大ヒット漫画『鬼滅の刃』堂々完結! 本作はなぜ、ここまでブームになったのか?
公開日:2020/7/4
2020年5月18日、『週刊少年ジャンプ』2020年24号発売日。この日は日本の漫画史に刻まれるかも知れない。メガヒット中の漫画『鬼滅の刃』(吾峠呼世晴/集英社)が最終回を迎えたのだ。
私が作者の吾峠呼世晴(ごとうげ・こよはる)さんの漫画を初めて読んだのは、2014年だった。『週刊少年ジャンプ』に掲載された読み切り「肋骨さん」に衝撃を受けた。誌面にある他の漫画とは一線を画した不思議な雰囲気、暗さを前面に押し出した色調、読み切りなのに深い余韻を残すストーリー。少年漫画というジャンルでくくって良いのかわからなかったが、「この漫画家さんはこれからも凄いものを描くぞ」と予感した。そう思っていたのは私だけではなく他の読者もそうだったようで、私のまわりでは「凄い漫画家さんが出てきた」と既に騒がれていた。
吾峠呼世晴さん初の連載が始まったのはそれから2年後の2016年だ。タイトルは『鬼滅の刃』。大正時代の東京、人を食らう鬼にいちばん上の妹以外の家族を殺され、唯一の生き残りである妹を鬼にされた少年が主人公だ。読み切りのときと変わらない暗いタッチが、これからの物語の盛り上がりを予感させた。
まず序盤の流れを説明したい。主人公の少年竈門炭治郎(かまど・たんじろう)は鬼になった妹・禰?豆子(ねずこ)に殺されそうになるが、ひとりの剣士・冨岡義勇(とみおか・ぎゆう)に救われる。最初は禰?豆子を殺そうとする義勇だったが、その深い兄妹愛を目の当たりにし、炭治郎に鬼を壊滅するための部隊鬼殺隊(きさつたい)への加入を勧める。ただ鬼殺隊には命がけの入隊試験があり、それを受けるためには訓練が必要だ。義勇は自らの師匠に手紙を書き、炭治郎のことをお願いする。
ここで触れておきたいのが、鬼は生まれたときから鬼なのではなく、もともとは人間だったということだ。苦しい訓練と致死率の高い入隊試験を経て、炭治郎は鬼殺隊の剣士になり、鬼を倒していく。鬼たちが死ぬ間際は、炭治郎ではなく鬼に焦点があてられることが多い。人間だった頃を自らの生を終えるときにやっと思い出す鬼たちの姿は悲しい。
そんな悲劇を、鬼たちを生み出したのはいったい誰なのか。それは鬼の始祖と呼ばれる本作のラスボス、鬼舞辻無惨(きぶつじ・むざん)だった。炭治郎の家族を殺したのも禰?豆子を鬼にしたのも無惨で、彼は平安時代に人から鬼になった。物語の前半、浅草で炭治郎と無惨が遭遇したことにより、物語は勢いを増していく。
『週刊少年ジャンプ』の漫画らしいバトルと、鬼や鬼に家族を殺された鬼殺隊の悲しみが本作の見どころだ。そしてキャラクターたちの魅力がますますそれを引き立てる。炭治郎と同時期に入隊試験を受けた四人の隊士もメインキャラとして活躍するが、鬼殺隊の中で最も強い者のみがなる「柱」という役職の隊士も、『鬼滅の刃』では9人登場する。また、鬼も同様で最も強い鬼12人は、「十二鬼月」と呼ばれ無惨の側近として強さで順位付けされ、鬼殺隊の隊士たちを迎え撃つ。
この個性的なキャラクターたちは、どうなっていくのだろう。今年公開が決定している『鬼滅の刃』の映画では柱のひとり煉獄杏寿郎がメインとなり、炭治郎たちと十二鬼月のうちの二人と戦う。そして原作では最終回までの間に、十二鬼月との戦闘がいくつも繰り広げられるのである。
2020年5月、『鬼滅の刃』は既刊20巻で累計発行部数6000万部を記録した。しかしコミックスは今後3冊、年内に発売される予定だ。『鬼滅の刃』ブームはまだまだおさまりそうにない。
文=若林理央