ハーバード大学に通用する人間に必要なものは何だろう?

暮らし

公開日:2020/7/8

『ハーバード、イェール、プリンストン大学に合格した娘は、どう育てられたか』(薄井シンシア/KADOKAWA)

「紗良さん、あなたのお母さんは、どうやってハーバード大学に行ける娘を育てたのですか?」ある男性からこう聞かれて、著者の娘、紗良は一瞬の驚きのあと、こう答えている。

「ママは、ハーバード大学に行ける人間を育てたのではありません。結果として、ハーバード大学に通用する人間を育てたのです」

 そう、本書『ハーバード、イェール、プリンストン大学に合格した娘は、どう育てられたか』(薄井シンシア/KADOKAWA)はハーバード大学の受験本ではない。自立した人間の育て方の本である。

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男尊女卑観の強い父親から逃げてきた著者

 著者の薄井シンシア氏は、フィリピンの華僑の娘として生を受ける。女に学問はいらない、という男尊女卑思想のはなはだしい父親から逃げるように、国費留学生として日本にやってきた。東京外国語大学を卒業後、仕事に就いたが、日本人と結婚し、娘が生まれてからは「この子を一人前の人間に育てるのが、今の私の仕事」と決意し、仕事をやめ、専業主婦になる。子育てをしながらも、元同僚の活躍する姿を見て、涙することもあったという。

シンシア流「子育て三原則」

 そういう並々ならない覚悟で子育てをした薄井氏の「子育て三原則」は、次のとおり。

「ひとりの人間として尊重する」「子どもの個性をみきわめる」「手を替え、品を替え、工夫する」。

 そこには「勉強しなさい」という命令形はないし、「勉強ができるかどうか」を気にする素振りもない。

 薄井氏は、「成績は紗良の人間性とは関係ないから。それは狭くて小さい机の上での評価にすぎない」というのだ。

 え!? それでハーバード大学、大丈夫!? と凡人ライターは思ってしまう…。

自分で税金を納められるような自立した人間に育てる

 その問いに対して、薄井氏の考えはまったくぶれない。

「自分で判断し行動できる“自立”と、自分をコントロールできる“自律”が身についていれば、何も怖いものはないでしょう? どんなことだって乗り越えられますよ。紗良には自分で税金を納められるような自立した人間になってほしいのです」

 そうだったのか。ハーバード大学は後からついてきたのだ。

 20歳で故国を離れ、言葉のわからない日本で悪戦苦闘し、理不尽な経験をいくつも経て薄井氏が見きわめた“生きるために必要なこと”が、「自立と自律」なのだ。

 そんな考えの母親のもと、紗良がどのように成長していったのか、ユーモラスなマンガでほっこりしながら、一緒にたどってみたいと思う。全33項目すべてにマンガがある。ふじいまさこ氏のマンガを読めるのもうれしい。

文=かのん

【著者プロフィール】
薄井シンシア 1959年フィリピン生れ。国費外国人留学生として20歳で来日。日本人と結婚。娘を育てるために専業主婦の道を選ぶ。47歳で仕事を再開。電話受付アルバイト、ホテルの営業開発担当副支配人、現在、東京2020オリンピック大会トップパートナーのホスピタリティ担当。著書に『専業主婦が就職するまでにやっておくべき8つのこと』。