デキる見た目の彼女は「無能」だった…! 社内ニートになっても強すぎるメンタルから目が離せない!
更新日:2020/5/18
新しい職場で働きはじめた際、不安を抱えつつも「1日でも早く職場に慣れて、役に立てるように頑張ろう!」と前向きに仕事に励む人は多いだろう。就活や転職に苦労して、やっと採用された職場なら、なおさらかもしれない。少なくとも、周囲に「無能」だと思われて、平気な人は少ないはずだ。
しかしながら、はんざき朝未さんのマンガ『無能の鷹』(講談社)には、そもそも「人の期待に応えよう」という発想が皆無のヒロインが登場する。
物語は、鶸田(ひわだ)という、気弱そうな男性が、ITコンサルティング会社の最終面接で、いかにも「デキる」オーラを纏う、鷹野ツメ子と出会うところから幕を開ける。鷹野は、人徳にあふれた顔立ち、スマートな身のこなし、公共放送のアナウンサーのようなきれいな発声、板についた落ち着きが感じられる女性だった。後に、縁あって共にその会社に入社することになる2人。しかし、1年半後、誰もが有能だと信じた女・鷹野ツメ子は、社内ニートになっていたのである――。
実のところ、有能に見える女・鷹野は、シンプルにアホすぎる女だった。記憶力もないし、「燃費」を「もえひ」と読むレベルで漢字が読めない。算数すら苦手で、普段は、職務中に動画サイトを観ながらホチキス留めを悠々と行っている。反対に、頼りなさそうな外見の鶸田は、分析センスもあり、提案内容も良いと社内では評価されているのだが、その容貌ゆえに、客先では説得力に欠け、契約がとれない。そこで鶸田は、上司からクビを検討されはじめた“有能に見える女”鷹野を誘い、“無能に見えるが仕事はできる”自分とタッグを組ませ、契約を取りに行くことにするのだが…!?
本作は、“有能そう”に見えないと契約を取るのが難しいコンサルで、外見と内面が「2人で一人前」の男女が、協力して契約を取る過程がコミカルに描かれている。胃腸が弱くコミュ障の鶸田は、堂々とした態度で「デキる」オーラを振りまく鷹野がそばにいるだけで、緊張がほぐれるのはもちろん、クライアントにすんなり話を聞いてもらえるようになる。たとえ鷹野がずれた発言を連発しても、良いように解釈され、彼女の評価が短時間で急速に上昇していくシーンは何度も笑ってしまった。
社会に出ると、さまざまなプレッシャーが一気にのしかかり、出来る限りそれに応えようとして、苦悩する人も多いだろう。だが、鷹野は違う。クビを宣告されそうになっても、「私がこの会社を必要としてるから 会社に必要とされてるかは考えないようにしてる」と飄々としているし、そもそも入社動機が「丸の内のオフィス街をパリッとした服でカツカツ歩いて 受付を社員証でピッしたかったの」というミーハーなものなのである。
有能そうな見た目をいかした彼女の意外な活躍はもちろん、社会や周囲に決して媚びない、強すぎるメンタルや自由奔放な発言が後を引く、とてもおもしろいマンガである。仕事をつい頑張りすぎてしまい、胃腸を痛めている方に特におススメな作品だ。
文=さゆ