コロナ以前から存在する「女性の貧困問題」――パパ活・風俗・シングルマザー・ネカフェ女子…さまざまな“リアル”を知る5冊

社会

更新日:2020/4/28

 新型コロナウイルス感染拡大による外出自粛によって、多くの人が苦しんでいる。収入がなくなったり少なくなってしまった社会人、授業料を稼ぐためのアルバイトができずやむなく退学を考える大学生。みな、先の見えない不安な日々を過ごしている。

「女性の貧困問題」については、コロナウイルスの問題以前にも、多くの書籍が指摘するところであった。

 ここでは、貧困に直面した女性たちを紹介した書籍を5冊紹介し、コロナウイルス収束後の未来を考えたい。

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『東京貧困女子。 彼女たちはなぜ躓いたのか』(中村淳彦/東洋経済新報社)

『東京貧困女子。 彼女たちはなぜ躓いたのか』(中村淳彦/東洋経済新報社)

 本書で描かれるのは、20歳前半の女子大生から50代のシングルマザーまで、幅広い年代の貧困女子たち。本書に登場する女性たちは、一貫して普通で、たとえば、クレジットカードでのブランド品購入やギャンブル、ホスト通いといった負の要素を背負っていないのが悲しいところである。ちょっとしたきっかけをはずみに、貧困から抜け出すことができないまま、精神を病み、結婚に失敗し、家族とうまくいかず、体までも蝕まれていく。

 ひと昔前までは、風俗で働くのはたくさん稼いでホストクラブで遊びたい場合や、のっぴきならない借金に苦しむ女性がほとんどだった。しかし、現在では風俗やアダルトに価格破壊がおき、一般的な大学生が授業料のために風俗やパパ活に勤しんでいるという悲しい現状が語られる。もはや風俗は最後の砦ではなくなった。

詳細記事:https://develop.ddnavi.com/review/549763/a/

『裸足で逃げる 沖縄の夜の街の少女たち』(上間陽子/太田出版)

『裸足で逃げる 沖縄の夜の街の少女たち』(上間陽子/太田出版)

 2017年に発売された本書では、子どもの貧困率が全国の2倍だという沖縄の少女たちを取り上げている。少女たちのほとんどが貧困と暴力と隣り合わせで育ち、15歳から売春を始めた女性、10代で子どもを産みキャバクラで生活費を稼ぐ女性、中学生の時に集団レイプされた女性など、数少ない選択肢の中で生きてきた少女たちの物語が紹介されている。

 負の連鎖を止めるにはどうすればよいのか。著者の上間氏は「平和な地平は、自分の日常を守ることだけではなく、他者の日常を守ろうとするところに生まれると思っています。ここでいう他者とは、あなたの隣のひとでもあり、沖縄でもあると思います。私はまだ見ぬ読者の想像力を信じます」と語る。あなたは本書を読んでどんな感情を抱くだろうか。

詳細記事:https://develop.ddnavi.com/news/356348/a/

『性風俗シングルマザー 地方都市における女性と子どもの貧困』(坂爪真吾/集英社)

『性風俗シングルマザー 地方都市における女性と子どもの貧困』(坂爪真吾/集英社)

 地方都市で「性風俗」の世界に生きるシングルマザーを取り上げているのが本書だ。

 夫という支えがなく、企業が正社員に求める学歴・職歴のないシングルマザーたちは、高収入が見込める性風俗の世界へと足を踏み入れざるをえなくなるという。

 本書では、デリヘルの仕事によって子どもとの生活を安定させ、精神的に余裕が生まれた女性など、性風俗の仕事が地方に住む彼女たちのセーフティネットになった例が紹介されている。一方でいつまでも続けることができないのも性風俗の仕事であり、生活保護やシングルマザーを支援するための制度や窓口の利用も期待されるが、世間の目や認知不足などにより、思うように普及していないのが現状だ。

詳細記事:https://develop.ddnavi.com/review/590103/a/

『証言 貧困女子 助けて! と言えない39人の悲しき理由』(中村淳彦/宝島社)

『証言 貧困女子 助けて! と言えない39人の悲しき理由』(中村淳彦/宝島社)

 本書は「非正規女子」「シングルマザー」「介護女子」「ネカフェ女子」など、さまざまな状況に身を置く女性たちの独白と、著者の中村氏による解説で構成されている。

 島根から上京しガールズバーで働く女性は、地元の飲食店の劣悪な労働環境により働けなくなり退職した過去を持つ。全財産の2万円をはたいて上京し、新宿のネットカフェで生活する。

 若くして“絶望すること”に疲れてしまったような39人の女性たちのリアルは、すぐそばにある貧困の現実をつきつけてくる。

詳細記事:https://develop.ddnavi.com/review/594156/a/

『女子と貧困』(雨宮処凛/かもがわ出版)

『女子と貧困』(雨宮処凛/かもがわ出版)

「女性の貧困ってあちこちで取り上げられていますが、『シングルマザーで大変。以上。』みたいな話が意外と多くて。でも若い女性やシングルマザーに限った話ではないし、置かれた状況もさまざま。もはや貧困女性は全世代にいるということを書きたかったんです」。そう語るのは、2017年に発売された『女子と貧困』著者の雨宮さんだ。

 ここでは、絵にかいたようなわかりやすい貧困生活を送る女性ではなく、一見お金に困っているとはわからない女性たちが登場する。「お金に困っている」ことは周囲に知られたくないものだ。しかし時には支援の手が必要になる。本書では、同じ立場にある女性たちがつながり、結束して事態を打開することを勧めている。

 育休や子どもの病気で休むことに対する懲罰的な降格やハラスメントなど、女性が直面しやすい「社会制度」の貧困には、本書でどういった対策がとれるかのヒントになるだろう。

詳細記事:https://develop.ddnavi.com/review/389807/a/