【コロナショック攻略法】倒産リスクが高い会社、危機対応に向かない上司とは?
更新日:2020/5/28
5月20日、帝国データバンクが、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、「今年の倒産件数は1万件を超す」との見通しを明らかにしたと、東京新聞ほか多くのメディアが報じた。また、帝国データバンクの別の発表によると、コロナ倒産した企業はすでに174社(5月21日現在)で、業種別ではホテルや旅館が最も多く、次いで居酒屋やレストランなどの飲食店、アパレルや雑貨などの小売店、食品製造業の順だという(5月21日NHKWEB版)。
「大企業がつぶれなければ、日本経済は大丈夫だろう」と、思う人は多いだろう。しかし、『コロナショック・サバイバル 日本経済復興計画』(冨山和彦/文藝春秋)によれば、前述したような各種サービス産業はじつは、インバウンド景気の担い手で「今やわが国GDPの7割を占める基幹産業群の中核」だという。つまり、大手企業が傾かなくとも、日本経済の屋台骨の重要な一角が、すでにぐらつき始めているのである。
外資系コンサル、産業再生機構COOなどでの職務を通して、これまでにJAL、カネボウ、ダイエーなどの大企業を含む数々の企業群の再生を現場で指揮してきた著者による本書は、これから世界中で始まる“リーマンショック以上の危機”とも言われる経済危機に対して、経営者・サラリーマン双方の目線から、いかに備え・乗り越え・成長に向かうか、を見通した一冊だ。
倒産リスクが高い企業や、危機対応に向かない経営者やリーダーのタイプ
これまで世界中の人々の健康をむしばんできたウイルスが、今度は経済を襲うのである。著者によればその流れは、「L型産業(ローカル)→G型産業(グローバル=世界規模)→F型業界(ファイナンシャル)」の順で、浸食していくリスクが高いという。
L型産業とは、前述した中堅・中小企業が中心のサービス業群で、非正規社員・フリーターの多い産業だ。G型は大企業で、今後、熾烈なグローバル競争の渦に巻き込まれる。こうして、L&G型産業が疲弊すれば、不良債権を抱えたF型産業、つまり金融業界も崩壊の危機にさらされる、ということになる。
新型コロナは、基礎疾患を抱えた人の感染と死亡のリスクが高い。これにたとえて著者は本書で、倒産リスクが高い企業の基礎疾患がどういうものか、また、危機対応に向かない経営者やリーダーのタイプを挙げ、何を改善すべきかを指摘している。
経営に携わっている人や、自分の勤めている会社・上司を診断してみたい、という人には大いに参考になるはずだ。
特に「修羅場の経営の心得」として、8項目にまとめられたサバイバル成功術は、著者のこれまでの経験がコンパクトにまとめられた、必読箇所といえるだろう。
転職するより、「ギリギリまで会社に残って、修羅場を経験する」
では、20代、30代で将来、マネージメントリーダーを目指したいと思う人で、自分の会社に危機感を覚え、「転職」の2文字が浮かんだ場合、どうすればいいのか。
著者のアドバイスは、「ギリギリまで会社に残って、修羅場を経験するように」だという。その理由は、「今どき長期的な視点で本当に安全で将来性が保証されている産業も会社もないこと」、また、会社の危機は、将来に活かせるいろんな経験を若いうちに学べる「千載一遇のチャンス」でもあるからだという。
そう、これから迎えるのは、なにも苦難やサバイバルばかりではない。企業にとってみれば、これまでできなかった大改革を断行するタイミングであり、成長の転換点でもあるのだ。
本書には、ピンチをチャンスに変えた、様々な具体事例が挙げられている。また、今回のパンデミックによって見えてきた、これからの成長分野や注目すべきビジネスモデルにも触れている。
経済危機に強いビジネスモデルとして、著者が記す事例をひとつ紹介しておくと、「リモートな方法でソリューションサービスをリカリング(繰り返し利用、定期購買利用)型」である。
公共料金などのライフライン事業がその典型だが、今回のステイホームで大きく売り上げを伸ばした、映像配信のNetflixやAmazonプライムなどもこれにあたる。
いずれにしてもこれから大切になるのは、心構えなのだ。著者は、コロナ禍からの「復興」ではなく、コロナ禍を新経済システム転換への「契機」と見なすことで、マイナス思考を払拭することをアドバイスしている。
「ピンチがあれば、必ずチャンスもある」。どうやらしばらくの間は、これが世界中の人々の合言葉になりそうだ。
文=町田光