仕事が原因でメンタル不調に… 復職して5年以内に再発する割合は?/「薬に頼らずに、うつを治す方法」を聞いてみました④
公開日:2020/7/19
復職後再発率ゼロの心療内科の先生に、”うつ”についてのあれこれを聞いてみました。「こころの病気」や「うつ病」、「いかに、うつを治すか」などについて学びながら、回復していくプロセスをわかりやすくリアルに伝えます。
復職後再発率ゼロの心療内科
「これからひなたちゃんの病気について話していくけど、まず初診を問診票と15分程度の診察のあと、すぐ薬が出て終わるようなクリニックはやめたほうがいいと思うよ」
「普通の病院はそんなものだと思いますけど」
「こころの病気は、そんな診察ではわからないから」
「そういうものでしょうか」
「そう、それにここは病院ではなくクリニックだからね。ひなたちゃん、病院とクリニックのちがいってわかる?」
「え~と、病院は日本語で、クリニックは英語」
ドテッ……。亀仙人は吉本新喜劇ばりに、ズッコケました。そんな、いかにもな亀仙人のリアクションに、思わず私は笑ってしまいました。
「そうではなく、法律で決まってるんだ」
そして亀仙人は、病床数のちがいで病院とクリニックとに分類されるんだいうことを簡単に説明してくれました。(※1)
※1 クリニックや医院は診療所の通称。診療所と病院とのちがいは主に病床数で、病院は20床以上の病床数を備えている必要があるが、診療所は入院施設がなくてもOK。総合病院の場合は100床以上。他にも医師や専門スタッフの配置の定義にちがいがある。
私は「へぇ~」とうなずくしかありませんでした。
「つまり、先生は小さな医院の経営者ってことですね」
「そう。その専門が心療内科ってこと」
「いわゆる、精神科ってやつですね」
「いやいや、精神科と心療内科も少しちがうんだ」
亀仙人の解説によると、精神科はこころの症状を扱う診療科で、不安や落ち込み、イライラといった気分症状や幻聴・幻覚、異常なこだわりや眠れないといった症状を扱うのに対して、心療内科は心理的・社会的な要因から引き起こされる身体の症状を扱う内科ということのようです。
精神科と言ってしまうと敷居が高くなるので心療内科の看板を掲げるなんてこともあるらしくて、どうにもこうにも素人には理解が難しい。
「ふ~ん」
気のない返事をする私に、亀仙人は言いました。
「ま、一般的にはどっちも同じようなものだけどね」
ドテッ……。今度は私が思わず吉本新喜劇ばりのリアクションをしてしまいました。
診察というよりは、雑談をしているかのように亀仙人は話を続けます。
(今思えば、このときにもう診察ははじまっていたのだと思います)
「うちのクリニックはリワーク支援専門の心療内科なんだけど、リワークって何のことだかわかる?」
「リワーク?」
「日本語で言うと『復職』。和製英語なんだけどね。メンタル不調で仕事を休んだ人が、職場に復帰する手助けをするんだ。それを1人ひとりじっくりと診ていくために、うちのクリニックでは、職域メンタルヘルス関連の疾患以外はお断りしているんだ」
「仕事でこころの病気になった人限定ですか? 病気を選ぶなんて変わってますね」
「そうだね。なんでもいらっしゃいというクリニックが多いかもしれないけど、うちは特化して取り組むことで効果を上げているんだよ。そして成果につなげる」
自信満々の亀仙人は続けます。
「それではここで問題です。復職しても5年以内に再発してしまう人の割合って、全国平均で何%でしょう?」
「なんで突然クイズですか?」
「適当でもいいから、答えてみてよ」
「う~ん、じゃ……、半分」
「正解!」
ドテッ……。適当に答えたら正解なんて。ドラマでもありえない展開に、私は思わず、またズッコケてしまいました。
※2 2017年厚生労働省の調査によると、大企業の従業員のうつ病再発に伴う再休職率はリワーク後1年で28.3%、2年で37.7%、5年で47.1%。
「そんなに高いんですか!?」
5年以内に半分近くの人が再発すると聞いて、モクモクと黒い雲が立ちこめてきました。そんな雲を吹き飛ばすかのように亀仙人は言います。
「でも、安心して。うちのクリニックの再発率は……」
「はい」
「再発率は……」
「はい」
「再発率は……」
「引っ張りすぎじゃないですか」
「なんと、0%!」
「0%!? ホントですか!」
「本当だよ、そんなウソつかないよ」
「すごいじゃないですか!」
亀仙人は、自分では気づいていないと思いますが、得意げに鼻をふくらましています。そんな亀仙人を見ながら、ぼそりとつぶやいていました。
「このクリニック、普通とちがうけど、もうちょっと話を聞いてみたい」