がんばり屋さんほど報われない理由は? 「ちゃんとしなきゃ」からキレイさっぱり卒業するコツ
公開日:2020/5/26
もっとちゃんとしなきゃ――物心ついた頃から気づけばこのセリフを何度も心の中で唱えていた。頑張らないことを頑張ってみなよと周囲から言われても、“ちゃんとしなきゃ教”から抜け出すことができず、気づけばまたちゃんとした誰かを羨んでいる…。
だから『「私、ちゃんとしなきゃ」から卒業する本』(小田桐あさぎ/WAVE出版)を知った時、これは生き方を変えるチャンスだと思った。自分をすり減らさなくてもいい、できない自分を責めなくてもいい…帯に記されたそんな生き方ができたら、人生を楽しめそうな気がしたのだ。>
元“ちゃんとしなきゃ教”信者が教える卒業ポイント
実は著者の小田桐さんも、元“ちゃんとしなきゃ教”。小さな頃から過干渉な母親に「ちゃんとした人間」であることを求められ続けてきた。しかし、大人になって、仕事や恋愛に全力を注いでも努力が報われない日々に嫌気が差し、好きなことを気の向くままやってみるという生活を送るようになった。すると、おもしろいことに、たった数年で今まで求めていた以上の現実が手に入り、人生が好転したのだそう。
なぜ、ちゃんとすることをやめると人生が変わるのか。その謎を解き明かすには、まず「ちゃんとする」の意味を考えることから始めてみよう。
私たちは小さな頃から、「ちゃんとしないといけない」という常識に縛られている。しかし、小田桐さんいわく、この「ちゃんと」に当てはまる常識は、今の世の中にそぐわないものも多く、世間一般的にちゃんとしている人生を送ろうとすればするほど、本来の自分らしさから遠ざかり、人生が辛くて報われないものになりやすいのだそう。
「ちゃんとした常識」を当たり前だと思わず、見えない呪縛から自分を解放することが人生を変えるためには大切なのだ。
本書では「仕事」「家庭・育児」「恋愛・結婚」のそれぞれにかかる時間や労力をカットする「ちゃん卒」ポイントや、お金が増える法則なども伝授。愛のある辛口説法で、私たちが当たり前だと信じて疑わなかった常識をぶったぎってくる。
育児の常識を“ゼロベース”で考え直してみると…?
これまで自分が思い描いていた理想の自分像は、誰かの目を気にして彩った虚像だったのかもしれない。本書を手に取ると、今まで自分がいかに「他人の常識」に沿うように生きてきたのか分かり、新しい生き方が見えやすくなる。
“「女性だから、結婚しているから、子どもがいるから」そういった理由で、女性がやりたいことを我慢するのは仕方がないこと、という風潮はおかしい。自分次第でその発想から抜け出すことは、絶対に可能なはず”
そう信じて行動する小田桐さんのアドバイスは、仕事と家事や育児の両立に疲れ切った現代女性の心に刺さる。
特にユニークだと思ったのは、育児における「ちゃん卒」。小田桐さん自身が育児に直面した時、日本で当たり前だと思われている寝かしつけ文化や手作り食事などの常識が、海外ではさほど一般的ではないことを知ったため、小田桐さんは本当に必要なことを考えて、「ちゃん卒」しようとすすめている。海外の育児法に合わせる必要はない。けれど、やることが多くて苦しいと感じるくらいなら、一度常識を捨て去り、本当に必要なことをゼロベースで考えてみてもいいのではないかと、問いかける。
日本という括りではなく、「自分」という枠の中で必要なことややりたいことを考えようと訴えかける育児の「ちゃん卒」は、「いい母親でいなきゃ」と苦しむ世の女性の肩の荷を下ろしてくれそうだ。
「家事は週3時間で大丈夫」「子どもにiPadを見せてもいい」――そう提案する小田桐さんの育児論には、母親である自分自身が人生を楽しみ、子どもの幸せを生み出すためのコツも記されているので、ぜひチェックしてみてほしい。
「ちゃんとすること」で自分はいったい何を守りたかったんだろう…? 普段考えてきたこととは真逆の思考が詰め込まれた「ちゃん卒」のコツを知ると、少し心が楽になる。私が欲しかったのは、「せめて人並み」ではなく、「自分がわくわくできる人生」だ。これから先も、常識の枠の中で大切な自分のことを後回しにしそうになったら、また本書を開きたい。
文=古川諭香