文章力アップの基本は「読書」! 誰よりも読書が上手になる“4つの視点”とは?/めんどくさがりなきみのための文章教室③

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公開日:2020/5/31

めんどくさがりな人ほど、文章の才能がある――。著書累計510万部以上の作家はやみねかおる初の実用書。 だれでも文章が上達する方法を、ぽっちゃり猫が小説形式で楽しく教えます。作文、メール、レポートから小説まで、これ1冊で文章がみるみる上達するはず!

『めんどくさがりなきみのための文章教室』(はやみねかおる/飛鳥新社)

トレーニング編

文章力アップの基本は読書だけでOK!


 ダナイから、トレーニングウェアに着替えるように言われた。

「どうして、着替えないといけないんだ?」

「今からやるのは、文章を書けるようになるトレーニング。だったら、トレーニングウェアに着替えるのは、当たり前だろ」

 ……納得できない。

「着替えたら、出発するよ」

「どこへ?」

「ついてくれば、わかる」

 そう言って、ダナイは、ぼくの部屋の窓から外に出た。隣の家の屋根を、トッテッテッテと歩いていく。メタボのわりに、軽い足並みだ。

「おい、ちょっと待てよ!」

 慌てて玄関から靴を持ってきて、ダナイのあとを追いかける。

 屋根から木をつたい、地面に降りたダナイは、細い路地から路地へ歩いていく。猫なら簡単かもしれないけど、人間のぼくには、なかなか大変なルートだ。

「いったい、どこへ行くんだよ……?」

 フラフラになったぼくは、ようやくダナイに追いついた。

「ここだよ」

 ダナイが止まったのは、図書館の前だった。

どうして、図書館?

図書館には、何がある?

本に決まってるじゃないか

本には、何が書いてある?

文章……だけど

そのとおり。文が書けるようには、たくさん本を読むことが大事なんだ。たくさん本を読めば、それだけで文は書けるようになるとも言える

 読書は、文を書くための基本。

 たくさん読めば読むほど、自分の中に文章が溜まってくる。

 そして、それは、文を書くときの燃料になる。

 

健は、悲しいときの気持ちを、どんな風に書く?

『悲しい』……かな?

うれしいときは?

『うれしい』

太陽が西に沈むとき、街は、どんな風に見える?

…………

ものすごく寒い朝、頬に触れる空気は、どんな感じがする?

…………

いきなり言われても、言葉にできないだろ? でも、そんな場面を何度も読んであったら、自分の言葉で説明できるんだ。だから、たくさん本を読んだ方がいいんだよ

なんとなく、わかった

 絵を描くには、たくさんの絵を見ることが大事。

 曲を作るには、たくさんの音楽を聴くことが大事。

 同じように、文を書くには、たくさんの本を読むのが大事。

「どうやって書けばいいんだろう?」――迷ったとき、それまでの読書体験が助けてくれる。

前の飼い主の児童文学作家は、子供の頃からたくさんの本を読んでいた。それはもう、浴びるように――。だから、作家になれたようなものだよ

才能があったんじゃないの?

それは違う。彼の場合、たくさんの本を読んだおかげで、作家になれたんだ

そうかなぁ

だったら、健も本を読んでみたらいい。彼よりたくさん本を読んで、それでも作家になれなかったら、彼の方が才能があるってことだろうね

…………

才能なんて、みんな似たようなもんだよ

 たとえば――。

 イチロー選手のようになりたいと思っても、なれなかったとき、「自分には、イチローみたいな才能がなかった」と、諦めるか?

 それを言うのは、イチロー選手より、たくさんバットを振ってからにしよう。

 諦めるのは、いつでもできる。

小さいときから、『本を読め』とか『本を読むのはいいことだ』って言われてきたけど、本当にいいことあるの?

いくつかあげられるけど、こんなところかな

・読解力、思考力、記憶力、想像力などが身につく。
・知識の幅が増える。
・情報処理能力、コミュニケーション能力が高くなる。
・視野が広がる。
・人間性が豊かになる。
・学力全体が上がる。

もちろん、いいことばかりでもない

・頭の中だけでわかったつもりになり、行動しなくなる。
・本が増えると、家が狭くなる。

でもね、忘れて欲しくないのは、『文が書けるようになるため』とか『勉強のためとか』だけで、本を読むのはさびしいってこと

どういうこと?

本を読むのは、楽しいから。――これが基本。『感想文を書くため』とか『国語の成績を上げたいから』なんて目的で読んだら、読書が嫌いになるよ

 楽しむために、本を読もう。


誰よりも読書が上手になる4つの視点

4つのことに注目すると、読んだ本のことが好きになれる。

本のこんなところに注目してみよう

登場人物の行動や台詞、心の動きに注目する。


・どうして、このような行動をとったの?
・なんで、こんなことを言ったの?


1番盛り上がった場面や記憶に残った場面に注目してみよう

・記憶に残った理由は?
・その場面を読んで、どう感じた?


自分を登場人物の立場に、置き替えよう

・もし、自分だったらどうする?
・もし、自分だったらどう感じる?

作者はどんな人だったのか、考えよう

・いつ生まれて、どこですごしたのか。
・どんな経験をした人なのか


<第4回に続く>