帰ってきたスーパーハケン・大前春子は働き方改革後のセクハラにどう鉄槌を下す? 「ハケンの品格」第1話
公開日:2020/6/23
「私を雇って後悔はさせません。3カ月間お時給の分はしっかり働かせていただきます」――。2007年に放送されたドラマ「ハケンの品格」は、ずいぶんと時代を先取りした作品だったように思う。主人公の大前春子は、篠原涼子演じる伝説の“スーパーハケン”。特Aランクの派遣社員で、時給はなんと3000円。残業は一切「いたしません」。正社員としてひとつの会社に尽くすのではなく、自分のスキルを頼りにさまざまな業界を渡り歩く。その生き方は、かつては奇天烈に映ったかもしれない。だが、終身雇用制が崩壊しつつある2020年の今――気づけば、当たり前のような考え方になっていないだろうか?
そんな「ハケンの品格」がついに帰ってきた。コロナウイルスによる開始延期を経て、6月17日(水)に第1話が放送。その内容は、視聴者全員が「これが見たかった!」と安心する、いつもの大前春子だった。前作でマーケティング課主任の里中賢介(小泉孝太郎)に「社長賞」を取らせた伝説の最終回から13年後、特Sランクとなった春子は再び食品商社S&Fと3カ月限りの契約を交わす。里中は、何やら彼女に助けを借りたい大きな仕事があるようだ。春子とともに働く派遣社員は、社会人になったばかりの千葉小夏(山本舞香)と、5年目の福岡亜紀(吉谷彩子)。新人の千葉が、上司からセクハラ被害に遭う福岡さんの姿を目撃するところから話は動き始める。
千葉は、福岡さんの被害を会社に訴えるため、匿名だという“デジタル目安箱”に投書する。これで事件は解決…と思いきや、苦しい展開がふたりを待ち受けていた。人事部に呼び出され、保養所の一室に監禁。たくさんの社員から「ハニートラップではないか?」と詰問され、セクハラの事実をもみ消されそうになる。立場の弱い派遣は、泣き寝入りするしかないのか…。
そんなとき、われらの大前春子が登場する。重要な商談に出席していたにもかかわらず、なんとチェーンソーで監禁場所のドアを破壊して乱入。「ハケンの品格」らしい型破りな展開に、Twitterでも「ド派手な大前春子がやっぱり好きです」といった称賛のコメントがあふれた。中には「チェーンソーなんかどこにあんねんw」という冷静なツッコミも(たしかに、どこから出してきたんだろう…)。そこで春子が正社員に放つ言葉は、長年派遣として働いてきた彼女だからこそ語れるもの。これは第1話最大の見どころだろう。
ドラマでは春子の大胆な言動ばかりが目立つが、ストーリーとしての「ハケンの品格」の裏主人公は、どこにでもいる“普通の派遣社員たち”。千葉は、新卒で大手企業を20社受けたが正社員の内定がもらえず、派遣社員という道を選んだ。2020年4月から導入された「同一労働同一賃金」に期待するが、待遇の格差はそう簡単には縮まらないだろう。福岡さんは、契約打ち切りを恐れるあまり、セクハラやサービス残業などの理不尽を受け入れてしまう。春子の生き様を目の当たりにし、これからきっと変わっていくだろう彼女たちの姿から目が離せない。
「大前春子が2020年の今の働き方をぶった切ってくれる事を楽しみにしてます」Twitterにはこんな声もあった。13年前に比べれば、「セクハラ」「パワハラ」に厳しくなり、働き方改革で長時間残業が減り、副業を解禁する企業も増えた。さらにwithコロナによるリモートワークで、「場所」や「時間」の制約からも解き放たれていく。働き方の地殻変動が起きている2020年、今リスタートする「ハケンの品格」は、きっと一歩先の日本の働き方を見せてくれるはずだ。
文=中川凌(@ryo_nakagawa_7)