ホリエモンが仕掛ける都知事選勝利に向けた提言は? 満員電車ゼロ、大麻解禁は東京都にとってメリットがあるのか?
公開日:2020/6/12
ホリエモンこと堀江貴文氏の新刊『東京改造計画』(幻冬舎)が発売された。冒頭では小池都知事への批判から始まり、経済や教育、コロナ対策など、37の提言を行う刺激的な内容だ。一部報道では、堀江氏が都知事選に出馬するのではないかとも言われている。本稿を書いている時点ではどうなるかわからないが、本書には「ひょっとしたらやってくれるかも」と思わせる説得力がある。
堀江氏は、ビジネスの世界で成功している実業家だ。そんな彼に政治家として何ができるのかと疑問に思う方もいるかもしれない。だが、こう考えてみてほしい。東京都の予算は年間7兆円以上。人口は1400万人だ。たくさんの施設と、張り巡らされた交通網もある。これらの資産をフル活用し、東京をより豊かな都市にする――こう捉えると、彼が行ってきたビジネスにも通じる論点がある。
たとえば、序章では「都心に24時間営業のゴルフ場を作りたい」と語る。東京湾の埋め立て地には、都営の「若洲ゴルフリンクス」というゴルフ場があるが、六本木から高速道路で15分という好立地の上激安なので、予約を取ることはなかなかむずかしい。ならば、24時間営業・夜は会員制にしてお金持ちを呼び込むべきだ、と彼は語る。そこで生まれた利益を、都民に還元していけばいいというのだ。本書はこういった論調でわかりやすく都の課題に切り込んでいくので小気味よいと感じる人は多いだろう。
“本当の”満員電車ゼロをどう実現する?
小池知事は、4年前の都知事選で「7つのゼロ」を公約として掲げた。だが達成にはまだほど遠い。「満員電車ゼロ」もそのひとつで、公約の達成に向けて何か変革が行われたという実感も少ないだろう。皮肉にも新型コロナウイルスの影響で達成したと言われているが、今のこの状況は長く続かないだろう。
さて、堀江氏は、この課題に対してどんな策を考えているのだろうか。彼が提言するのは、ダイナミックプライシング(価格変動設定)の導入。混雑時の値段設定を高くして、乗客を分散させようというのが狙いだ。交通道路の渋滞緩和などにも応用ができる。コロナの影響によるリモートワークや時差出勤を多くの人が経験した今、皆が同じ始業時間に集まる必要が薄まったことは明白である。ならば、さらに時間をずらせるような仕組みをつくればいいというのだ。
炎上覚悟で語る「大麻解禁」の内容は?
ホリエモンといえば「炎上」である。氏の提言が賛否両論を巻き起こす大きな理由は、「感情的には認めにくい」が、「よく考えると一理ある」からだ。「大麻解禁」について語る項からも、彼の思想が読み取れる。
「大麻」の文字を見た瞬間に「けしからん!」と感じた人は、固定観念にとらわれず、まずフラットな感覚で情報を整理してほしい。たとえば、あなたは知っているだろうか。大麻には中毒性がどれくらいあるか。それはタバコやアルコールに比べてどれくらい高いのか。解禁した場合にはどんなメリットが考えられるのか――大麻解禁の是非を真剣に考えるためには、まずは事実を知る必要がある。本書を読むと、少なくとも問答無用で切って捨てるようなトピックではないとわかるはずだ。
堀江氏が東京都知事選に出馬するかはわからない。それでも、本書の議論は、驚きと発見の連続だ。これまでの政治家が実現できなかったことを、成し遂げてやろうという心意気と知恵が本書には詰め込まれている。読後の感想は、賛成、反対、両者いろいろあるだろう。だが、本書を読むことが、自分自身の「東京都についての理解」を格段に深めることは約束したい。
文=中川凌(@ryo_nakagawa_7)