「ネガティブな気持ち」は自分からのメッセージ。“不安”や“怒り”の画期的活用法
更新日:2020/6/10
コロナ禍のいま、精神的なストレスを抱える人は少なくないだろう。社会や家族、職場の同僚に、怒りや不満といったネガティブな感情を抱くこともある。世の中では「感情はコントロールすべきだ」といった言葉がよく聞かれ、一理あるように思える。だが、その考え方を「思い込み」と断言するのが心理カウンセラーの石原加受子氏だ。
『感情はコントロールしなくていい 「ネガティブな気持ち」を味方にする方法』(石原加受子/日本実業出版社)で石原氏は「ネガティブな感情は、自分が自分を守るため、あるいは愛するための、自分の無意識からのメッセージ」と諭す。ネガティブな感情を毛嫌いしてコントロールするのではなく“自分をよく知り変えていくための情報”として活用しようというものだ。
「すぐに怒ってしまう」「他人と比べて焦る」「失敗したらどうしよう…と不安になる」「自分ばかり我慢している気がする」…これらのネガティブな感情は“自分を愛していない”ときに感じるものだという。自分の“怒り”や“焦り”の背景に何があるかを知れば、自分を大切にすることができ、ポジティブに生きていくことができる。
たとえば、人を怒鳴る行為には「ひとりぼっちになるのが怖い」という思いが隠されている。人に依存しているために、自分が見捨てられそうになるとその“不安”を“怒り”で表現するという。自分の無意識が「俺をひとりぼっちにしたら、許さんぞ!」と叫んでいるのだ。
あるいは、仕事などでいつも「自分ばっかり我慢している!」という人は、実は「頼みごとを断って嫌われるのが怖い」と思っているのかもしれない。自分の心を守るために、さみしさを怒りでカバーしているのだ。このように、自分の本当の思いに気づくことが肝心である。
「ある不安が起こるとしたら、その一つひとつにおいて、不安になる理由があります」
と石原氏は言う。
たとえば、怒鳴って言うことを聞かせようとする親に育てられると、子どもは「自分が黙っていればうまくいく」という我慢を覚えてしまう。そして、いずれ自分も親のような態度を誰かに取るようになってしまうかもしれない。
自分のネガティブな思考や行いが、そんな“さみしさ”や“怖さ”にとらわれているのだと気づくことが必要だ。ネガティブな感情を無理に抑え込むのでなく、自分の本心に気づくことで、嫌なパターンを解消していくことができる。
とはいえ感情を「暴発させていい」というわけではない。感情を誰かにぶつけても、思ったほどスッキリしないのだ。相手を責めても怒鳴っても、根っこにくすぶっている感情をスッキリ解消させることは難しい。「自分が傷つくのが怖いのだ」ということに気づくと、負のスパイラルに陥るのを防ぐことができる。
怒りや焦り、不安、我慢といったネガティブな感情は誰もが持ちたくないものだ。それらの感情を「コントロールしなくては…」と焦るのではなく、自分の本心からのメッセージだととらえよう。ネガティブな感情を味方にすることで、気持ちはおだやかになっていき、自分を大切にすることができるだろう。自分をより深く知るための「無意識からのメッセージ」を受け取り、ストレスフルな日常から抜け出していこう。
文=ジョセート