互いにありのままを受けとめる、ちいさなカッパとやさしいくまくんに胸キュン!

暮らし

公開日:2020/6/10

『自信がなくたって堂々と生きていけばいいんだ。ちいさなカッパとやさしいくまくん』(くまのみつ/KADOKAWA)

 自分のことを「100%好き」と言い切れる人は少ない。まれに、「あの人は自分が大好きなんだろうな」と思う人物に出会うことはあっても、ごく少数だ。

 フォロワー数4.5万人、くまのみつさんのインスタグラム「ちいさなカッパとやさしいくまくん」に登場するカッパくんも、いつも不器用な自分に自信をもてない。

 あるとき、カッパくんは弱々しくつぶやく。
「ボクはポジティブになるんだ……。ネガティブはみんなに嫌われるから……」

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 するとくまくんは、こう応える。
「ポジティブを演じるより、自分らしさを隠さないで、堂々としていることが一番のポジティブじゃないのかな。きっとそのままのカッパくんを好きになってくれる人はいるよ。ぼくとか」。

 またあるときは、失敗して落ち込むカッパくんに、くまくんはこんなふうに伝える。
「失敗ってカッパくんがダメだからする……ってことじゃないんだよ。失敗はチャレンジをしないとできないことなんだ。カッパくんはいつもいろんなことにチャレンジしているんだ。それってすごいことじゃない?」

 くまくんは、カッパくんが素直に一生懸命に生きていることを理解し、すべてを受け止めてくれる存在。だからこそ何気ない日常のなかで、ふたりが交わすささやかな会話に、不思議と心が温められ、ほぐれていく。

 私たちは気づかないうちに、仕事のできる社会人、理想的な夫婦、立派な親になろうと、本当の自分を横において空回りしているのかもしれない。

 まわりから求められているわけではないのに、身についてしまったこうした考え方が、ときに生きづらさや息苦しさを生み出す原因のひとつになっているのではないだろうか。だからこそ、どんなときでも周りと比べたりしない、くまくんの言葉が、カッパくん同様、見ている側の心にも響く。

「自信はつけようと思ってつくものじゃないと思うんだ」
「自信がなくたって堂々と生きていけばいいんだ。誰かに何か言われたとしても、カッパくんはカッパくんらしくいればいいんだ。カッパくんの良さはきっと誰かに伝わるよ」

 作者くまのみつさんが描くのは、こうした限りなくやさしくてあたたかな世界。この作品が初めて書籍化され『自信がなくたって堂々と生きていけばいいんだ。ちいさなカッパとやさしいくまくん』(くまのみつ/KADOKAWA)として発売された。

 ページをめくるうちに、自粛続きで疲れた心がスッと軽くなり、自分を認めてあげようという思いがふつふつとわいてくる。

文=向千鶴子