セックスレスや性交痛を解消する膣トレ&マッサージ
公開日:2020/7/2
「濡れなくて痛い」と性交痛を訴える女性は多い。
一般的に、女性が濡れないのは相手の技量の問題と言われるが、本当だろうか?
女性が濡れやすいのは、膣に届く血液の量と、体内の水分量が豊富なとき。
だからこそ、まず膣や体を整えることが大切。
そう語るのは、『膣の女子力』(駒形依子/KADOKAWA)の著者である婦人科医の駒形依子氏だ。
膣をしなやかにして性交痛を解消するために駒形氏が考案した、「膣トレ」と「膣マッサージ」のやり方を紹介する。
※本稿は駒形依子著『膣の女子力』(KADOKAWA)を再編集したものです。
「痛い、気持ちよくない」は正直に伝えよう
「体の相性が合う、合わない」という言葉をよく聞く。
つまり、セックスの相手が変わることで「何かが違う」と男女ともに感じているということだ。
その「何か」はもちろん個人差があるので、いろいろな基準・項目があるが、いったいなんだろう?
それが、膣や外陰部の「感覚」だとしたら…。
私は「膣の状態を整えることが大事」と常に伝えてきたけれど、まさに膣を整えるとは、セックスで言えば、膣の弾力性がアップし、膣内が潤い、感度がよくなって感じる自分になる、ということ。
メイクや髪型、ファッションなら、すぐに変えることができる。
でも膣や外陰部となると、今日・明日でどうにかなることではない。
そもそも、外見の女子力ならみんな勝手にがんばるので、どこで差がつくのかというと、見えないところの女子力。
それは中身と言われる人間性はもちろんだが、「膣を整える」ということも同じく大切だと思う。
体の相性について言うなら、私は、セックスは好きな人との大事なコミュニケーションだと思っている。
いわば、大きなbody language。
だとしたら、されっぱなし・任せっぱなしではなくて、好きな人を自分が感じるための準備をすることが大事であり、礼儀なのではないだろうか。
パートナーに任せきりで、自分は感じていないこと、気持ちよくなれていないことを相手のせいにするのは、好きな人に失礼なのではないかと思う。
本当にそれらはパートナーだけのせいだろうか?
たとえば、「痛い、気持ちよくない」という場合、「膣トレ」をすることで会陰や膣内がしなやかになるので、性交痛を解消することができる。
また、膣は濡れやすくなり、流れる血液量が増えることで細胞の弾力性が高まるので、挿入時のフィット感がよくなり、感度が上がって気持ちよくなる。
セックスをしても・しなくても正直どちらでもいいが、するのであれば、お互いが気持ちよくなることが大事であり、大前提。
そのコミュニケーションを円滑にするために、自分で自分の膣を整えておくことは重要だと思うのだ。
どうしたら気持ちいいのか、どうしてほしいのかをきちんと伝えることって、ものすごく大事。
「気持ちいい」とウソをついている関係をずっと続けるのは、お互いにしんどいのでは?
そんな関係では、当然セックスレスにもなるし、子づくりなんてできない。
ちなみに、膣にもそれぞれサイズや長さ、骨盤の深さで角度が異なるように、ペニスにもそれぞれサイズや角度がある。
何人かと経験している人なら、男性によってサイズに違いがあることはわかると思うけれど、日によって勃つ角度にも違いがある。
しかも、年齢や体調によっても角度は異なるから、毎回同じ体位がいいということもない。
つまり、毎回、膣やペニスの状態に合わせて、お互いに気持ちよくなる場所や体位を探し合えることが、マンネリ対策とも言えるのだ。
だからこそ、まずは、自分の思っていることをまっすぐ伝え合える関係になること。
気持ちいいセックスや子づくりは、その延長上にしか存在しない。
濡れないのは干からびているから
「セックスのときに濡れなくて痛い」という性交痛を訴える女性は多い。
一般的に、濡れないのは相手の技量の問題とか、女性が感じないからだとか言われていますが、本当にそうだろうか?
触れられずとも、本を読んだときの想像力で、あるいはキスしただけで濡れるという体験をしたことがある人は多いかもしれない。
そうした経験があるなら、濡れる・濡れないは相手の問題だけではないことがわかるはず。
「濡れにくい」ということを訴えて病院を受診しても、治療薬があるわけではないので、基本的には潤滑ゼリーをすすめられて終わることがほとんど。
これでは正直、何の解決にもならないし、セックスレスが増えていくだけだと思う。
そもそも、なぜ「濡れる」という現象が起こるのか?
膣内のつくりから見ると、膣内の細胞と皮膚の細胞、そして子宮の入り口の表面の細胞は、全部同じ「扁平上皮」という細胞でできている。
体には、この扁平上皮細胞のほかに、腺細胞や円柱上皮細胞などいろいろな種類の細胞があるが、扁平上皮細胞には分泌液を出す働きはない。
ということは、膣の細胞自体に、自ら分泌物を出して潤す働きはないということ。
愛液や排卵時の分泌物は、膣内から出ているわけではないのだ。
分泌されるのは、膣の入り口にある分泌腺からと、子宮の入り口の少し奥にある分泌腺から。
では、どういうときに、この2つの分泌腺から分泌液が出てくるのだろうか。
それは、膣に届く血液の量と、体内の水分量が豊富なとき。
東洋医学でいう、「血」が減れば当然、運ばれる「気」や「水」の量も減る。
そうなれば、分泌液の量が減ることもあるだろう。
また、膣を鍛えていないと、膣付近の筋肉量が少ないので、運ばれる血液の量が減る。
さらには、体内の水分量自体が少なくて体が脱水傾向になっていれば、そもそも分泌できる水分に限りがあるので、愛液が少なくなる可能性もあるのだ。
濡れる・濡れないは、相手の技量の問題や女性が感じることだけでなく、こうした体のしくみにも左右される。
だからこそ、まずは膣や体を整えることが大切。
そのうえで興奮や刺激を与えられることで、愛液が分泌される。
そもそも脱水傾向なら濡れないし、あくまで体の余力があってこそ。
体は濡らすことを最優先するわけではない。
痛みや恐怖心からセックスができなくなってしまうと、お互いの気持ちに溝ができかねない。
その場合は、セルフケアの「膣マッサージ」がおすすめ。
膣に指を入れて、入り口を広げていくようにすると、膣のしなやかさが戻ってくる。
膣がしなやかになると性交痛の解消につながるので、ぜひ試してみて。
【著者プロフィール】
駒形依子(こまがた・よりこ)
東京女子医科大学医学部卒業。2018年、山形県米沢市に婦人科・漢方内科のこまがた医院を開業。高校生の頃から生理痛や過多月経に悩まされる。婦人科での研修医時代、患者よりも自分の生理のほうがひどい状態という矛盾を痛感し、生理痛や過多月経をなくす方法を追求し始める。その後、東洋医学も学び、自分の体を使って実験をくり返し、最小限の努力で最大限の効果を発揮するセルフケアを考案。自称「子宮が大好きすぎる産婦人科医」。ブログや講演活動を通じて、患者が自分で自身を治すための「グレない子宮の作り方」を提案している。