男の子は厳しくするほど強くなる? 「怒鳴る」「たたく」育児は大間違い! 男子の自己肯定感を高める幼児期のしつけ&親の心構えをスッキリ指南

出産・子育て

公開日:2020/6/19

『男の子に「厳しいしつけ」は必要ありません! どならない、たたかない!で才能はぐんぐん伸びる』(著:高祖常子、漫画・イラスト:オキエイコ/KADOKAWA)

「男の子はたたかれて覚える」という思い込みを捨てる

「withコロナ」時代がスタートした2020年。新しい生活様式が家庭に及ぼす影響は決して小さくない。ステイホームが引き金になる「コロナ離婚」という言葉が生まれたが、DVの矛先は子どもにも向かっている。厚生労働省によれば、今年1~3月の児童相談所の虐待対応件数は1~2割増加したそうだ。

 痛ましい虐待死のニュースも後を絶たない。2019年に虐待で亡くなった子どもの性別は、男子51.3%、女子45.6%。この数字からは、「男の子は言っても聞かないから、たたくもの」「厳しくすれば男の子はたくましく育つ」という親のジェンダーへの思い込みが浮かび上がってこないだろうか?

 異性であるママは、女の子に比べて切り替えに時間がかかって、力と好奇心と闘争心がケタ違いに強い男の子の気持ちがイマイチよくわからない。わが子が乱暴な場合は、「同じ痛みをわからせたほうがいいの!?」と戸惑うことも。同性のパパは男の子のよき理解者である一方で、「たたいてナンボ」という考えを持つ人もまだまだ少なくない。なぜなら、「自分もそうやって育てられた」から。

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 しかし、「男の子は強くたくましく」という思い込みは、ときにしつけという名のもとに、より強いたたき方、より大きな怒声へと親をエスカレートさせる危険性をはらんでいる。

 今年4月、「児童のしつけに際して体罰を加えてはならない」と明記された「児童虐待防止法」が施行された。子育てにも意識改革のタイミングが訪れている。厚労省の「体罰によらない子育て」というガイドライン策定委員でもある子育てアドバイザーの高祖常子氏の新刊『男の子に「厳しいしつけ」は必要ありません! どならない、たたかない!で才能はぐんぐん伸びる』(KADOKAWA)には、親の悩みに寄り添うケース別のノウハウが満載だ。

今日から「たたかない、怒鳴らない」と決める

 著者が全国で開いている「感情的にならない子育て講座」で、参加者たちに「どんな子になってほしいですか?」と聞くと、「やさしい人」「思いやりがある人」「人の気持ちがわかる人」「自分の意見が言える人」といった意見が多く聞かれるそう。では、たたいたり、怒鳴ったりすれば、自己肯定感が育まれ、コミュニケーション力が高くなり、自分で考えて行動できる人になるのかといえば、答えはノーだ。

 暴力や暴言は脳の発達を阻害する。また、「虐待された子どもは成長後に攻撃性が強くなる」というデータもある。親が望む子育ての真逆の結果を引き起こすのだから、「たたく、怒鳴るは今日からやめよう」と決めてしまうのがいい。脳も心も回復する力を持っているから、大丈夫。まだ間に合う。

 本書の冒頭では、子どもと向き合う4つのプロセスが推奨されている。

① 子どもの気持ちを受け止める=自分の気持ちを言葉で伝えられる子になる。
② 状況を整理して、相手(友だちやママやパパ)の気持ちを伝える=子どもの視野が広がる。
③ どうしたらいいのか、子ども自身に方法を考えさせる=親は必要に応じてアドバイス。
④ できるだけ子どもに選択させる=自分で決めて動ける人になる。

 この4段階は、幼少期や男の子に限らず、親がずっと大切にしたい基本姿勢といえるかもしれない。

子どもに親の理想を押し付けない

 子どもに対してイライラする大きな原因のひとつは、「思った通りに動かない」だろう。子どもの気持ちを無視して、「ごはんだからテレビ消して!」「いますぐ片づけて!」とわめいても、男の子は動かない。

「自分がやるっていった習い事なんだから、支度しな!」とせっついても、やる気が出ないものは出ない。著者は「親は子どもが自分の考える“普通”と違うとイライラする。そんなときは『なんで!?』ではなく、ただ『そういうもんなんだ』と自分との違いを受け入れること」だと教える。

 まずは、プロセスの①である。なぜ、イヤなの? 子どもの話を聞いて、自分とは違う感性の個人なんだなーと受け入れる。それから、親子が折り合う妥協点に行動を促してあげるといい。

『男の子に「厳しいしつけ」は必要ありません! どならない、たたかない!で才能はぐんぐん伸びる』より

 また、「男の子は、『けん』が大好き」という記述に男子ママは激しく同意するだろう。著者いわく、男の子が大好きなのは「剣」「発見」「実験」「探検」「冒険」。だから、「なんでわざわざそんなことするの!?」と、ママには意味不明な棒やダンゴムシ集め(男子のポケットにはたいてい小石やドングリが入っている)も、ジグザグ歩行も、見えない敵との戦いも、「またやってる」とおもしろがってしまえばいい、と。

 働き方や暮らし方に新しいスタイルを求められて、親も不安をたくさん抱えている。だけど、「幸せになってほしい」という子どもへの願いは不変のはず。親の見方や意識をちょっと変えれば、怒鳴らず、たたかず、男の子のしつけはうまくいく。子どもを幸せに自立させる育児のエッセンスを吸収できる1冊だ。

文=田中麻衣子