自分の価値観を絞り込めば、未来への不安は解消される! “PPA分析”のやり方を3ステップで解説/まんがでわかる 最高の体調⑬
公開日:2020/6/14
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PPA分析で価値観を絞り込む
未来と今の心理的距離を近づけるには、「価値観の絞り込み」が必要です。
狩猟採集民のように「生きる産む育てる」だけを目的にすれば、その時点で未来の姿は確定し、もはや次の行動に思い悩む必要はなくなります。一方で現代のように人生の選択肢が豊富な社会では、未来の姿はいくつにも分岐。あいまいな将来は私たちのなかで明確な像を結ばなくなり、結果として未来との心理的距離は遠くなっていきます。これが、価値観のブレによって不安が起こる理由です。
この問題を解決するには、いったん分岐した未来をまとめるしかありません。自分のコアとなる価値観を絞り込むのです。
「パーソナルプロジェクト分析(PPA)」という手法を紹介します。ケンブリッジ大学のブライアン・リトル氏が考案した、「人生の満足度を高める」ための自己分析メソッド[7]です。30年以上ものデータの蓄積があり、実践した被験者は概ね人生の満足感が上昇することがわかっています。

ステップ①パーソナルプロジェクトのリストアップ
「今自分が取り組んでいるプロジェクト」をリストアップ。「部屋の掃除」といった日常的なタスクから、「営業成績1位を目指す」のような中長期的な目標、「良い人間になる」ぐらいのふわっとした願望でもOKです。現時点で取り組んでいることはすべてプロジェクト。リトル博士によれば、多くの人は平均で15種類のパーソナルプロジェクトに取り組んでいるとか。10〜15分をかけて、思いつくだけ書きます。
ステップ②プロジェクトのレーティング
リストアップしたプロジェクトから、自分が重要だと思うものを直感で10個だけ選択。選んだ選択肢は「PPAレーティングマトリックス」に書き込み、次のページの採点表を元にそれぞれの「重要性」や「簡単さ」を10点満点で採点します。
パーソナルプロジェクト採点法
・重要性:自分にとってどれだけ重要か
・簡単さ:取り掛かるときの敷居の低さ
・透明性:友人・家族が内容や進み具合を知ることができる、または理解できるか
・管理性:どれだけ「自分でコントロールできている」という感覚があるか
・責 任:社会的な責任があるか
・時間適正:実施するだけの十分な時間があるか
・成功率:達成、または満足できるレベルまでこなせる確率は高いか
・自己同一性:自分のアイデンティティに沿っていると感じられる、または、自分の性格に適していると思えるか
・他者からの重要性:他人から見て、重要だと感じてくれそうか
・進捗状況:今の時点でどれだけ達成できているか
・やりがい度:やりがいが感じられるか
・没頭度:夢中になってのめり込めるか
・支持レベル:達成するための何らかのサポート(金銭やアドバイスなど何でもOK)が得られるか
・自律性:誰から強制されるわけでもなく「自分の意志でやる」と感じられるか

ステップ③プロジェクトの上位分析
最後に各プロジェクトを深掘りします。ステップ2で浮かび上がったプロジェクトのなかから得点が高い5つを選び、上位の概念に展開していきます。具体的には、それぞれのプロジェクトに次のような質問をぶつけてください。
◎このプロジェクトをふくむもっと長期的なプロジェクト、またはもっとスケールが大きいプロジェクトはなにか?
◎そもそも自分はなぜこのプロジェクトをやっているのか?
一例として、「食べ過ぎを止める」というプロジェクトを展開させてみたのが、次のページの図です。何度も問いを重ねていき、もっともトップに出てきた上位概念があなたの価値観になります。リトル博士のデータによれば、だいたい5〜6段目まで進んだあたりで自分の価値観にたどりつくケースが多いようです。


ひとつのプロジェクトに対して、複数の上位プロジェクトを展開しても構いません。例えば「食べ過ぎを止める」というプロジェクトに、「体重を減らす」のほかにも「健康になる」という目的もあるとしたら、両方を上位に展開させます。

1〜2段目あたりで詰まってしまったときは、PPAレーティングマトリックスの点数を参考にしてみてください。「食べ過ぎを止める」というプロジェクトの「他者からの重要性」の点数が高ければ、あなたにとっては友人や家族への印象が大事なのだと考えられますし、「自己同一性」の点数が高ければ、ダイエットによって自分らしさを取り戻したいのだと考えられるでしょう。いずれにせよ、プロジェクトが上に向かうほど価値観は見つかりやすくなります。
いったん最上位の価値観が見つかれば、あとはそれに沿って毎日の暮らしをコントロールしていくだけです。
なお、本当の価値観を見つけ出す作業は難しいもの。「PPA」を駆使しても、自分がしっくりくるような価値が出てこないケースは多々あります。そんなときは、いったん「最大公約数の価値観」に従ってみるといいでしょう。
ミシガン州立大学が約20万人分のデータを精査したメタ分析[8]によれば、人間は自分の行動が他者に良い影響を与えていると確信できたときほど幸福感が高まります。もし未来の選択に不安を感じたら、試しに「誰かの役に立つ行動は?」を考えてみてください。

1 「不安」は炎症と並ぶ文明病の重大な症状であり、脳と体に大きなダメージを与える。
2 狩猟採集民の時間感覚は「今、ここ」がメイン。現代のように、より複雑な「未来への不安」を抱くことはなかった。
3 不安の解決策は、「未来と今の心理的距離を近づける」(現在の決定が未来に及ぼす影響を実感できるようになる)こと。
4 現代のように人生の選択肢が豊富な社会では、未来の姿はいくつにも分岐し、心理的距離が遠くなるので、不安が生じる。
5 「PPA分析」で自分の価値観を絞り込み、それをもとに行動を選択していけば、未来への不安は解消される。


