フェイクニュースに騙されるな! 私たちに必要な最新のデータ・リテラシーとは?

ビジネス

公開日:2020/6/30

『フェイクニュース時代を生き抜く データ・リテラシー』(マーティン・ファクラー/光文社)

 現代社会はデータで溢れている。グーグル社でCEOを務めたエリック・シュミット氏によれば、なんと「現在を生きる地球人はたった2日間で、人類の文明が始まってから2003年までに生み出された総量と同じだけの情報を生み出している」という。膨大なデータにさらされる私たちに、今求められるものとは何なのだろうか。
 
『フェイクニュース時代を生き抜く データ・リテラシー』(マーティン・ファクラー/光文社)は、溢れる情報にさらされる私たちが読んでおきたい1冊だ。著者のファクラー氏は、アメリカ出身で東京大学大学院への留学を経験し、ニューヨークタイムズの東京支局長も務めたジャーナリストだ。
 
 データ・リテラシーとは、ネット上の情報がどのように生まれ、広がっているのかについて知り、それに流されないためのスキルである。SNSを通じて誰もが気軽に発信できる時代だからこそ、身近なデータへの接し方には注意が必要だ。特に昨今では、新型コロナウイルスに関する情報は、ファクトもフェイクも判断がつかないものも多い。私たちには、データの適切な取捨選択が求められているのだ。
 
 ツイッターやフェイスブックで意図的にフェイクニュースを流す人々のことを「トロール」と呼ぶ。トロールによって作られ拡散されるデータに、本書は警鐘を鳴らす。

“今は素人には見分けがつかない精度で、写真や動画はいくらでも捏造できてしまう。本物の情報なのか、あるいはフェイクニュースなのか、普通の人にはとうてい見分けられないディープ・フェイク(deep fake)が、これからどんどん作られていくだろう”

 2019年5月、アメリカ・トランプ大統領のツイッターでフェイク動画がRT(リツイート)された。支持者がこのディープ・フェイクを作り、トランプ大統領が拡散することで、敵対する陣営をおとしめようとしたのではないかと言われている。

 フェイクニュースを操ることが政治手法のひとつにもなってしまっていることは、残念ながら事実だ。だが、受け手が情報の真偽を確かめ、正しい情報に基づいて情報を判断しようと心がけることはできる。例えば「オバマはアメリカで生まれていない」という主張は、オバマ元大統領が出生証明書を示すことで、フェイクだと知られた。

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 重要なのは、“ファクト(事実)”だ。データ・リテラシーという観点に向き合い、「みんながそう思っているのなら」とか「自分の意見は間違いないはず」という思考回路を捨てることも必要である。本書は、膨大なデータにさらされる私たちに、大きな示唆を与えてくれる。

文=えんどーこーた

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