「東京トイボックス」シリーズ最新作がついに登場! 今注目のeスポーツの世界を描く、胸アツの青春ストーリー
公開日:2020/7/17
eスポーツ。それは、私達が従来親しんできた“スポーツ”とは異なる、コンピューターゲームやビデオゲームを使ったスポーツだ。その競技人口は全世界で増加しており、日本でも「ジャパン・eスポーツ・ライセンス」を保有し、世界とその技術を競い合っているプレイヤーが存在する。
『東京トイボクシーズ』(うめ/新潮社)は、そんなeスポーツに青春のすべてをかける高校生を描いた漫画だ。
主人公はプロゲーマーの安曇野蓮とマネージャーのソヨン。蓮は、弱冠15歳にして世界のゲーマー達と競い合うほどの実力の持ち主だ。物語はある日、蓮のもとを私立白郷学園の理事長・窪ノ内理事長が訪れるシーンからスタートする。彼女は、自身の高校に新設することとなった「eスポーツ科」の第一期特待生として、蓮をスカウトしにきたのだ。
しかし、蓮はスカウトを断ってしまう。大人に自分の将来を左右されたくなかったからだ。それは数か月前、所属チームから一方的に契約を解除されたことが引き金になっている。ただ、悠長なことは言ってはいられない。蓮には生きていくだけのお金がないのだ。解決する道はただ1つ、スカウトを受けることだった。そうすれば、金銭面で苦労することなくゲームの環境に身を投じることができる。ソヨンからの熱い説得もあり、蓮は白郷学園への入学を決意する。ただ、蓮を待ち受けていたのは、世間からの冷たい風当たりだった。
日本は伝統や文化、従来の考えを大事にする一方で、それらに新しい何かが加わることを嫌い、拒絶する傾向がある。決して拒絶自体が悪いわけではない。ただ、時には新しい風を吹かせ、時代とのバランスが重要な場合もあるはずなのだ。
eスポーツはその代表例といえる。世界では、ゲームはスポーツの分野に加わり、プロのゲーマーも立派な職業の1つとして数えられるようになった。しかし、日本のeスポーツの認知度や普及率は、世界と比べて未だ低い。プロのゲーマーになりたいと言っても、「そんなのまともな職業ではない」と言われるのが現状だ。日本は新しい文化や世界を受け入れるのが苦手なのだ。
本作でも、その風潮はしっかりと描かれている。eスポーツ科の生徒達は入学式の日、嘲笑の的となり、いわれのない誹謗中傷を浴びてしまう。自分達がこの学校に受け入れられていないことは明らかだった。そんな折、新入生代表として壇上に立つのは蓮。
参列者のほとんどがeスポーツ反対派である中、蓮が行なった代表挨拶は、想像のはるか上を行くものだった。果たして蓮達は、無事にeスポーツに青春を捧げることができるのだろうか。今後も、注目していきたい作品である。
ちなみに、本作は「東京トイボックス」「大東京トイボックス」シリーズの最新作だ。両シリーズでは、eスポーツの世界が普及する前のゲーム制作業界の奮闘劇が描かれており、登場人物やストーリーの一部が本作とつながっている。もちろん本作だけを読んでも充分に楽しめるが、前作も併せて読むことで、物語に深みが増すこと間違いなしだ。
文=トヤカン