GAFAの支配を指をくわえて見ているのか? 日本企業が生き残る2つの道とは?
公開日:2020/4/16
Google、Apple、Facebook、Amazon――GAFAと呼ばれる巨大IT企業のサービスは、日本人にとってもなくてはならない存在になった。iPhoneを使い、Googleで検索し、Amazonで買い物をする。FacebookやInstagramで知り合いとつながる。そうやって私たち生活者のあらゆるデータがこうした「プラットフォーマー」のもとに集結し、日本企業のビジネスはどんどん追いやられていく…。世界の時価総額ランキングを独占する彼らの動きをみていると、日本の未来に悲観的になってしまう人もいるかもしれない。
しかし、『日本型プラットフォームビジネス』(小宮昌人、楊皓、小池純司/日本経済新聞出版社)は、私たちにひとつの希望を見せてくれる。GAFAを筆頭とするプラットフォームビジネスには、いくつかの特徴がある。先行事例を研究し、日本企業としてとるべき戦略を定めれば、いまからでも十分競争力を取り戻せるというのだ。著者は、野村総合研究所のコンサルタント。国内外の数多くの事例から、日本企業へのヒントを示してくれる。
日本企業が生き残るための「2つの戦略」
本書は冒頭で、多くの人が陥りがちな“勘違い”を正す。それは「自社がプラットフォーマーにならなければ競争に敗れてしまうのではないか」という危機感と不安だ。
たしかに、ニュースを見れば、巨大プラットフォーマーが高い営業利益を上げていることがわかる。だが、儲かっているのは彼らだけではない。プラットフォームと連携し、コンテンツを提供することで確固たる地位を築いている企業もたくさんある。
たとえば、スマホゲームの世界はどうだろう。「Google Play」と「App Store」という2大プラットフォームがアプリ市場を支配している。とはいえ、両プラットフォーム上で人気コンテンツを展開できれば、大きな利益が得られるのも事実だ。ランキングトップ層のゲームには、年間売上1000億円に迫るタイトルもある。
それ以外にも、ニッチな分野で天下をとるという方法もある。GAFAのような巨大プラットフォームとはすみ分けを行い、自社の強みを生かしたサービスを展開するのだ。
たとえば、レシピ投稿・検索サイトの「クックパッド」は、これまで築いてきた強みを生かして生鮮食品EC(ネット通販)を行っている。サイトで料理レシピを検索している人をターゲットにできれば、Amazonや他のネット通販よりもダイレクトにユーザーを呼び込むことができるのだ。
短期的な収益にとらわれない。「日本型の戦略」を意識する
GAFAを出し抜こうと思ったら、こうした事例を知るだけでなく、事業の進め方も改めていく必要がある。普段仕事をするときに、あなたや勤め先の企業はどのくらい先のことを考えているだろうか? 毎期目指すべき売り上げ数値があると、短期的にそれをクリアすることに集中してしまう。
だが、プラットフォームビジネスは、すぐに大きな利益が上がるわけではない。数年間の投資期間を経て、それが成熟したときようやく収益化ができるのだ。すなわち、目先の利益だけを考えていると、とるべき戦略を見誤る可能性がある。それを防ぐためには、評価指標の見直しに加え、現場ひとりひとりの考え方も改めていく必要があるだろう。
本書ではここで紹介した他にも、トヨタや資生堂、コマツなどの日本企業の事例を挙げ、私たちがこれから取り組むべき道を示してくれる。その中にはおそらく、あなたの勤める企業に近い立場のケースもあるはずだ。海外の巨大プラットフォーマーの侵攻を、ただ指をくわえて見ているわけにはいかない。彼らを利用してやろうというくらいの気持ちで、自分の関わるビジネスを見直してみよう。
文=中川凌(@ryo_nakagawa_7)