250万いいね突破! 新入社員と不器用な先輩が巻き起こす「社会人の教科書」的オフィスラブコメ
公開日:2020/6/14
この春、社会人になった皆さん。あなたの先輩は厳しいだろうか。ただその人は性格がきついわけではないかも…。『不器用な先輩。』(工藤マコト/スクウェア・エニックス)は、新卒の人が会社で先輩と接するヒントになる作品だ。そして新人を教育する先輩もまた、共感できる人が多いだろう。
ここで「えっ、これビジネス書? ツンデレ先輩ちゃんのオフィスラブコメじゃないの?」と思ったあなた、それも正解だ。Twitterで累計250万“いいね!”はダテじゃない。思う存分ニヤニヤしてキュン死できるので安心してほしい。
先輩は少しきつめの人。でもそれだけじゃないことを俺は知っている…
亀川侑(かめがわ ゆう)は22歳の新社会人。彼の教育係になったのが、“綺麗だが厳しい”と会社で恐れられている鉄輪梓(かんなわ あずさ)だった。同期や他の先輩たちから心配されるものの、亀川はすぐに気づく。鉄輪の優しさに。新人である自分のことを深く考えてくれていることに。
先輩は少しきつめの人だ
――でも…
なんだかんだいって
優しい人だ
ヒロインの鉄輪は、きつめではなく不器用なだけなのだ。さらに緊張しがちで、テンパっていることのほうが多い。ついでにインドア派で大のゲーム好きのアラサー女子、と会社でのイメージとはおよそかけ離れているのである。
おい!
邪魔だどけ
亀川にこう言った心の中は
出来た!
やっと
きちんとうまく
あいさつ出来たっ…!!
読んでいる私たちはずっこけるわけだが、鉄輪は大まじめ。彼女はコミュ障で緊張しい。亀川がいつもしっかりあいさつしてくれるのに「お、おう…」としか返せていなかったことを気にしていた。ありていに言えば天然、そしてかわいい、かわいすぎる。
鉄輪はいやいや教育係をやっているわけではない、むしろ張り切っており後輩に頼られたいと思っている。ある日金欠で昼食をカップラーメンで済まそうとしていた亀川に、鉄輪は「貧相なものを食べて体壊したらどーする? それで仕事が遅れたら、私の責任になる。黙ってついてこい」と相変わらずの口調で言う。
誘えた!!
やっとうまく
ランチに誘えた!!
心の中はニコニコの鉄輪。か、かわいい…(2回目)。彼女には新人のふるまい方を指導してくれた神崎という先輩がいた。彼女のスマートなふるまいに感動したものだった。神崎はふたりでのランチ時には逆に気をつかわせず、後輩のために水をとってくれたりした。鉄輪はよし自分も…と思っていたが、気がつくと亀川が水とおしぼりを差し出していた。
ウチがやろうと
おもっちょったんにー!!
大分弁での心の叫びがこだまする…。物語は終始この調子。ただ考えてみれば、普通の会社員はマネジメントを学んでいるわけではない。たった数年働いて教えられることなど、仕事のやり方ぐらい。ある日いきなり先輩になって、業務以外で後輩とうまく接することもできる、そんな器用な人は多くない。
亀川は、態度は厳しい鉄輪の優しさ、表情の変化などを敏感に読み取って懐いている。鉄輪は不器用かもしれないが、彼は“器用すぎる後輩”なのだ。
新入社員のあなたは「先輩、あたりがきついな…まだ仕事ができないからだよな、嫌われている」などと考えてしまうかもしれない。でもそれはただ、先輩が不器用なだけかもしれない。
不器用は恋のはじまり…? ニヤニヤは止まらず加速していく
本作はオフィスラブコメではあるが、単行本を読んだ限り進展はまだまだだ。とはいえ鉄輪は、取り繕ってはいても、少しずつゆるみ、亀川の前で無邪気な素がでてきてしまう。
この辺のニヤニヤポイントは、ぜひ読んで確かめてみてほしい。ここで単行本のカバーにあったキャッチコピーを紹介しよう。
「不器用」は心の琴線に触れる才能だ。
触れられているのは読んでいる私たちであり、亀川だ。鉄輪の「不器用」さによって何かが始まっているのかもしれない。
蛇足だが、最後にひとつ。鉄輪の教育係、憧れの神崎先輩。彼女も実は不器用な部分を抱えているのだが…これはまた別の話。よかったらあわせてチェックしてみてほしい。
文=古林恭