新入社員をビビらせる「業界専門用語」の数々! 失敗を乗り越えたい新社会人のためのバイブル漫画【手書きPOP付】
公開日:2020/4/10
今年はイレギュラーなことが続いているが、年度はじめの4月となれば当たり前のように桜が華麗に咲き、始まる新生活や新たな出会いがあり、そして企業は新入社員を迎える。晴れて社会人デビューを果たした人たちには、これからどんなドラマが待ち受けているのだろう…。
できれば楽しく順調な日々を送りたい。しかし、新人の前に立ちはだかるのは、絶対に避けて通れない数々の“試練の壁”。そんな新人の方はモチロンのこと、“壁”を越えた先輩方にも懐かしさを噛みしめながら読んでいただきたい“新人あるある奮闘マンガ”がある。らおや先生の『新入社員がまいります!』(講談社)だ。新社会人研修や大手企業への入社経験がない私、はりまがあえて作品をご案内したい!
新社会人ならではの失敗が「微笑ましい」のはどうして?
「ほたて商事」の商品管理部で事務をする新入女性社員の「ながたさん」は、毎日が新鮮で挑戦の連続! 仕事を完璧にこなす姿が実にまぶしい、頼れる先輩社員・まるやまさんの指導の下で奮闘しつつ成長していく姿を、著者の経験を交えながらフルカラーで描くエッセイコミック作品だ。
ながたさんは、とにかく一生懸命で責任感も強い。まるやまさんに迷惑かけまいと失敗をごまかしたりするも、いとも簡単にバレちゃう…。こんな経験、みなさんにもきっとあるハズ。新社会人には避けて通れない“成長のための失敗”には共感ポイントも多いので、ながたさんと自分の経験を重ねながら読むと、なお楽しめるだろう。
先ほども書いた通り、作品の中にはたくさんの“新人あるある”が描かれている。その1つを取り上げると、「なぞの単語のせいで仕事内容が頭に入らない」という問題。なぞの単語とは、いわゆる仕事上の専門用語だ。私、はりまがPOPライターという仕事をやる前は、書店の販売フロアーで接客をしていたのだが、自分も書店ならではの専門用語で戸惑ったあの頃の記憶がよみがえってくる。
「このコミックを焼いてくれ」
コミックを焼く…って、燃やすの!? と思ってしまうが、そういうことではない。傷や汚れを防止するための梱包用の袋にコミックを入れ、それを熱の入ったベルトコンベアーのような機械に通して袋を収縮させて包む、という一連の作業のことを「焼く」というのだ。(一度にたくさんのコミックや雑誌を連続で機械に通すため、できあがったものが出口でたまり、次第に機械の中にも詰まってくるがそれに気づかず、本当にコミックを焼き焦がしたこともありました…)
そのほかにも、平たい台の上に本を陳列するとき、向きを5冊ずつ上下反転させて積んでいく「5冊積み」(じつはとても理にかなった方法で積んでるんですよ、ホッタさん!)、「平綴じ&中綴じ」「返本期限」「挿し」といった本屋ならではの専門用語や、本社から指摘を受けて撤去したPOPなど業界ならではのエピソードはありますが、それはまた別の機会に!
話はながたさんに戻って、ひとつずつクリアしていってはまた訪れる、数々の新人の試練。中でも、社会人になると誰もが必ず通る道がある。呼び出しコールでビビリ、おそるおそる受話器に手を伸ばし、タイミング良く出て対応する――そう、電話応答だ!
私が書店内のフロアー間で連絡を受ける内線もそうだったが、お客様対応の外線電話は特に勇気が要るものだった。本作でも、彼女の変な意気込みや緊張感、さらに傍から見るとドタバタしているようにしか見えない姿に、きっと共感することだろう。
別部署の上司や社員との交流が生まれる歓迎会や、充実した社会人に憧れて、“それっぽいこと”(詳しくは本書で!)にチャレンジしてみるなど、彼女なりの社会人デビューエピソードにはどれもほっこりする。なんといっても、物語の舞台である会社が、超温かい! この素晴らしい環境で成長していくながたさんの社会人1年目の行方をぜひ最後のコマまで見届けてほしい!
新社会人ならではの失敗はきっと誰にでもある。だからこそ、ながたさんが数々の試練に挑戦する姿を見て共感し、参考にもしたくなるのだ。一人前の社会人を目指す“バイブル漫画”として手元に1冊いかがだろうか。
文・手書きPOP=はりまりょう