リニューアルでビギナー大歓迎! 『趣味の園芸』といっしょに、未来の楽しみを自分の手で作ろう
更新日:2020/4/5
玄関や庭先にきれいな植物がある家を見ると、「きっと健全な人が住んでいるんだろうな」と考えてしまうのだが、あながち思い込みではなさそうだ。
ページいっぱいに広がる鮮やかなチューリップにスイレン、そしていい香りが漂ってきそうなハーブたち。このほど、NHKテキスト『趣味の園芸』(NHK出版)がリニューアルされ、AB版からA4判へとサイズが大きくなった。4月号にはたくさんの春の花が掲載され、大きな誌面には植物の美しさが映える。文章も圧倒的に読みやすい。美しい庭づくりを365日追いかける記事やイラストによる植物園探索など、10の新連載もスタート! 読者を飽きさせない工夫と気合いがそこかしこに感じられる。
テレビ番組もあって有名な『趣味の園芸』。だが正直にいうと、園芸に興味はあるものの読んだことがなかった。びっしりと文章が書かれた玄人向けの誌面をイメージしていて、読みにくいと思っていたからだ。ところが、今回初めて手にしてびっくり。書籍かと思うほど情報量が多いのに、写真が多用されているから読みやすい。知識や情報だけでなく、園芸生活を楽しくするコツや物語がきめ細かく紹介されている。すなわち、むずかしくないし、すごく楽しい! 園芸好きはもちろん、これから始めたい人にも手に取りやすくなったのではないだろうか。
あなたの“性格”に合った植物は何?
新連載のひとつである「おとなの園芸入門」は、まさにビギナー向けの記事で、園芸好きもまた、植物の楽しさを改めて実感できる内容だ。「植物と暮らすと幸せになれる。また、植物と幸せに暮らすには約束がある」という“植物”と“幸せ”の関係がつづられている。
「植物は見た目で選ばない」という約束事が気になった。たしかに、パッと見で惹かれた植物を手に取りがちだが、その植物を育てられる環境があるかどうかは気にしてきたつもりだ。けれど、「性格に合った植物を見つけて無理なく育てることが大事」と言われ、「ああそうか」と腑に落ちた。あれやこれやと手を出しては飽きてしまっていたのは、この意識が足りなかったからかもしれない。
だからこそ、本当に育てたい植物がわかる「診断テスト」が役に立った。実際に試してみると、「ロマンチストで愛情深い」筆者には、尽くす喜びを味わえて、自分だけの特別な存在になってくれる「バラ」が合っているそうだ。バラは、天気が荒れるたびに予防策が必要になるなど、何かと作業は多いが、立派に一輪咲いたときの喜びはひとしおだとか。手を出したことがない分野に驚いたが、その特性を読むうちに楽しくなってきた。キャッチに書かれているように、「うちの子ったら、世話が焼けて大変なの〜」とバラ友に自慢できるようになれたら、めちゃくちゃ気持ちがいいだろうな…。ほかにも、“じっくり型”に合う果樹や、“ギャンブル好き”向けの球根など、さまざまな選択肢が提示されている。
植物の神秘に、明日が確実に楽しくなる
園芸を楽しむ人たちの「始めた理由」にも惹かれた。オーストラリアに駐在した経験から、オーストラリア固有のシダの胞子を輸入してまいたのが庭づくりの第一歩になったと語るのは、園芸家の遠藤昭さん。「シダの胞子」とは、理科の実験で見たような気もするが、ほとんど粉状らしい。半信半疑でまいた極小の粉が、数メートルの美しい葉に育ったときには、植物の世界の深淵をのぞいたようで心が震えたそうだ。大人になってそんなに興奮する経験ってそうそうない、と語る遠藤さん。「明日が確実に楽しくなる。楽しい未来を自分の手でコツコツ作れる」と園芸の魅力について語っている。園芸には、育てる人の数だけ物語があることが伝わってきた。
人生に伴走してくれる心強い『趣味の園芸』
緑のある公園にいるだけでもリラックスできるように、植物が身の回りにあるとストレスが軽減されることが、実験でも証明されているらしい。植物がその人に与える影響は、予想以上に大きいのかもしれない。イヤなことがあっても無心で触れ合ううちに忘れさせてくれるし、園芸を通して「新しい自分」に出会えることだってある。やがて植物と自分との関係は、お互いに支え合う「なくてはならない存在」に…。まるで合わせ鏡のように人生に寄り添ってくれる植物は、まさに自分そのものなのだろう。やっぱりきれいな植物を育てる人って健全なんだな。
園芸仲間の物語をひとつずつ読みすすめるうちに、知識やノウハウが自然とがっつり頭に入ってくる。むずかしい用語はその度に解説されているから心配ない。WEBと連動した投稿コーナーもあり、仲間が増えていくことにも喜びを感じられそうだ。日本全国、毎月届いて園芸生活に伴走してくれる心強い月刊誌。これから長〜く続く人生に、穏やかな気持ちと誇りをもたらしてくれる。
文=麻布たぬ