他人事じゃない? 急な熱中症や突然の怪我から大事な人の命を救う最新テクニック
公開日:2020/6/20
ステイホームが緩んで、外に出ると季節はもう夏。引きこもっていた体には太陽の熱がつらい。もし、自分や家族、職場の人が熱中症になったらどうすればいいんだっけ? ニュースでは医療現場の大変さが日々流れてくるので、突然トラブルが起きたとき、「これくらいのことで救急車を呼んでいいのかな?」と迷うかもしれない。
熱中症の対応だけならネットで検索すれば対処法が出てくるが、もっとさまざまな身体トラブルへの対処法を知りたいと思い、『レスキュー・ハンドブック 増補改訂新版』(藤原尚雄、羽根田治/山と溪谷社)を手に取った。アウトドアにはあまり関心がなかったので、以前なら買わなかっただろうジャンルだ。しかし、日常生活を脅かすような昨今の事態を経験すると、こうした知識も必要だという意識が芽生える。ページを開くと、アウトドアでの怪我や事故でのレスキューとファーストエイドの基礎知識が紹介されている。要は、キャンプや山登りをする人向けの本なのだが、日常生活にも充分役立ちそうだ。
断っておきたいのは、本書の知識があれば自力で自分や家族を治せるというわけではないこと。意識がないとか尋常じゃない痛みなどの場合は、早めに救急車を呼ぶべきだ。名前、住所、既往症、現在の状態を適確に伝えて、プロに頼ろう。つまり、本書の知識は、救急車が来るまでの間の処置法といえる。しかし、この処置が行えるかどうかが生死を左右する。本書から一部ご紹介したい。
熱中症
〈初期症状:多量の汗、顔面の紅潮、めまい、頭痛、吐き気、筋肉の痙攣〉
まず直射日光をさえぎる涼しいところで安静になり、水分を補充。そして、おでこや首を冷やす。その場にあるタオルを水で濡らして当てるのが手っ取り早いだろう。外にいて重篤な場合は、ホースやバケツで直接水をかけることも必要だ。
熱中症ははじめは軽く捉えてしまうことも多い。だが放っておくと重篤な状態になりかねないので、病院に行くことを念頭に処置をしたい。
突起物が腕に刺さった
〈小枝、ナイフ、彫刻刀などが、腕から垂直に立ち上がっている状態を想像していただきたい〉
腕に異物が突き刺さるという状況は、人生にそうあるものではない。だから、もしそんな状況に陥ったらパニックに陥ってしまう。もしもに備えて、必ず頭に入れておきたい処置のポイントは、突き刺さっている異物を抜かないことだ。刺さっている異物が出血を止める栓となっていることがあるので、無理やり引き抜くと大量出血で死んでしまうかもしれない。落ち着いて、異物の根元にガーゼを当てて圧迫し止血にはげもう。このとき、異物が動かないようにすること。動くと傷口が広がってしまうからだ。そして、この状態で病院に行くのだ。異物は医師に抜いてもらおう。これは貫通しているときも同様だ。
この他にも本書には、川で溺れている人を見つけたら、骨折したときの箇所の固定の仕方、山で道に迷ったら、海でのセーフティールールなど、いざというときの最新テクニックが満載。読んでいるだけで、心はスリリングなアウトドアだ。
そもそも、ファーストエイドという言葉さえ理解していなかった私のような方のために、今さらだがその定義を。ファーストエイドとは、「ケガや病気になっている人を発見してケアを行うとき、その人が医療機関に引き渡されるまでの時間、その状態の悪化を防ぎつつ現状を維持する作業」とのこと。この作業には、手順も決まっていて、1.自分(発見者)の安全を確保、2.状況を正確に把握、3.なるべくシンプルな救出方法を考えよ、とある。
例えば、溺れている人を発見したとき、自分の体力・泳力や川の流れを考えずに「今助けるからなー」と飛び込んで自身も溺れてしまったら、救助が必要な人数をいたずらに増やしてしまう。こんなときは、自分の足場の安全を確認して、助けるためのロープや浮き輪(その場にあれば)を、漂流者が上流斜め45度に来るところで投げる(漂流者が水流の力でロープをたどることができる)。119に電話。人を呼んでくる。といった行動が望ましい。
今は特に医療関係の現場は多忙を極めている。少しでも彼らの負担を減らしつつ、いざというときには救急に頼るためには、こうした知識も必要だ。医師・看護師が少しでも処置しやすいようにという思いと、知っていれば日常生活にもひとつ安心が加わるという意味で、必携と言ってもいい1冊だ。
文=奥みんす
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