「外国人から見た日本」で終わらない面白さ! 『私はカレン、日本に恋したフランス人』で描かれる、日本の魅力とは

マンガ

公開日:2020/4/19

『私はカレン、日本に恋したフランス人』(じゃんぽ~る西/祥伝社)

 日本を外国人視点で綴った本は多い。「日本のここがおかしい」「日本のここが好き」。だいたいが、そのどちらかをテーマにしている。

 しかし現実は、良いところも悪いところもひっくるめて、日本が好きになり、日本で生活することを選んだ人がほとんどだろう。マンガ家・じゃんぽ~る西さんの妻、カレンさんもそのひとりだ。

 1996年、バカンスで初めて来日したカレンさん。ビルのすべての階に店舗の看板があることや(外観を重視するフランスは建物の1階にしか店舗がないことがほとんどだ)、当時日本で流行していた女子高生のガングロやルーズソックスに衝撃を受けつつ、日本にのめりこんでいく。

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 日本でフランス人記者として働くようになっても、“ハイテクのイメージがある日本の日常風景で着物の女性を発見”したり、“巨大オーロラビジョンの前にたたずむサンドイッチマン”を見つけたりしたとき、カレンさんは心が熱くなりこう叫ぶ。

“パラドックス・ジャポネッ!”(日本の逆説)

「そんなに!?」と一瞬思ったが、私もフランスに留学していた頃、中世の建物がそのまま残っているかのようなパリの街中で、モードファッションを身にまとう若者を見て「パラドックス・フランセ!」(フランスの逆説)と感じた気がする。

 著者でカレンさんの夫でもある日本人マンガ家じゃんぽ~る西さんもワーキングホリデーでパリに滞在したことがあった。当時感じたフランスのパラドックスや日常をマンガにした『パリ愛してるぜ~』(飛鳥新社/2011年)、『かかってこいパリ』(飛鳥新社/2012年)などが出版されている。

 じゃんぽ~る西さんの作風は斬新だ。海外生活を無理にポジティブにしたりネガティブにしたりしない。「自意識と先入観を取っ払ったパリ」を率直に描いた。「こんなパリ知らない!」と読者はやみつきになる。

 妻のカレンさんを主役にしても、じゃんぽ~る西さんの作風は変わらない。

 フランスの通信社の日本オフィスで働くようになったカレンさんが、じゃんぽ~る西さんと知り合ったのはフランス人マンガ家の来日パーティだった。やがて結婚し、子どもがふたり生まれた。

 その後じゃんぽ~る西さんがフランスにいた過去の話を盛り込みつつ、結婚したふたりが日本での子育てに励む姿、日本の時事、フランスに家族で帰省する話なども描かれ、本作はどんどんと面白さを増していく。

 本作では結婚前、カレンさんがiモード開発者の夏野剛さんを取材する場面も出てくる。単行本の帯には夏野さんの「カッコ良く描いてくれてありがとう!」というコメントがついていた。

 外国人の目を通した日本の技術や文化、仕事の面白さと大変さ、子育てで驚いたこと……。私たちが一度は不思議に思ったり体験したりしたことが偏見を持たない対等な目線で描かれているため、本作は老若男女問わず楽しめる。

「外国人から見た日本」で終わらないのが、『私はカレン、日本に恋したフランス人』の魅力なのだ。

文=若林理央