自分を責めていませんか? 肥満、疲労感、不眠…“文明病”のメカニズム/まんがでわかる 最高の体調④
公開日:2020/6/5
コロナ禍で、疲労、肥満、不眠、不安などに陥っていませんか? あなたの日々の不満や不調を根こそぎ解決し、過去最高のコンディションを実現するお手伝いをします! 累計10万部のベストセラー『最高の体調』、待望の漫画化。
「文明病」と「進化医学」
朝起きてもどこか体調が悪く、重い足取りで会社に向かい、デスクについてもやる気が起きず、適当な食事で腹を満たしたら、疲れ切って家に帰り眠る……。
自分の暮らしはうまくいっていないのでは? 自分の人生はこんなはずではなかったのでは? そんなふうに悩んでいる方は多いのではないでしょうか。
でも、ミスが多いのは自分が不注意だから。太った体は自分の意志が弱いから。落ち込みやすいのは自分の心が弱いから……。そうやって自分を責めていませんか?
しかし、本書では、「悪いのは自分だ」という考え方を採用しません。
なぜなら、あなたが抱える問題の大半は、「文明病」が原因だからです。
「文明病」とは、近代社会の変化によって引き起こされる、現代に特有の病気や症状。例えば、肥満、疲労感、なんとなくの不調、不眠、散漫な集中力、モチベーションの低下など……これらはすべて、「文明病」の症状なのです。
文明病に立ち向かうために必要なのは、「進化医学」の考え方です。
これは、ダーウィンが生み出した「進化論」と最新医学のデータを組み合わせ、人間の病気の正体を考えていく学問のことです。
現在の人類の基礎が形作られたのはおよそ700万年前。そこから人類は少しずつ進化を続け、1〜2万年前にようやく旧石器時代の狩猟採集生活から農耕生活に移動します。
つまり、人類はおよそ600万年にわたって、狩猟採集生活を続けてきたわけです。この壮大なタイムスパンを見れば、人類は進化の過程で狩猟採集生活に最適化してきたと考えるのが自然でしょう。
自然のなかで獲物を追い、太陽の運行とともに暮らし、少数の仲間と語り合う。人の脳と体は、そんな原始的(パレオ)な環境のなかでこそ最高のパフォーマンスを発揮するように進化してきたのです。
しかし、こういった進化は、現代の文明においてときにミスマッチを起こします。
例えば、文明病の代表例「肥満」の原因を考えてみると次のようになります。
〝ろくにカロリーを摂取できなかった時代を生き残るため、人の遺伝子には「高カロリーな食事を求める」というシステムが刻まれている。それが、現代の豊かな食環境では過剰摂取となり、古代ではあり得なかった「肥満」という現象が現れる〟。
文明病は脳と心にも悪影響をもたらす
こうした「進化と文明のミスマッチ」は、体だけでなく脳や心の問題も起こします。
例えば、集中力の低下。2013年、ロンドン大学のカリーナ・リンネル博士は、いまも狩猟採集の暮らしを送るアフリカのヒンバ族と、ロンドンの都市部で暮らす若者たちとで、集中力の比較テストを行いました[1]。結果、ヒンバ族の集中力は、ロンドンの若者に比べて約40%も高かったのです。
その理由についてリンネル博士は、「都市に住む者は〝扁桃体〟が過敏になるからだろう」と推測しています。扁桃体はヒトの脳に備わった警戒システムで、身の回りに危険が迫ると活性化し、緊急事態に備えるよう体に指令を出します。
この警戒システムは、遠くから聞こえる猛獣の声、目の前の茂みに潜む謎の生物など、古代の環境に特有の危機に対応するために進化してきたシステムです。
これが現代の環境では、しょっちゅう誤作動を起こします。サバンナにはなかった高層建築やテクノロジーにおびえ、夜も輝き続ける灯りにとまどいを覚え、狩猟採集の暮らしではあり得ない大量の情報に混乱を起こす……。
現代人の扁桃体はつねにスイッチがオンの状態であり、その結果として、どうしても集中力は分散してしまうのです。