「ほぼほぼ」の指し示す割合は何%? 身近で“変な”日本語を徹底的に検証してみた!

文芸・カルチャー

公開日:2020/4/20

『知っておくと役立つ 街の変な日本語』(飯間浩明/朝日新聞出版)

 言葉は時代と共に変わる。これは古くから使われる常套句だ。国語辞典の編纂者による『知っておくと役立つ 街の変な日本語』(飯間浩明/朝日新聞出版)は、私たちが頻繁にみかける“クセのある言葉”の数々にスポットを当てる1冊。本書を読めば、日本語の新たな楽しみ方に触れることができる。

食べものについて次々と生まれる新しい言葉

 辞書に載っていなくても、私たちの生活に浸透している言葉はたくさんある。例えば、食べもの関連でいえば、「旬鮮」はそのひとつ。海鮮料理を得意とするお店の軒先やスーパーの鮮魚売り場などでもみかける機会があるだろう。

 Googleで検索にかけたところ、ヒット件数は600万件を超える(2020年4月時点)。著者の調べたところによれば、その言葉単体だけでなく、「旬鮮和食」「旬鮮地魚」といった形で四字熟語のように使われる事例も。また、「旬鮮な食材」のように形容詞的に扱われている場合もある。

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 また、ラーメン店では「麺匠」もよくみかける言葉だ。師匠や鷹匠など、本来「匠」という言葉には「専門の技術を持っていて、人に教えることのできる人」もしくは「学問・芸術などにすぐれた人」という意味があるそうだが、職人たちの“心意気”を示す言葉として使われる機会が多くなっている。

日本語のプロを悩ませる、「ほぼほぼ」の示す割合

 最近よく使われているのが「ほぼほぼ」という言葉。みかける機会も使う機会も多いが、いったい“どれくらいの割合”を示しているのか、真面目に考えてみれば疑問だらけだ。

 著者の知人には「こんな言葉は絶対に許せない」と主張する人もいるようだが、年齢を問わずつい口に出てしまうほど浸透してきたのも事実。指し示す意味合いは、日本語を探求する人たちの中でも意見が分かれているようで、「ほぼ」と「ほぼほぼ」を比べると、「ほぼほぼ」と重ねている分、確度が高いという意見もあれば、ほぼほぼの方が確度が低いという人もいて、比較にある「ほぼ」との差は解明されていないのだという。

 なお、著者が目にした自動販売機には「ほぼほぼ100円」と書かれていたことがあるそうだ。この時に調べた

ところ、全36種類の商品が並ぶうちで100円だったのは32本。この場合は「9割弱」が「ほぼほぼ」に該当する結果となった。

「スパゲッティ」…小さな「ッ」は要る?

 時と場合により、表記が複数に分かれる言葉があるのもおもしろいところだ。外来語についてはとりわけそれが目立つが、パスタのひとつである「スパゲッティ」は、場所によって書き方が異なっているという。

 著者が調べたところでは、辞書を引いてみるとそのほとんどが「スパゲッティ」を用いている。しかし、一部では「スパゲ(ッ)ティ」とあえて括弧書きにして、比較的新しい「スパゲティ」という表記も考慮して、言葉のゆらぎを示しているものもあるようだ。

 さらに、雑誌によってはレトロな風合いを残してか「スパゲチ」と表記していた事例もある。どれが正解というわけではないが、ひょっとしたら世代によっても分かれるのかもしれない。

 ここで紹介した他にも、数々の日本語を扱った本書。タイトルには「変な」とあるが、そこに込められているのは新しい言葉を認めないという意図ではなく、むしろ変化を楽しんでやろうという気持ちだ。ページをめくるたびに「いわれてみれば確かに…」と気づかされることも多いので、誰もが「ほぼほぼ」楽しめるはずだ。

文=カネコシュウヘイ