ピュアで一途な黒ギャル×小説家志望のオタク青年のピュアな恋が、尊すぎて悶絶必至……!

マンガ

更新日:2020/6/12

『スーパーベイビー』(丸顔めめ/芳文社)

 マンガ『スーパーベイビー』(丸顔めめ/芳文社)は、読むと、あーギャルかわいーーー恋多き女だけど好きな人には常にピュアとか超尊いんですけどーーーと、何も考えずにきゅんきゅんしてしまうのだが、一方で、見た目やスペックで相手を決めつける危険性をふと突きつけられる作品だ。

 主人公のたまおは、熊本の田舎から上京してきた元ヤマンバギャル。いまは黒ギャル路線に切り替えて、ギリギリ東京の町田で服屋の店員をしながら暮らしている。〈そりゃー都会なら都会なほどいーし派手なら派手な方が絶対いい〉けど、〈なんかちょーどいい なんかちょーどべんり〉な町田は自分に合っていて好き、という彼女の肯定感が、まず心地いい。「今どき黒ギャルとか(笑)」なんて笑われても、同じことのくりかえしでしかない毎日は、少しでも自分の好きなものに囲まれていたほうが幸せだし、なんかつまんないなって気持ちがわかるからこそ、たまおは、ちょっとした変化を求める気持ちで店にきたお客さんに、精いっぱいの誠意で洋服を売れる。

私も現実に彼女と出会ったら、見た目の迫力に「住む世界が違いすぎる!」と避けてしまうんじゃないかと思う。けど、ただ好きなものの方向性が自分と違うというだけで他人を決めつけることほど、愚かでみっともないことはないよなあと思わされる、人としての魅力がたまおにはあって、それがものすごく丁寧に描かれているのである。

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 たまおが運命的に恋した楽丸も同じ。最初はたまおの見た目に怯え、連日勤務先に押しかけてくる彼女に怯えていたけれど、彼女がいつだって自分の感情に素直なだけで、楽丸がどうしてほしいか、なにを望んでいるかを一生懸命くみとろうとしていることに気づいてからは、徐々にその人となりに惹かれていく。それは、眼鏡で印象の薄いオタク的風貌をもつ楽丸自身が、先入観で決めつけられやすい人だからでもあるだろう。なおかつ、本当は小説家になりたいのに家業である医者を継ぐことを強いられてきた彼は、“好きなものをただ好きでいる、ということが許されない苦しさ”を知っているから。

 二人とも、相手に好かれるためだからといって、決して自分を捨てるようなことはしないのもポイントだ。素直すぎて、相手にも染まりやすいたまおは、「馬鹿だなあ」が口癖のモラハラ男の元カレに好きなものをすべてとりあげられて、支配されていた過去がある(2巻で明かされるその過去は、ギャルであろうとなかろうと女性が女性というだけで消費されてしまう現実をリアルに描いていて、腹が立つと同時に胸が痛くなる)。だから、どんなに好きな相手でも、いやがられない範囲で自分らしさを貫くし、そのまんまの自分を褒めて好きだと言ってくれる楽丸の優しさを、あたりまえと思わず、よりいっそう大切にできる。それは楽丸自身も同じで、まったくの“異文化”だからこそ、お互いをちゃんと知ろうとしていく二人の歩み寄りの過程に、読者はときめいてしまうのだ。

 まあ、そんなごちゃごちゃ考えなくても、たまおの性格とギャル語とうぶな楽丸がかわいいからぜひ読んでー、たまおの親友・さわちゃんもめちゃくちゃいい子でキュンとするから! と全力でおすすめしたいマンガである。

文=立花もも