自粛期間中に増えた中高生からの「性の相談」――背景にある日本の性教育の問題点
更新日:2020/6/12
女性特有のからだの不調やトラブルで悩んでいませんか。「お医者さんに行くほどではない…」「デリケートなことなので人には聞きにくい…」そんな体の悩みを、All Aboutガイドであり、ポートサイド女性総合クリニック・ビバリータ院長の清水なほみ先生に聞きました。自分のからだと向き合い、健やかに過ごす手助けとなってくれることでしょう。
3月から5月の自粛期間にかけて、中学生や高校生からの性に関する相談が増えているという指摘があります。性に関する相談を電話やネットで受け付けている、NPO法人「ピッコラーレ」やNPO法人「ピルコン」への相談件数も、休校前に比べて急増しているとのこと。親が育てられない乳幼児を匿名で受け入れる「こうのとりのゆりかご」(赤ちゃんポスト)を運営する熊本市の慈恵病院は、4月の中高生からの相談件数が過去最多であったと発表しています。
これらの現象は、なぜ起きるのでしょうか? 原因のひとつは、学校という環境がなくなったことで、中高生同士のコミュニケーションの場が個室化したことが挙げられます。また、親との関係が悪く、学校が逃げ場になっていた子どもたちがパートナーの家に逃げ込むしかなくなるなど、性行為に至りやすい環境がそろいやすくなっていた可能性が考えられます。
休校期間中に学校での性教育が行われなくなったことも一因との指摘もありますが、2カ月間のうちに行われる性教育の回数を考えると、その期間の「空白」の影響よりも、日頃から性に関する知識を身につける機会がないことの影響の方が大きいと考えられます。
そもそも日本は小学校から中学校までの義務教育の中で、「避妊」に関して教育するというプログラムになっておらず、「学習指導要領」では義務教育期間中に「性行為」については「学ばない」ことになっています。早期に性行為について学ぶことが「寝た子を起こすことになる」という考えからです。しかし、現状ではネットに性的な情報は制限なく公開されており、10代でも簡単にアクセスできる環境にあります。
性に関する悩みを抱えるのは、10代の本人たちの責任ではなく、必要な知識を適切なタイミングで「教育」していない、大人の責任なのです。クリニックでは、自粛期間に合わせて来院患者数を絞っていたにもかかわらず、4月のクラミジア陽性数が急増しました。クラミジアに感染しているのは10代の若い方だけではありません。10代から40代の既婚の方まで、どの年代も「安全な性行為」を行うにはどうすればいいのかが周知されていないのです。また、なんとなくの知識はあっても、それを適切な行動に結びつけるだけの訓練がされていません。
性に関する知識は、年代を問わず必要です。これを機会に、どうすれば適切な避妊と性感染症予防ができるのか、それぞれが考えてみてはいかがでしょうか?