「ヤバいだけじゃヤバイ!」語彙力を増やすにはテレビが役に立つ/めんどくさがりなきみのための文章教室⑦

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公開日:2020/6/4

めんどくさがりな人ほど、文章の才能がある――。著書累計510万部以上の作家はやみねかおる初の実用書。 だれでも文章が上達する方法を、ぽっちゃり猫が小説形式で楽しく教えます。作文、メール、レポートから小説まで、これ1冊で文章がみるみる上達するはず!

『めんどくさがりなきみのための文章教室』(はやみねかおる/飛鳥新社)

「表現力がある人」がこっそりやっていること

「ヤバイだけじゃヤバイ」から語彙力を増やそう


 美術の宿題をしていると、筆を持ってる腕がズッシリと重くなった。

 見ると、ダナイが、ぼくの腕にしがみついている。

「邪魔するなよ、ダナイ」

「健こそ、わたしに食事を与えるのも忘れて、何をしてるんだ?」

「窓から見える風景を描けっていう、美術の宿題だ。もうすぐ完成するから、それまで餌は待ってろ」

「なんなら、手伝ってやろうか? ほら、『猫の手も借りたい』とうじゃないか」

 ダナイが、パレットに前足をつける。肉球に絵の具をつけて、いったい何をする気だ?

「わたしが、色を塗ってやろう」

「ちょっと待て。猫に色塗りは無理だろ!」

 絵に肉球を押しつけようとするダナイを、羽交い締めする。ミャオギャオ暴れるダナイ。飛び散る絵の具や筆。

 なんとか絵を守ることはできたが、部屋中に絵の具が飛び散り、とてもカラフルな部屋になった。

「どうすんだよ、絵の具がなくなっちゃったじゃないか! 白と黒しか残ってない! これじゃあ、色塗りは無理だよ」

「……なるほど。健の文章の弱点がわかったよ」

今は、絵を描いてるんだぞ。なんで、ぼくの文章の話になるんだ?

絵を描いてる場合じゃない。健は、わたしのトレーニングのおかげで、文の書き方が身についてきた。しかし、なにかが弱いと思っていた。今、その原因がわかったんだ

いや……絵を描かないと怒られるんだけど……

健の弱点は、ボキャブラリーの不足だ!

ボキャブラリーって、何?

 ボキャブラリーとは、その人が使っている単語のことである。

 伝えたいことがあっても、ボキャブラリーが少ないと、表現できないときがある。

健に、行列のできるタイ焼き屋さんで買ってきた白タイ焼きをあげよう。味は、どうだい?

うん、ヤバイね

そういや、昨日テレビで、『サンバイズ』のライブやってただろ

ああ、ヤバかった

あれ? 絵の宿題はやらなくていいの?

あっ、ヤバイ!

今、健の使った『ヤバイ』は、みんな同じ意味なのかい?

『ヤバイ』に、たくさんの意味を乗せて、若者は使っている。

 本当なら「おいしい」とか「格好いい」とか「具合が悪い」という意味も『ヤバイ』の一言ですませている。

「かわいい」も「かわいくない」も、すべて『ヤバイ』の一言ですませるのは、本当に『ヤバイ』。

でも、『ヤバイ』だけで会話が成立するのって、すごいと思わないか?

それは、相手を見て会話してるから、どういう意味で『ヤバイ』と言ってるかわかるからだよ。SNSやメールでは、相手の様子がわからない。そんなときに『ヤバイ』としか表現できないのは『ヤバイ』んじゃないのかな?

どうやったら、ボキャブラリーは増やせるんだ?

 ボキャブラリーを増やすには、本や新聞などを読んだり、テレビやラジオなどのメディアに触れるといい。また、知らない言葉に出会ったら、調べる癖をつけておく。そして、『ヤバイ』のように便利すぎる言葉は使わないようにする。

文を書くときは、手近に『類語辞典』を置いておくといいね

 

それで、美術の宿題は、どうなったんだい?

褒めてもらえたよ

すごいね! でも、黒と白の絵の具しか残ってなかったんだろ?よく完成させられたね

そこは、頭を使ったよ。白と黒を、いろんな割合で混ぜて、水墨画のような感じの絵にしたんだ

なかなか考えたね

こんな風に、少ないボキャブラリーでも、組みあわせたりしてなんとかならないかな

……無理だと思うよ



語彙力を増やすには意外とテレビが役に立つ

今のうちから、言葉の引き出しをたくさん作っておこう。

自分自身が持っているボキャブラリーを増やす

・本や新聞などを読む
・テレビやラジオなどのメディアに触れる
・知らない言葉に出あったら、調べる癖をつけておく
・『ヤバイ』のように便利すぎる言葉は使わないようにする


伝えたいことが的確に伝わる言葉を探そう


続きは本書でお楽しみください。