コロナ禍が経済格差を3つに分断する!? かつての中流はもはや上流。ではかつての下流は…?

社会

公開日:2020/6/29

『コロナが加速する格差消費』(三浦展/朝日新聞出版)

 2005年、企業買収が目立ちそれまでの終身雇用が常識ではなくなった年に『下流社会 新たな階層集団の出現』という書籍が発売されベストセラーになった。「安定就職を前提とした中流階層モデルの崩壊」を目の当たりにした社会の現状と未来を憂いた同書は、多くの共感を集めた。
 
 そして今年、同書の著者・三浦展さんの新刊『コロナが加速する格差消費』(朝日新聞出版)が発売された。先述の書籍から15年。タイトルからも伝わるとおり、今後の“ウィズコロナ”“アフターコロナ”を見据えた1冊であり、「格差は拡大。激しく二極化し、コロナがそれを加速する」という強いメッセージが込められている。

年収ベースで「上流気分」になれる境界線は600万円

「中の中」でも上流階級に当てはまる時代が訪れたと、著者は現代社会を俯瞰する。背景にあるのは、たびたび社会的にも議論される「格差」であるが、その言葉自体はくせ者で、なにをもって格差と呼ぶのか、あらゆる視点からの検証が必要になる。

 本書ではさまざまな角度からの分析がなされているが、例えば、これからの時代の立役者となる平成生まれの世代でいえば、年収ベースでみて「上流気分」でいられるのは「600万円以上」が境界線になるだろうと指摘している。

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 根拠となるのは本書にある世代ごとの「階層意識」についての調査結果だ。男性では「400~600万円未満」にあたるうちの51%の人が、自分を「中の中」と評価しているという。 対して、氷河期世代やバブル期を過ごした男性たちでは、同じ金額の年収でも自分を「中の下」と評価する意見が目立ち、おおよそ「15年周期」で変わるという世代ごとに、価値観が変化していることが調査結果から分かる。

コロナ禍で浮き彫りになった私たちの分類

 かつての“中流家庭”といえば、正社員の夫に専業主婦の妻、そして、子ども2人からなる家庭がいわゆる「標準世帯」のイメージだった。しかし、現代では「経済格差があるがゆえに結婚せず、ずっと未婚、一人暮らしという人も増えた」と本書は指摘する。

 ひとえに“時代の変化”と言い切ってしまえばそれまでだが、ここでさらに、社会の階層を浮き彫りにしたのが、今まさに私たちが直面している新型コロナウイルス感染症だったという。

 コロナ禍では、経済面でも多くの課題が噴出している。非正規雇用者の解雇や、営業自粛で売り上げや収入が減った自営業者。さらには、人が集まり密になるのを制限されている中で業態を見直さねばならない多くの職種など、誰もが従来とは異なる“働き方”や“稼ぎ方”を求められつつある。

 刻一刻と影響が出ているが、著者はその状況をみて私たちが以下の3つに分かれることに気が付いたと述べる。

1.何があっても安心して中流でいられる人
2.雇用は守られるが売り上げ・収入が落ちて不安な人
3.一気に中流から落ちて(そもそも中流ではなくて)ものすごく不安な人

 これは日本に限らず、世界中の人びとにもあてはまると指摘する著者。分断が急速に進みつつあるなかで、変化に対していかに対応するかは個々人に委ねられている。

 本書は当初「中流の条件とは何か?」をテーマにした1冊となる予定だったという。しかし、執筆期間中に新型コロナウイルス感染症が拡大しつつあった中で、著者は自分の書いているテーマが密接に関わっていると気付いたという。くしくも、世代間格差の解説に留まらずコロナ禍の先にある社会像までを見通す書籍となったわけだが、これまでの常識が変わりつつある今だからこそ、必読の1冊だといえる。

文=青山悠

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