「逃げるは恥だが役に立つ」ってどういう意味? ことわざから見える世界中の悩み
公開日:2020/6/16
世界には、様々なことわざがある。たとえば「逃げるは恥だが役に立つ」。新垣結衣、星野源の主演でドラマ化された大人気漫画のタイトルとしておなじみだが、元々はハンガリーのことわざで「恥ずかしい逃げ方だったとしても、生き抜くことの方が大切」という意味だそうだ。そんなことわざがあるなんて知らなかったという人も多いだろう。世界には、きっと私たちの知らないことわざがまだまだたくさんあるに違いない。
『まんが アフリカ少年が見つけた 世界のことわざ大集合 星野ルネのワンダフル・ワールド・ワーズ!』(集英社)は、アフリカ生まれで日本育ちの漫画家・星野ルネ氏が、世界各国のことわざを教えてくれるコミックエッセイだ。この本を読めば、ことわざから世界が見えてくる。早速いくつか世界のことわざをご紹介するとしよう。
「医者が3人いるよりは、むしろいない方が安全」!? ことわざから見える世界中の悩み
世界には似た意味のことわざがたくさんあるらしい。たとえば、日本では、指示する人が多くて物事がまとまらないことを「船頭多くして船山に上る」というが、これと似たことわざは世界各国にあるという。
ドイツでは、同じ意味で「医者が3人いるよりはむしろいない方が安全だ」という言葉があり、イギリス・フランス・ポルトガルなどでは「料理人が多すぎるとスープがまずくなる」、インドでは「僧多くして寺廃れる」というのだそうだ。
世界には、それだけ物事のイニシアチブを取りたがる人がいるということなのだろうか。似たように、誰かがやるだろうと思って、物事が進まないことを表す言葉として、「炊事女が6人いるところに食べるものはない」(ポーランド)、「家に主婦が2人いると埃が膝まで溜まる」(イラン)というものもある。人がただ集まっただけでは物事は進まない。同じような状況を表すことわざがこんなにも多いということは、どこの国でも似たようなシチュエーションに陥ったことがあるということなのだろう。
どこの国でもやっぱり「女心」は変わりやすいもの?
日本で変わりやすいもののたとえとして使われることわざといえば、「女心と秋の空」だ。日本と同じように、捉えどころのない女心を自然現象としてたとえた「女心は南風」(スペイン)、「風と女と運命は月のように変わる」(フランス)というのも美しいが、その他にも似たようなことわざは世界各国にある。「女の心は猫の目」(ドイツ)、「3日の留守で女心は他所へ行く」(タイ)、「晴れた空と笑っている女は信用できない」(スウェーデン)…。こうして見ると、なんとヒドい言われようだろう。どこの国でも女心は移ろいやすく思われてしまうものなのか。
「突然アルマジロを贈られる」…ローカルすぎてピンとこない、ことわざたち
世界には、日本と似たことわざがある一方で、ローカルすぎて、全くピンとこないことわざもある。たとえば、アルゼンチンのことわざ「突然アルマジロを贈られる」というのは、「めったに食べられないアルマジロをもらった時のような驚きと喜び」を表すらしい。
タイのことわざ「振りかけたパクチー」は、「見かけや体裁を取り繕うこと」という意味。たとえまずい料理であっても、パクチーの香りと彩りで美味しそうに見えることを表しているのだそうだ。どちらも現地の食文化をわからないと理解できないことわざといえるだろう。
あなたもこの本でことわざをきっかけに世界に目を向けてみたらどうだろう。ところ変わればことわざも変わる。世界のことわざには、各国の文化がギュッと詰め込まれている。
文=アサトーミナミ