共働き夫婦の日常が泣けて笑える! Twitter発の絵日記が日曜夜のあなたを勇気づける
公開日:2020/4/5
小学校で先生をしている女性、usao(@_usa_ooo)さんの漫画がTwitterで人気だ。その単行本『なんでもない絵日記』(扶桑社)が発売。描かれているのは多くの方が共感できるあたりまえの日々。悲しかったこと、辛いこと、悩み、そして、ささやかだけどうれしかったことなどだ。
このレビューを書いているライターも、SNSのタイムラインに「絵日記」が流れてくるたびに、「なんでもないな、でもホッとするな」と思った。読むたびあたたかい気持ちになり“ホットミルクを飲んで”体温が上がったように感じた。
本書を手にしてからは、大好きなエピソードに付箋をつけておいて、仕事やなんだで疲れたときにふと読み返したりしている。
「うれしい…つら…なんかわかる」共感の嵐。usaoさんのなんでもない毎日
usaoさんがその名を知られたのはその名も『usao漫画』(扶桑社)。オリジナルキャラクターうさおが、彼女が実際に考えていただろうこと、その身にほんとうに起こっていたことなどを代弁してくれる作品で、こちらもたくさんの共感をよんだ。
『なんでもない絵日記』はusaoさん本人と、夫であるK氏や、彼女の周りにいる現実の人々との、あたりまえな時間がつづられている。セリフまで全て手書きで、あたたかみのある作品、といえば単純だが実は非常に深い。ふだん誰しもが感じている辛さと心地良さを、一見シンプルな絵にぎゅっとつめこんでいる。そんな、なんでもないことを描いたエピソードをいくつか紹介しよう。
・うれしかったこと
小学校の先生であるusaoさん。最初はわからないことだらけだったその仕事も、今はうれしくなることがいっぱいだ。子どもたちは懐いてくれる。微笑みかけてくれる。「このクラスでよかった」と言ってくれる。給食が先生の大好きなカレーだよ! と盛り上げてくれる。usaoさんがみんなの前(集会)で話をするときに緊張した、と子どもに言うエピソード(p.53)は、とてもほのぼのした気持ちになった。
・悲しかったこと
“昔のわたし”をふりかえる話(p.72)は、読んでいて悲しく、胸が痛くなる。いつしかusaoさんは、いろいろあっても強くなろうと思う。テキトーになり、人に好かれなくてもいいと決意する。「悲しいことがあったから誰かを救える」と信じ、今日も漫画を描いている。
・悩んでいること
「オオカミになる日」(p.45)は仕事が大変な多くの人が共感できる話だ。疲れていると、会話もきつい。情緒も不安定になる。家族であってもリラックスして相対することは難しいのだ。わかっていても、パートナーへあたってしまい自己嫌悪に陥る。その解決方法は、なんとか心身ともにゆっくりすること、なのかもしれない。
・K氏のこと
高校の先生をしている夫のK氏は、いちばん近くでusaoさんの喜怒哀楽をみている人だ。結婚する前の話も含めると彼とのエピソードはたくさんある。
忙しい彼女は申し訳なく思うことが多いようだ。「結婚して迷惑かけてばかりでごめん」と泣きながら謝ることも。ただ読んでいくとわかる。K氏もまたusaoさんを必要としていることに。なんかいいなこの夫婦、と思える。
2020年2月24日にTwitterに投稿されたプロポーズ話(p.21)は、15万以上のいいねがつき大きな話題になった。このプロポーズから結婚式までの話は、笑えて泣ける幸せな気持ちになれるエピソードだ。
月曜日におびえるあなたにぜひ読んでほしい
本作には、usaoさんが月曜日、学校へ行くことにおびえる描写が繰り返し出てくる。大事な子どもたちを預かるプレッシャーを感じ、全力で仕事をやりすぎてしまう彼女は、ほんとうに大変なのだろうな、と思わされる。
ただ前述したとおり、子どもたちからとても懐かれていることもまた伝わってくる。小学校が変わっても、以前の教え子から手紙が届くほどなのだ。
両手を広げても
全員を
だきしめられない
それでも
自分とかかわった人は
少しでも…
usaoさんは今日も今日とて子どもたちのことを考えて、大切な人たちのために、絵日記という形で作品をつくっている。
最後の話。大変だった学生時代を経て、今は周りにusaoさんをいいと言ってくれる大切な人たちがいる。そして彼女は気づく。ここにいていいと、自分の思うようにしていいのだと。しんどい人も、日曜日の夜にユウウツな気分になる人も、みんな意外と好きにしたら楽に上手くいくのかもしれない。本書を読んでそう思った。
文=古林恭