本当の「頭のよさ」を齋藤孝が解説! 子どもから社会人まで必要な“ものさし”のつくりかた
公開日:2020/6/17
6月に入っていよいよ学校の再開が本格化し、とりあえず親もほっと一息。子どもたちには待ちに待った学校生活を思いっきり楽しんでもらいたいものだ。
ところでこの休校中、オンライン授業の環境が比較的整っていたご家庭の中には「オンライン授業は悪くなかった。むしろ学校に行くより効率的」と感じた方もいたのではないだろうか。withコロナの社会は普段の「当たり前」を見直す気運が高まるといわれているが、「なにも学校に通学しなくてもいいのでは?」と根本的な疑問を持った方もいるかもしれない。
テレビでもおなじみの教育学者・齋藤孝さんは著書『本当の「頭のよさ」ってなんだろう? 勉強と人生に役立つ、一生使えるものの考え方』(誠文堂新光社)の中で、そんな疑問にシンプルに答える。曰く、学校とは勉強のために通うところではなく「いろいろな人がいることを知り、人との接し方の練習をする」ための場。育った環境や性格、ものの考え方の違う人が集まっているひとつの「社会」が学校であり、その一員としてなんとかやっていくという経験自体が「社会という場で生きていくための予行練習」になるというのだ。
確かに学校では普通の授業だけでなく運動会や文化祭といった集団の協働を求めるイベントも多く、その意味では半分納得。でもやっぱり「毎日」であることに疑問は残る。だが齋藤さんは、むしろ「毎日」だからこそ意味があると強調する。「毎日、ほかの人にかかわりに行く」ことが練習になり「慣れる」ことができるし、それが人との距離の取り方といった「社会で生きていくコツ」につながっていくというのだ。
なのでちょっとしんどくても、それを乗り切ることも「課題」のひとつ。なんだか面白くなければ「ただ毎日そこにいる」だけでもいいし、イヤだと嘆きたくなったら「静かにやり過ごす」ことを覚えるといい(もちろん最悪の時には脱出してよし。絶対に出口はある)。消極的にも思えるアドバイスだが、だからこそリアリティがないだろうか。
本書のテーマはタイトル通り「本当の頭のよさとは何か?」を考えるというものだ。学校を軸にした世界では、テストの点数や偏差値が頭のよさを測る絶対的な「ものさし」であるかのように思えるが、いざ社会人になるとそれだけではうまくいかない。頭のよさを測るものさしが「社会に適応できること」に切り替わってしまうからだ。つまり「頭をよくする=(社会に適応して)生きるために必要な力をつけること」なのだ。
意識すべきは「どういうやり方をすれば、自分の力を伸ばしやすいか」になってくる。その意味では勉強することも「自分を広げる」ために大事だし、上記のように学校に通うことも「練習」だ。さらに「受験/本の読み方/周囲との関係」だって、取り組み次第で大いに意味が違ってくる。本書をガイドに学び方を捉え直していくことは、生きる上での「カシコイやり方」を知ることにつながるだろう。ちなみに「高学歴のほうが何かと得なのは事実」など社会の実相への目線は現実的で、理想論に終わらないから信頼がもてる。現在9万部を突破しているという事実からも、本書がいかに手応えのある本なのかわかるというものだ。
なお、もともと10代向けに書かれた本であり総ルビもふってあるので、小学校高学年のお子さんなら読もうと思えば自分で読めるだろう(早い子は中学受験から本格的な学びの格闘が始まるわけで、この本が背中を押してくれることもあるはずだ)。大学生や社会人にだって多くの発見があるに違いない。
「本当の頭のよさを考えることは、本当に大事なことは何かを考えること」だと齋藤さん。コロナが時代の転換をもたらした今だからこそ、こうした本質的な問いを考えることが心に響く。そしてさらに「自分の頭」で考えていくことが、新たな未来に向けた確実な一歩になっていくことだろう。
文=荒井理恵