舞台で人気の植田圭輔主演、『孤独のグルメ』の久住昌之監修! 『三大怪獣グルメ』とは一体どんな作品なのか!?
公開日:2020/7/7
緊急事態宣言が解除され、多くの施設が営業を再開している昨今。映画館もそのひとつで、ようやく公開未定だった映画も上映されるようになってきた。そんな映画の中で異彩を放つ存在が『三大怪獣グルメ』である。舞台「鬼滅の刃」など2.5次元の舞台俳優として絶大な人気を誇る植田圭輔が主演を務め、乃木坂46の吉田綾乃クリスティーがヒロインなど人気タレントを配しているこの映画の何が「異彩」なのか。それは漫画『三大怪獣グルメ』(ほりのぶゆき、河崎実:著、久住昌之:監修/竹書房)を読めば、自ずと理解できるであろう。
まずこの作品、顔ぶれがいろいろスゴイ。原作に『イカレスラー』などの監督を務めた河崎実氏、作画に『江戸むらさき特急』などのギャグ漫画で知られるほりのぶゆき氏、そして監修に『孤独のグルメ』の原作を担当した久住昌之氏が顔を揃えているのだ。このメンツでどんな世界が描かれるのか、想像できる者はまずおるまい。そう、怪獣ものであり、グルメコミックであり、ギャグ漫画でもある本作は、まさに「カオス」そのものなのである。
ストーリーは冒頭から「タコ」と「イカ」の姿をした巨大怪獣が登場し、東京のとある魚市場を壊滅させる怪獣映画お約束の展開。さらに「カニ」の怪獣まで加わって、世間は大パニックに。実はこの怪獣、かつて天才科学者と呼ばれ、超理化学研究所の所員だった主人公・田沼雄太とその同僚・彦馬新次郎の研究によって生まれたものだった。怪獣を倒すための特殊部隊「SMAT」は、タコ型怪獣「タッコラ」、イカ型怪獣「イカラ」、カニ型怪獣「カニーラ」に戦いを挑む──。
このままスタンダードな怪獣ものとして展開するかに見えるが、そうはならなかった。彦馬が開発した「酢砲」により体の部位を失い、撤退していく怪獣たち。そんな中、なんとSMATの隊員が回収した怪獣の肉を食べてしまったのだ! しかもそれが非常な美味だったことで、政府や一般の業者などが入り混じって、怪獣肉の争奪戦が始まるのだった。このあたりから、物語はにわかにグルメコミックの様相を呈してくるのである。
話はさらに転がっていく。怪獣肉に関するさまざまな問題を解決するため、彦馬や政府主導のもと「世界食博」の開催が決定。このイベントでタッコラたち怪獣を食べ尽くしてしまおうというのである。そのために「ロボコック」というヤバげなネーミングの人型料理マシーンまで用意され、三大怪獣との決戦は間近に迫っていた。しかし怪獣大好きの田沼はタッコラたちがむざむざ殺されゆくのを黙って見ていることができず、「ある覚悟」を秘めて「世界食博」の会場へと乗り込むのであった──。
とりあえず、怪獣好きとグルメ家と特撮好きが集まったら、こういう漫画になるのだという非常に分かりやすい作品である。しかし、単なるバカバカしいだけの作品というわけでは、断じてない。そう、本作には男のロマンが詰まっているのだ。巨大怪獣が暴れるのも、ロボットと格闘を繰り広げるのも、すべてロマンである。そしてそれらを支える根底の部分には、常に人間のドラマがあるのだ。この漫画には、そのすべてが込められているということを、断言しておきたい。
文=木谷誠