人の心理は顔を見れば99%わかる。ではマスクをした状態の場合は? フランス発の相貌心理学
公開日:2020/6/23
テレビやオンライン動画などでパネリストが全員マスクをしているトークを見る機会が多くなった。口元が見えないので、「実際話している内容とは違う音声に差し替えても視聴者は気づかないだろうな」とふと思ったことがある。緊急事態宣言は解除となったものの、口と鼻がマスクで隠された顔が世間にあふれている状態は、この先も当分続きそうだ。
人は目で見たり耳で聞いたりすることによってさまざまなことを学びとっていく。反対に、人は見られたり聞かれたりすることによっても成長していく。では、マスクを数カ月・数年間ずっとし続けて生活していたら、人の顔や心にもなんらかの変化が起きるのではないだろうか。そんな仮説のもとに、書籍『人は顔を見れば99%わかる フランス発・相貌心理学入門』(佐藤ブゾン貴子/河出書房新社)をご紹介したい。
“相貌心理学は「顔」に表れたさまざまな「表出」を客観的に読み取って言語化する学問です。そこに「いい悪い」の判断はありません。ちなみに、表出とは相貌心理学では生体内部で起こっていることが顔の表面に特徴として表れることを指します”
著者は、日本人初となる相貌心理学教授資格をフランスで取得し、1億人以上の顔分析に基づく相貌心理学を駆使して個人セッション・セミナー・講演・マッチングなど幅広く活躍している人物だ(ちなみに、相貌心理学教授資格を持っているのは世界に15人だけだという)。こう語ると難しく思えるかもしれないが、本書には心理テストのように気軽に楽しめる要素が多く収録されている。
たとえば、「額がぷっくりしている人は想像力が豊か」「目尻が上がっている人はやや興味本位な人」「耳が正面から見えない人は現状維持志向」「鼻の傾斜がある人は、伝える力がある人」「唇が薄い人は言葉で人を傷つけやすい」など、身体的特徴と心理的傾向の関連性がイラスト付きで紹介されている。それをもとに、それぞれのタイプ同士の相性や、内面の変化がどのように顔に表れてくるのかが説明されているので、とっつきやすくありつつも専門的な事柄を知ることができる内容になっている。
本書によると、鼻はコミュニケーションのあり方を示し、口(唇)は言葉の使い方を示すという。たとえば、鼻の穴が正面からあまり見えない人は本心をあまり言わず、口角はその人がポジティブ思考かネガティブ思考かを反映しているという。
そもそも、顔には変わる部分と変わらない部分があるそうだ。
“変わる部分とは、目、鼻、口、耳、肉づき。
変わらない部分とは、輪郭、額、頬骨、あご。
目、鼻、口、耳、肉づきといった部分は、環境の影響を受けやすいので、同じ人物でもよく変わります。一部分が変わることもありますし、全部が変わることもあります。それに対して、額やあごといった骨格周りは、成長期を終えると大きく変わることはありません。環境の影響を受けにくい部分なのです”
こういった知識をもとに、「マスクを数カ月・数年ずっとし続けていたら、人の顔や心は変わるのだろうか?」という点について考えてみると、おそらく変わるのではないかと思う。ソーシャルディスタンスを前提としたコミュニケーションによって醸成される「環境」は、目、鼻、口、耳、肉づきに影響していく。さらに、コミュニケーションのあり方を示す鼻、言葉の使い方を示す口が見えないし見られないという「環境」も顔つきに変化をもたらすはずだ。
それと同時に、マスクで隠されていない部分、すなわち口・鼻以外のパーツ「目や耳」に心理的状況がより強く反映されるようなことも起こるのかもしれない。本書を読めば、マスクをした人々の顔の印象をより有機的に受け取れるようになりそうだ。
文=神保慶政
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