ドラマ『フリンジマン』の青木U平が問う『マンガに、編集って必要ですか?』とうとう完結!
公開日:2020/4/19
小学生の頃、マンガを作っているのはマンガ家だけだと思っていた。大人になると、マンガ編集の仕事内容はだんだんわかってきたが、編集者がどのようにマンガを魅力的にしているのか、具体的には知らなかった。『マンガに、編集って必要ですか?』(青木U平/新潮社)を読むまでは。
メインキャラとして登場するのは45歳の男性マンガ家・佐木小次郎(さぎ・こじろう)と、24歳の女性編集者・坂本涼(さかも・とりょう)。
出版業界の現状は厳しく、連載打ち切りが続いている佐木は必死だ。
“ここらで一発当てとかないと本気でヤバい”
佐木は面白いマンガを描くために一分一秒を争う日々なのだが、坂本との打ち合わせ時間はやたら長くジェネレーションギャップも感じている。
1巻はマンガ家の佐木視点で物語が進んでいく。そのため、佐木に感情移入し坂本に関しては「この人、何も考えてなさそう」とつい思ってしまった。佐木と坂本のやりとりはかみ合わない。それをギャグテイストで描いたマンガなのかと思っていたら、1巻中盤でひっくり返った。
佐木の仕事場でアシスタントをする20歳の新人マンガ家・沖田。彼が、こうつぶやいたときの佐木の反応に注目してほしい。
“ぶっちゃけ 編集っていらなくないスか?”
マンガを愛し、佐木がマンガ編集の必要性も実体験として知っていることがわかる1巻の名場面だ。
また、佐木は友人の有名マンガ家や昔からのつきあいの編集長、マンガのことをよく知らない元バンドギャルの妻など、実はたくさんの人に応援されている。
ある日の打ち合わせで、坂本は佐木に現在の連載マンガの打ち切りをあっさり告げた。そして新しいマンガの企画書を渡す。佐木は傷つくが、その企画に目を通し衝撃を受ける。
2巻になると坂本目線での物語も始まる。2巻で初めて私たちは坂本が誰よりもマンガを愛し、マンガ家に敬意を払っている編集者だったということを知る。
そして「マンガに、編集って必要ですか?」というテーマに本書は近づいていく。
坂本の直属の上司は、彼女にこう言い放つ。
“面白いとか 面白くないとか 関係ないんだよ
数字を出せ!”
ここで言う数字とは、マンガの発行部数やSNSのフォロワー数のことであり、マンガ編集者として面白いマンガを世の中に出していきたい坂本の価値観とは異なるものだ。読者はだんだんと、マンガの魅力を誰よりも理解していたのは坂本だったのだと気づく。
3巻、佐木と坂本は絶望に近い状況に立たされる。
もはやこれはギャグマンガではない。ご都合主義で進まないリアルさと、マンガ家や編集者の熱意に私たち読者は惹きつけられ、夢中でページをめくる。
「マンガに、編集って必要です」
最後は誰もがそう言いたくなるだろう。2020年2月、最終巻の3巻が発行された。ぜひ最後までこの物語を見届けてほしい。
文=若林理央