現代人の“謎の不調”が起きにくい体を手に入れるには? 3つの○○を減らそう!/まんがでわかる 最高の体調⑤

健康・美容

公開日:2020/6/6

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『まんがでわかる 最高の体調』(鈴木祐:著、 ながみちながる:まんが/クロスメディア・パブリッシング)

文明病が引き起こす重大な病状・炎症

 文明病が引き起こす重大な病状として見過ごせないのが、「炎症」です。

 例えば、転んでヒザを擦りむいたとき、傷口からジクジクと液体が染み出し、軽い痛みとともに皮膚は赤く腫れ上がっていく─これが炎症です。

 炎症は、人体がなんらかのダメージを受けた際に起きる反応を意味します。有害な刺激を取り除こうと免疫システムが働き出した証拠で、ケガや感染を治すために欠かせないプロセス。進化の過程で人体に備わった、重要な防御システムなのです。

 問題は、現代人の炎症は、もっとわかりにくい形でも起こり、しかも慢性化していることです。とろ火でジワジワと全身を煮込むような形で進行するのです。

 擦り傷のように数週間で治る炎症ならいいですが、感染症や糖尿病などで体のダメージが慢性化すると、外敵を倒すために使う武器が逆に血管や細胞を傷つけ、人体を内側から壊し始めてしまうのです。

 その意味で、炎症はウルトラマンのような存在だと言えます。怪獣を3分以内に倒してくれるうちはありがたいですが、バトルが何日も続いたら、ウルトラマンの攻撃の余波でビルや家屋が全壊し、ほどなく誰も住めなくなってしまうでしょう。

 炎症も同じで、戦いが長引くほど人体のダメージは蓄積し、やがてジワジワと不調が現れます。「なんとなくいつも疲れている」「よく寝たはずなのに調子が悪い」「頭やお腹、関節が定期的に痛む」「肌のブツブツやかゆみが治らない」─これらの変化は、慢性的な炎症が引き起こす症状のごく一部にすぎません。近年では炎症とメンタルのつながりを調べた研究も進み、体内の炎症レベルが高い人ほどうつ病や不安症に悩まされやすいとの報告も増えてきました。現代人の〝謎の不調〟と炎症は、明確に連動しているのです


 慢性的な炎症が起きる原因はとても幅広く、運動不足、栄養不良、肥満、タバコ、ストレス、睡眠不足、大気汚染など多岐にわたります。いずれも、現代の生活環境によって引き起こされるものばかりです。事実、人類学者のスタファン・リンデベリ氏が行ったもの[2]をはじめ、多数のフィールドワークにて、「旧石器時代のライフスタイルに近い暮らしをする狩猟採集民には、慢性炎症に由来する病気がほぼ存在しない」と報告されています。

3つのフレームワーク

 では、現代の文明に身を置きつつ、狩猟採集民のような慢性炎症の起きにくい体を手に入れるには、どうしたらいいのでしょうか?

 ここで役に立つのが、ハーバード大学の古代人類学者ダニエル・リーバーマン氏が提唱した3つのフレームワーク[3]です。次のページの表をご覧ください。

 これら、古代の環境と比較して、現代に「多すぎる・少なすぎる・新しすぎる」ものを減らしていくことが、文明病に立ち向かうための指針となってくれます。

古代より多すぎるもの、少なすぎるもの
存在しなかった新しいもの

◉多すぎる

摂取カロリー
精製穀物
アルコール
オメガ6脂肪酸
塩分
乳製品
飽和脂肪酸
満腹感
食事のバリエーション
人口密度
衛生設備
人生の価値観

◉少なすぎる

有酸素運動
筋肉を使う運動
睡眠
空腹感
ビタミン
ミネラル
食物繊維
タンパク質
オメガ3脂肪酸
自然との触れ合い
有益なバクテリアとの接触
自然光の摂取量
深い対人コミュニケーション
他人への貢献

◉新しすぎる

加工食品
トランス脂肪酸
果糖ブドウ糖液糖
公害
人工の光
デジタルデバイス
インターネット
慢性的なストレス
化学物質
重金属
処方薬
抗生物質
孤独
仕事のプレッシャー

1 「文明病」とは、近代化によって引き起こされる、現代に特有の病気や症状。肥満、疲労感、不眠、抑うつ、集中力低下など。

2 文明病の脱却には、「進化医学=進化論と最新医学を組み合わせ、病気の正体を考える学問」が有効。

3 人の脳と体は、狩猟採集時代の原始的な環境の中で最高のパフォーマンスを発揮するように進化してきた。

4 文明病が引き起こす重大な病状として「慢性的な炎症」がある。

5 「進化と文明のミスマッチは何か?」を考え、現代では「多すぎる・少なすぎる・新しすぎる」ものを減らしていくことが必要。


<第6回に続く>