生命保険 or 火災保険… 重きを置くべきはどっち?/新・お金が貯まるのは、どっち!?②
公開日:2020/5/31
「一生お金に困らない生活を送りたい、でも現実的に考えて無理」と諦めている人へ――。お金を貸す側・借りる側、両方の視点を持った著者が教える“一生お金に困らない方法”。こんな時だからこそ、お金のことを勉強して少しでも賢く暮らしてみませんか?
質問2 災害多発時代、必要なのは「生命保険」と「火災保険」、どっち?
年をとればとるほど健康への不安が大きくなっていきます。昔の仲間と会っても「こんな薬を飲んでいる」「去年手術をしたよ」と、健康の話題が多くなります。
健康保険に加入している人が手術や長期入院で高額の費用がかかったら、「高額療養費制度」が利用できます。月単位で医療費を計算し、自己負担額、所得、年齢などで決まっている上限額を超えると、その分があとから払い戻される制度です。
ただし、差額ベッド代、食事代、交通費などは高額療養費制度の適用対象外です。
病気やけがをすると、医療費以外にもなにかと出費がかさみますし、サラリーマンではない人は、仕事ができないことで収入が減るかもしれません。
収入や貯金に不安がある人は、万一の備えとして医療保険に入るメリットがあるでしょう。
子どもが社会人として自立すれば、親に万一のことがあっても、子どもに多額のお金をわたす必要がなくなります。その時点で、生命保険は見直して当然です。
そのとき万一の備えとして、多くの人がもっと意識を向けるべきは「火災保険」。
「50歳を境に生命保険から火災保険」と考えて、未加入ならば加入すべきです。
日本の国土面積は、世界の陸地面積のたった0.28%にすぎません。ところが、世界の活火山の7%以上が日本にあります。世界で起こるマグニチュード6以上の地震の2割前後が日本で起こります。地震による日本の被害額が世界に占める割合は、もちろん年によって違いますが、だいたい20%くらいです。
地震だけではありません。「異常気象」がごくふつうのことになってきたようで、台風・豪雨・突風・河川の氾濫・土砂災害などによる被害額が甚大です。
2019年には台風15号と19号が猛威をふるいました。洪水や浸水、土砂崩れをはじめ、屋根が飛ばされた、窓ガラスが割れたという被害が相次ぎました。
ご自分のライフプランや資金計画のなかで、自宅や車が浸水する、屋根が飛ばされるといった事態を想定していた方は、何人いらっしゃるでしょうか。これらを自分で全額負担するとなると、かなりの金額になります。
学費などは、将来に備えて貯金をしますが、災害による被害は通常は想定していない出費ですから、なおのこと大変です。
予期せぬ災害に備えて、「保険料」でなく「補償内容」で選ぼう
「火災」保険という名前ではありますが、補償する範囲は出火による損害だけではありません。落雷、(ガス漏れによる)破裂や爆発、風災、水ぬれ(漏水)、水災、盗難、外部からの飛来物被害なども対象です。
ただし、火災保険に入れば全部の補償がついてくる、というわけではありません。
「水災」は多くの場合、火災保険の「オプション」になっています。19年の台風19号では、オプションをつけなかったため、多くの人が補償を受けられなかったと聞きました。
「火災」も対象となるのはふつうの火事だけで、地震による火災をカバーするには「地震保険」に入る必要があります。
また、対象が①建物だけ、②家財だけ、③建物と家財と3つに分かれており、持ち家の人とマンションを所有する人では、話が違います。
マンションの人にとっては壁も窓ガラスも自分の持ち物ではなく、その被害は管理組合がかける保険から補償することになっていたりするわけですね。
このように火災保険は意外と複雑です。
ハウスメーカー(工務店)、仲介業者(不動産会社)、金融機関などが保険の代理店になっていることが多く、家を買ったり借りたりする最初に「保険はこちらです」とパンフレットをわたされます。これを読まず、すすめられたものに加入する人が多いはず。保険料は購入費や家賃に比べてわずかですから、あまり気にも留めません。
でも、予期せぬ災害に巻き込まれた、やっかいな事故が起こった、保険の対象かどうか判断がつかないなど、契約後に相談が必要なときもあります。火災保険にくわしいプロの代理店と契約することも考えたほうがよいでしょう。
火災保険は、年3万~5万円くらいという「保険料」ではなく、ここまでカバーするという「補償内容」で選ぶべきです。多数の事故例や適用範囲を知れば知るほど、補償を省くことが恐ろしくなるはずです。
忙しくて火災保険の継続手続きを怠り、切れたままになっていませんか? しっかり確認してください。
「個人賠償責任保険」もおすすめです。
「洗濯機のホースが外れ、マンションの下の部屋が水浸しになった」「植木鉢が突風で飛び、隣家の窓ガラスが割れた」「自転車で歩行者と衝突し、ケガをさせてしまった」「高齢の親が自動車事故を起こした」など、家族に責任があるケースも含めて広く補償します。
火災保険の特約になっていることが多く、保険料も月100円くらいですから、ぜひ加入しましょう。別名「日常生活賠償責任保険」です。
答え
日本は災害多発地帯。50歳は、「生命保険」から「火災保険」にウエイトを移す時期。火災保険は万全か念入りにチェック。想定されるリスクとコストを洗い出し、ダメージがもっとも少なくてすむように、しっかり備えよう。