「こうなるってわかっていたのに!」自分をコントロールできなくて最悪な未来がやってくる…/『憂うつデトックス』⑤

暮らし

公開日:2020/5/12

“自粛”続きで心が疲れてしまった。嫌な状況が長く続くと延々と終わらないように思い、最悪の事態を想像してしまう――。そんな人も多いのではないでしょうか。いつも最悪の事態を想像して行動していると「心の準備」をしている気がしますが、実際には心を余計にすり減らしているだけ。こんな状況だからこそ、憂うつな気分から自分を解放して「今を生きる」方法を学びましょう。

『憂うつデトックス ‐ 「未来の不幸な自分」が幸せになる方法 ‐』(大嶋信頼/ワニブックス)

1-5 「見えている嫌な未来」に向かって行動してしまう

パトカーに突っ込んでしまう

 学生時代に「女の子から好きになってもらって付き合っても、関係は長続きしない」という未来が、憂うつな私には見えていました。

 実際に、女の子と映画に行っても「うわ! 予測していた通りの展開だ」と話が続きません。もっと面白いことを喋ればいいのに、と自分でも思うのですが「なんで宗教の話をこんな時に真面目に話しちゃうんだろう?」とか「相手の家族の心配なんかどうでもいいじゃない!」と思うのですが、自分ではそれが場の空気を冷えさせる、ということがわかっていても「止められない!」となり、「やっぱり気持ち悪がられて嫌われちゃった!」のが女の子の目の輝きが失われていく様子からわかります。

 そして、相手から「もうあなたとは付き合えません」と言われてショックを受けて「二度と立ち直れないかも」と一人で涙を流す未来がちゃんと私には見えていて、その通りになってしまいました。

 公衆電話で女の子から別れ話を切り出されて、私は「自分が見ていた未来の通りになった」とクイズ番組で正解を出した時のような感覚になるのですが「自分には周りの人のような楽しい未来はない」という現実が襲ってきて、ものすごく悲しくなりました。

 アメリカのある研究では「高速道路でパトカーがパトランプを点灯して停車していると、そこに車が突っ込んでくる確立が高くなる」というものがあります。

 人は「そっちに行っちゃいけない!」と思えば思うほど「ハンドルがパトカーの方に向いてしまう!」とパニックになって、本当に自分でハンドルを逆方向にコントロールできなくなってしまう。私の場合も「女の子の気分を下げるような真面目な話をしてはいけない」と相手から愛想を尽かされる危険性をわかっていればいるほど「自分の会話がコントロールできなくて余計なことを話しちゃう!」となっていました。

 女の子が興味を失っていけば、余計にパニックになってしまい、自分の言動が自分でコントロールできなくなり、余計なことを喋って相手を黙らせて私は最悪な気分になってしまう。そんな未来が見えていればいるほど「コントロールできない」となって、見えていた最悪な未来が現実になっていました。

自分をコントロールできなくなる

 ある方は「職場の上司に対してふてくされた態度を取ってしまったら、上司から攻撃されて仕事が続けられなくなる」という未来がちゃんと見えていました。

「こんな態度を取っちゃいけないんだろうな」とわかっているのに、上司の顔が自分の予測通り曇ってくればくるほどパニックになり、自分の態度がコントロールできなくなって「やっぱり上司がキレて、思っていたことをそのまま言われた!」と最悪な結果になってその職場を辞めたくなってしまいます。

 その仕事を辞めてしまったら、次の仕事は給料が下がって待遇も悪くなる、という未来は見えているのに「上司に対しての態度がコントロールできない」となってしまって「あ、自分はこの会社を上司から目の敵にされて辞めるんだろうな」と思っていた未来が、現実になっていました。

 未来が見えていると「そうなってはいけない!」ともちろん自分で意識してコントロールしようとします。でも、コントロールしようとしても「未来が見えている」ので「うまくできないかも!」と焦ったりパニックになると、どんどん自分がしちゃいけないことをしてしまう。

 もし、未来が見えていなければ、その場で「思っていた不幸が現実になる」と焦ったり、パニックになることがないから、脳は正常に働いて、ちゃんと場の空気を読んで柔軟に対応ができます。それに対して未来が見えてしまうと「脳がパニックを起こしちゃってやってはいけないことをやってしまう」ことになってしまう。

ストレスホルモンの作用

 ストレスはその場で適度に感じると「頭がすごく働いていい感じ!」になり、ストレスを与えてくる上司に適切に対応ができました、となる。でも、未来が見えてしまっていて「事前にストレスを感じ続けている」と、いざ、上司が不機嫌になった時、本来だったらストレスを感じて頭が働く場面で「あれ? 頭が全く働かなくなってしまった!」となります。

 ストレスで分泌されるホルモンには「頭と体を働かせる」という作用があります。ところが未来が見えてしまって、事前にストレスホルモンが分泌され続けていると「ストレス場面で分泌されなくなった」と逆になり、頭が全く働かなくなってやってはいけないことをやってしまう、という結果になる。

 私は「最悪の未来を想定することで、最悪なことが起きた時に対処できる」と本気で信じていました。でも、最悪なことをイメージすればするほど、本当に最悪なことが起きてしまうのは、ストレスホルモンを事前に分泌させすぎてしまって「いざ!」という時にストレスホルモンが分泌されなくなって頭が働かなくなるから。

 ストレスホルモンが適切に分泌されずに、見ていた最悪が現実になる。そして「こうなるってわかっていたのに!」と、後になってストレスホルモンが分泌されてしまいものすごい勢いで自分を責め続けて、そして再び肝心な場面で頭も体も動かなくなり、無防備な状態で不幸な未来をそのまま受け止めることになっていたんです。

<第6回に続く>