パリピ×諸葛亮、抹茶フラペチーノ×光源氏…混ぜたらおもしろい「偉人の現代転生作品」3選!
公開日:2020/6/13
小説やライトノベル、マンガなど創作物の一大ジャンルになっている“異世界”をテーマにした作品群。たとえば、主人公の死後、前世の記憶を持ったまま異世界で生まれ変わる「異世界転生」や、死んでいなくても異世界に飛ばされる「異世界転移」など、さらに多様化が進んでいるようです。
サラリーマンがスライムになったり、女子高生が蜘蛛の魔物になったりと、現代に生きている人々が主人公になるケースが多いなか、教科書に名前を連ねる偉人が突如“現代”に舞い降りる作品も徐々に増えつつあります。本稿では、偉人が現代で活躍する現代転生・転移作品をご紹介します。
『パリピ孔明』(四葉タト:原作、小川亮:漫画/講談社)
諸葛亮、字は孔明。三国時代蜀国の丞相として活躍し、名軍師として中国の歴史にその名が刻まれている偉人です。天才軍師の彼が、平和な日本の渋谷に転生してパリピ文化に触れたら、いったいどんな化学反応が起きるのか……。そんな斬新すぎる設定を実現したのが、マンガ『パリピ孔明』です。転生直後、渋谷のクラブで歌うアマチュアシンガー・EIKOの歌に魅入られた孔明が、彼女の歌声を多くの人々に届けるべく敏腕マネージャーとして暗躍します。かの有名な「石兵八陣」をはじめ、さまざまな計略を繰り出して、EIKOをサポートする孔明の軍師力に、膝を打つこと間違いなし。
その頭脳明晰さによってすぐさまスマホを使いこなすなど、現代文化に爆速で馴染んでいく孔明も見どころです。
『いいね! 光源氏くん』(えすとえむ/祥伝社)
マンガ『いいね! 光源氏くん』は、平安の色男『源氏物語』の光源氏が、27歳の働くOLの家に舞い降りるラブコメディ。ある夜、雑貨メーカーの企画課勤務の藤原沙織の部屋に、光源氏らしき雅な美青年が現れます。行く宛もないので、そのまま彼女の部屋に住みつくことに。衝撃の展開に慌てふためく沙織殿と、どんなときも優雅に過ごす光源氏こと光くんのコントラストが印象的です。そんな光くんは、感情が揺さぶられるたびに、所構わず短歌を詠んで涙を流す、豊かな感受性の持ち主。初めて抹茶フラペチーノを飲んだときに詠んだ短歌がこちら。
かをりたつ 抹茶にしびれ かの春の 若草山に 帰りしかとも(何とも言えない抹茶のこの香りに包まれた飲み物は、いったい何なんだ? まるで春のあの若草山に帰ったかのような思いがする)
毎回訪れる光くんの短歌タイムは、私たち読者が忘れかけていた現代の“小さな幸せ”を教えてくれます。多分。
『転生! 太宰治 転生して、すみません』(佐藤友哉/星海社)
『走れメロス』や『人間失格』で知られる文豪・太宰治。この『転生! 太宰治 転生して、すみません』は、愛人の山崎富栄とともに玉川上水で入水自殺したはずの彼が2017年の東京・三鷹市に転生する現代小説です。転生したにもかかわらず、翌日には井の頭公園の井の頭池で心中を試みたり、メイドカフェでヲタ芸をしたり、アクティブに現代の日本を楽しむ様子が描かれています。そして、太宰ファンならクスリと笑える小ネタも仕込まれている本作。
たとえば、道端で倒れていた太宰の世話をしてくれた一家の主に「芥川龍之介に似ている」と言われたときのこと。
芥川!
私は、芥川にあこがれていました。
学生時代は相当に入れこみ、思いのままに、芥川の名前を、ノートにびっしり書き連ねたりしたものです。もし、あのノートが、世間の目に触れることでもあったら、生きてはいけないでしょう。
実際に太宰治のノートは2013年に発見され、いろいろな書体で「芥川龍之介」を書き連ねる偏愛気味な落書きは、すでに全国にさらされています。つらすぎますよね。転生した太宰は、まだその事実を知らないはず。このまま気づかずにいることを祈ります。
生きる楽しみを知る太宰や、現代人の“当たり前”に感動する光くん、時代を超えて軍師の才能を発揮する孔明……。そろそろ、あなたの好きな偉人も現代に転生してくるかもしれませんよ。
文=とみたまゆり