全体の0.5%を占める「世界一ムダなメール」とは? 現代のチーム仕事にメールは不向きだった…/『ビジネスチャット時短革命』②
公開日:2020/5/12
新型コロナウィルスの影響が拡大する中、在宅勤務を取り入れる動きが広がっています。テレワークやリモートワークの普及により、ビジネスチャット・オンライン会議の導入を進めている企業も急増し、従来のメール中心のコミュニケーションではビジネスが円滑に進まないケースも。新たな時代を生き抜くためのビジネスチャットとオンライン会議を駆使した「新しい働き方」を指南します。
全体の0.5%を占める「世界一ムダなメール」とは?
前節で述べたとおりメールの「量」が増えることの弊害については見えてきましたが、メールの「質」に問題はないのでしょうか? 弊社のクライアントである22社でさらに調査を進めたところ、そこには衝撃の事実が潜んでいたのです。恐ろしいことに、「メールを見ていますか?」や「送信したメールを読んでいただけましたか?」というだけの内容のメールが全体の0.5%ほど存在していたのです。
メールを見ていない相手に、「メールを見ていますか?」とメールで問いかけても意味がありませんよね。実際の意味合いは「あと回しにしないで早く処理してよ!」という催促なのでしょうが、こうしたやりとりは効率が悪く、お互いにストレスを感じるものです。迅速な対応を求められる現代のビジネスでは、反応するかどうかわからない人の返事を待つ時間はできるだけ少なくすることが求められます。このストレスを減らすために、相手のプレゼンス(在席情報)が見えるビジネスチャットの導入を決める企業も増えているのです。
「チーム仕事」への要求が変わってきた
ビジネスにおいては、相手の反応を待つのは仕方ない側面もあります。私は24年前から社会人として仕事をしていますが、昔は今ほどチームでの仕事は必要ありませんでした。当時は「モノ消費の時代」だったので、顧客は企業名やブランド名、機能、価格でモノを買っていたものです。イノベーションは研究開発室で起き、広報部が宣伝して商品やサービスが世間に認知されれば、営業担当はマニュアルどおりに案内すれば売れるというモデルです。こうした状況では、むしろ現場はあれこれ考えてはいけないのです。上司から言われたことだけやったほうが売り上げは上がるし、社員も幸せな時代でした。いわゆる縦型命令組織です。当時、私は台風のときに4時間かけて出社して上司にすごく褒められました。そしてその直後に衝撃的なひと言を言われたのです。「疲れただろう、もう帰っていいぞ」と……。会社と上司への忠誠心が人事評価で重視された時代でした。各々が自分で考えないで、言われたとおりにやったほうが売り上げは伸びるからです。
しかし、時代は変りました。とくに顧客が変わったのです。商品およびサービスが生み出す価値や経験を買う「コト消費」に変わったのです。「大企業だから」「多機能だから」といった理由だけでは、顧客はお金を出してくれません。むしろ、シンプルな機能で洗練されたデザインの商品をクラウドファンディングで買う時代です。読者の皆さんは、上司から「自分で考えてやれ」と言われてはいませんか? 上司は、思考と行動の指示を出します。売り上げを上げるために自分たちで自発的に考え、自分たちで考える「必要な行動」をとるように上司は指示します。なぜなら、複雑な顧客や市場のニーズや肌感覚を知っているのは現場のメンバーだからです。顧客の眉間のシワ(=課題)を見つけ、迅速に解決することが求められています。
現代のチーム仕事にメールは不向き!
現代のコト消費時代では、仲間を巻き込んで自分たちでプロジェクト組んでいかないといけません。そういうプロジェクトを組むときに欠かせないのは「異質な人たち」の存在です。「イノベーション」という言葉の生みの親である経済学者のヨーゼフ・シュンペーター(1883~1950)は、「既存の要素の新結合によってしか、イノベーションはもたらされない」と言っています。異なる経験やバックグラウンド知識をもっている人たちのアイデアが組み合わされないとイノベーションは起きません。
顧客のニーズが複雑で多様になった現在、個人の力だけでは複雑な課題を解決できません。だからこそ、個人よりも「チームの生産性」を上げていく必要があるのです。今後はより多くの人、多様な人を巻き込んでより複雑な課題をより迅速に解決していくことが求められます。迅速なレスポンスやチームでの情報共有を効率化するには、メールでは限界があります。ビジネスチャットを導入することで、単なる情報共有はもちろんクリエイティブなアイデア交換などによりチームの協働が活発になり、他社に負けない解決策を講じてスピード実行できるようになります。
私自身もこの3年間にクライアント企業22社で19件の新規ビジネス開発を支援し、63億円の新たな売り上げを生み出してきましたが、その各プロジェクトはすべてビジネスチャットで情報共有と意見交換を行って、必要に応じて対面ミーティングをもっていました。
COLUMN 「絵文字」の感情共有が働きがいを増す
前述のとおり、働き方改革は手段であって目的ではありません。働き方改革を通じてめざすゴールは、会社の成長と社員個人の幸せを両立させることです。社員に働く幸せを感じてもらうこと、つまり「働きがい」をもたせることができると業務効率が45%向上し、離職率は確実に低下し、会社の成長に貢献します。
働きがいを向上させるうえで重要なのが、「承認」「達成」「自由」の3要素を刺激することです。22社16万人のアンケート調査で、「働きがいを感じるのはどういうときか?」と尋ねると、その83%の回答は上記の3つのキーワードに集約されます。具体的には「お客様に感謝されたとき」「社内でありがとうと言われたとき」「プロジェクトが完了したとき」「売上目標に到達したとき」「上司から仕事を任されたとき」「自分の能力を存分に発揮できたとき」……。
こうした働きがい要素の中でもっとも影響力があるのが「承認」です。とくに社内で「自分が必要とされている」と実感すると、働きがいが飛躍的に向上することがわかりました。同僚に「ありがとう」と声をかけること、会議中に大きくうなずいて相手の話を聞くこと、上司の上司から部下に気軽に声をかけること……。こういったことで社員の働きがいがアップします。
「ありがとう」や「(相手の意見に対して)そうだよね!」とメールで伝えるのは恥ずかしいと思います。しかし一方で、皆さんはプライベートで使っているFacebookやInstagram、Twitterでは気軽に「いいね!」ボタンを押せているはずです。ビジネスチャットでも、このように感情共有のハードルを下げることで、「承認の輪」を簡単に広げられます。「いいね!」ボタンを多く押されたり、「やったね!」という絵文字を付けられたりすれば、社員は気分が良くなり「また発言しよう!」という気になってアイデアが多く出るようになります。イノベーションを起こすためには、アイデアの質ではなく量を追求したほうがいいので、このポジティブな感情共有による「心理的安全性(=何を言っても良い空気感)」は必要なのです。晴れてビジネスチャットを導入した暁は、やりとりを閲覧するだけでなく、ぜひ積極的に「いいね!」を押してチームの働きがいをアップさせてください。