「働きがいランキング」に隠された仕事の“嘘”を暴く! パンフと現実が違う本当の理由

ビジネス

公開日:2020/6/26

『NINE LIES ABOUT WORK 仕事に関する9つの嘘』(マーカス・バッキンガム、アシュリー・グッドール:著、櫻井祐子:訳/サンマーク出版)

 就活生のとき、まるで中毒のようにネットで企業の情報を集めた。コーポレートサイトにはいいことしか書いていないだろうから、転職サイトの口コミやOB訪問を重ねて「本当のところ」を知ろうとした。大学の同期たちも同じく十分調べて会社を選んだはずである。だが、入社して2~3年経つと、「こんなはずじゃなかった」と嘆く声がなんと多いことか。しかも、誰もがうらやむホワイト企業に入社した同級生すら、である。なぜなのだろうか?
 
 そのヒントは『NINE LIES ABOUT WORK 仕事に関する9つの嘘』(マーカス・バッキンガム、アシュリー・グッドール:著、櫻井祐子:訳/サンマーク出版)にありそうだ。本書は、私たちが(あるいは上司や会社が)なんとなく「正しい」と思っている“9つの仕事の常識”を華麗なまでに覆す。

ウソ#1 「どの会社」で働くかが大事
ウソ#2 「最高の計画」があれば勝てる
ウソ#3 最高の企業は「目標」を連鎖させる
ウソ#4 最高の人材は「オールラウンダー」である
ウソ#5 人は「フィードバック」を求めている
ウソ#6 人は「他人」を正しく評価できる
ウソ#7 人には「ポテンシャル」がある
ウソ#8 「ワークライフバランス」が何より大切だ
ウソ#9 「リーダーシップ」というものがある

 本書のあげる「仕事に関する9つの嘘」に照らし合わせると、先述の例は「ウソ#1」に当てはまる。就活生時代の「この会社に入れば幸せになれる!」という幻想はなんだったのか。著者は研究の結果、業績の高いチームに見られる要素を8つあげている。たとえば、仕事で「強みを発揮する機会」が毎日ある…といった項目だ。もし、「どの会社」で働くかが大事だとすれば、この8つの要素に関して、同一社内であればすべてのチームでほとんど同じステータスになるはずだ。だが、実際は会社間の差よりも、会社“内”の差が常に大きいのだという。

 自分の会社を見回したとき、部署によって雰囲気やモチベーションはまったく違うだろう。つまり、会社の内情を外からひとくくりにして語るのはむずかしいということである。「働きがいランキング」は私たちが思うほど役に立たないのだ…。

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上から降りてくる目標に意味はあるのか?

 もうひとつ見てみよう。多くの会社にある目標制度のウソだ。筆者の勤務先では、会社や部署の目標に合わせ、チームや個人の目標を掲げる。それぞれが個人の目標を達成すれば、会社の目標も達成するという寸法だ。こうした目標管理は会社にとって便利な一方で、上から押し付けられた目標で評価やボーナスが決まることは、一社員にとっては結構なプレッシャーである。

 えてして上司は「高い目標が生産性をあげる」と語るものだが、著者によれば、なんと「目標が生産性をあげた」エビデンスはないという。それどころか、業績を下げることがある。たとえば、目標は“天井”の働きをする。私たちは、目標を達成しそうになると、それを“貯金”に変えようとする。期中に契約ノルマを達成した場合、次の期を有利に始められるよう、実際の契約締結を先延ばしにすることもあるだろう。目標管理上は問題ないかもしれないが、会社にとっては機会損失だ。

 会社にはびこる「仕事の常識」には、実は証拠もなく、「前からそうだから」「なんとなくそうしている」といった理由で続いている慣例も多い。大切なのは疑う視点と正しい情報のインプットである。「ウソ#1」で暴かれたように、良い成果をあげられるかどうかは、会社よりもチームの力によるところが大きい。これは、裏を返せば、あなた自身が自分のチームを変えられるということでもある。ぜひ、本書を良いチーム作り、仕事環境作りに生かしてほしい。

文=中川凌(@ryo_nakagawa_7

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