのは、光は当たっていないけれど、声にならない声に気づいたから。ただ当時は時代が追いついていなかったため、高い壁が立ちはだかり、なかなか前に進めませんでした。子どものいない人たちにも関心を持ってほしいと2017年に前著を出版し、メディアにも積極的にアプローチをかけました。少子化とはいえ、生き方が多様化してきたことはデータでも示されているので、取材を受ける機会がふえていきました。
子どものいない人生をテーマにした記事は、予想を超えた反響
ようやく子どものいない生き方にもスポットを当ててもらえると歓喜する気持ちとは裏腹に、非難を受けるのではないか、反響がないのではないかと不安を抱えていました。ところが蓋を開けてみたら、予想以上の反響の大きさ。最初に掲載されたダ・ヴィンチニュースを筆頭に、東洋経済オンライン、ヤフーニュース、産経電子版など名だたるウェブメディアでアクセス数やコメント投稿数ランキングで1位を連発。子どものいない人生がテーマの記事で、まさか1位がとれるなんて想像さえしていませんでした。驚いたのは、掲載したメディア側も同様でした。これまで光が当たらなかったけれど埋もれていた思いがあったことを証明できたような気持ちになりました。
ウェブ以外では、朝日新聞、産経新聞、毎日新聞、日テレ『NEWS24』、ニッポン放送、『女性セブン』など、これまで30以上のメディアで取り上げていただきました。朝日新聞に掲載された特集記事をまとめた書籍『平成家族』(朝日新聞出版)の中では、ヤフーニュースとの連動記事として2018年7月5日に配信された「『子どもがいない人生』を歩む」への反響が顕著で、このテーマが、いかに今まで表立って語られず、多くの人が求めていたテーマだったのかを象徴する結果だったと記されています。さらに幅広い層にアプローチできるNHKの『おはよう日本』(2018年10月)と『ニュースウォッチ9』(2019年6月)で、子どものいない人生の特集が組まれて放送されたことは意味深く感じています。
子どもを持たない生き方にスポットが当たり始める
第2章で、アラフィフ女性は「生き方多様化第一世代」といいましたが、昔と現代では同じ世代でも見た目や生き方はすっかり様変わり。かつてはざっくりとまとめることできたミドルエイジ女性が、今では多種多様。晩産だった人は子育て真っ最中、早く結婚・出産した人は子育て卒業、シングルマザーや再婚してステップファミリー、子どもがいない夫婦、シングルライフを歩む人など、とてもひとくくりにはできません。そんな多様なライフコースを歩む40代、50代の働く女性に焦点を当てたのがウェブメディア『日経ARIA』。2019年2月の創刊時から、私の連載「子どもがいない人生の歩み方」が掲載されたのですが、名だたる著名人を抑えてアクセスランキング1位に何度も輝きました。これまた想定外の出来事でしたので、どのような反響があったのか、日経ARIA編集部に伺いました。
編集部としてもここまでの反響は予想以上で、子どものいない人生のテーマはサイト内で注目度が高い記事だったとのこと。なかでも「子どものいない女性の会」への潜入取材「子どもがいないつらい思いにずっと蓋をしてきた」の記事は、2019年上半期に約200コンテンツある中、ページビュー1位を獲得。子どもがいないことを軸にした記事は、これまでありそうでなかった切り口で、読者からの共感は高かったそうです。
子どものいない人たちの埋もれていた声を届けたい。少し時間はかかりましたが、メディアも関心を持ってくれるようになり、ようやくここまできました。私の中では、ここ2~3年で大きく前進した印象です。子どものいない人生についても社会の新しい意識が表れ始めて、さまざまな生き方を尊重する議論がこれから深まっていくはずです。